演劇『ハイキュー!!』“飛翔”製作発表会見レポート 醍醐虎汰朗「漫画やアニメとは違う、リアルなものを作りたい」
左から:赤名竜之輔(影山飛雄役)、醍醐虎汰朗(日向翔陽役) (C)古館春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会、(C)古館春一/集英社
2019年11月1日(金)TOKYO DOME CITY HALLにて開幕するハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』の製作発表会見が8月19日(月)、都内某所にて催された。囲み会見には、日向翔陽役の醍醐虎汰朗、影山飛雄役の赤名竜之輔、演出家のウォーリー木下が登壇した。
本作は週刊少年ジャンプ(集英社)にて連載中の、古館春一による大人気青春バレーボール漫画を舞台化したもの。2015年の初演から2018年10月の公演『最強の場所(チーム)』を最後に、物語の主役校である烏野高校の全キャストが卒業。2019年4月には、ライバルの音駒高校を主役校とした『東京の陣』が上演された。シリーズ8作目となる新作公演『飛翔』では、烏野高校全員が新キャストとなり、新生烏野が始動。青葉城西高校、白鳥沢学園高校、伊達工業高校など、これまで演劇『ハイキュー!!』に出演したキャストが再登場するほか、佐久早聖臣、星海光来、宮侑といった新キャラクターの登場も見逃せない。
左から:週刊少年ジャンプ編集長の中野博之、赤名竜之輔、醍醐虎汰朗、演出家のウォーリー木下 (C)古館春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会、(C)古館春一/集英社
製作発表会見が行われたのは、めでたくも819(ハイキュー!!)の日。週刊少年ジャンプ編集長の中野博之は、主催者を代表して「ジャンプの作品がアニメ化や映画化されて世界中に広がっている現在、2.5次元舞台もしっかりと根付いてきている。その中でも、2.5次元舞台の世界を牽引してきたのがこの演劇『ハイキュー!!』だと思います」と挨拶。演劇『ハイキュー!!』の印象的な場面について、以下のように語った。
「私が特に好きなのは試合後のシーンです。試合後に選手たちが観客席を向いてお礼をします。そこで万雷の拍手が起こるわけですが、私たちは演劇を見ている観客でありつつ、同時に作品のなかに入って選手を応援していた観客にもなれる。そんな瞬間を味わえると、私はいつも青春時代を思い出して涙してしまいます」
日向翔陽役の醍醐虎汰朗は、「一からはじめる気持ちで、醍醐虎汰朗というフィルターを通した日向を演じたい」と意気込みを語った。影山飛雄役の赤名竜之輔は、「僕にとって初となる2.5次元舞台ですが、だからこそ伝えられるものがあると思うので、一生懸命頑張りたいと思います」とコメント。
会見開始直後は緊張した様子の醍醐と赤名だったが、応援メッセージのVTRが流れると笑顔を見せた。前シリーズで日向役を演じた須賀健太は、映像内で「演劇『ハイキュー!!』を卒業しましたが、いまだに現役メンバーのごとく応援しています。(舞台上の)動きに関して、きついことがあったらウォーリーさんにどんどん伝えていいからね。できないことはやっちゃダメだよ」とエールを送った。
さらに、『ハイキュー!!』の大のファンであるという俳優の池田成志と古田新太は、私物の烏野ジャージとユニフォームを着て、日向と影山に扮した姿でVTRに登場。池田が「ジャンプが多くて大変な公演ですので、お体には気をつけてくださいね」と気遣うと、古田は「(ウォーリーに向けて)漫画の『ハイキュー!!』と違う『ハイキュー!!』を見せてほしいよね。排球じゃなくて魔球みたいな。3メートルくらい飛べるやつとか、トスを下に向かって打つとか」と冗談を交えて場を和ませた。
途中、原作者の古館春一が描きおろした原画が、中野編集長よりキャストにプレゼントされる一幕も。思いがけないサプライズに、醍醐は「こんなに贅沢なことはない。気が引き締まる思いです」と話し、赤名は「古舘さんにも楽しんでもらえるような公演を作りたいと思います」と喜びをあらわにした。
(C)古館春一/集英社
古館春一が描き下ろした原画イラストを見て驚く3人 (C)古館春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会
キャストの意気込みや質疑応答の内容も含めて、以下囲み会見の模様をお伝えしよう。
新作“飛翔”は人間ドラマを中心においたストーリー
ーーシリーズ8作目ということで、新生烏野に対しての思いや期待を聞かせてください。可能な範囲で、新作の構成についても教えてください。
ウォーリー木下:演劇『ハイキュー!!』は、毎公演チャレンジをしようということをテーマに掲げています。シリーズものだと、どうしてもマンネリ化したり、なんとなくお客さんが期待するものを作ってしまったりするんですけども、できればお客さんの期待を超えていくことを、ずっと考えながらやってきました。キャスト達とはすでに何度か話し合いをしましたが、新生烏野はとっても若くて、みんなまっすぐ演劇が好きということがしっかり伝わってきたので、この俳優さん達となら、今までとはまったく違う新しい挑戦ができるなと思い、ワクワクしています。このワクワクさは初演の時を思い出します。
構想について、本作“飛翔”では、小さな田舎の排球部が大きな場所に出て行く直前に、「本当にこのまま全国大会に行って勝てるのか?」とか「もっと強くなりたい」という思いを抱きながら、様々なぶつかり合いを経て、覚悟を決めていくお話しになります。春高出場が決まったからといって、ただ楽しくなっているというよりかは、もう一回大きな壁にぶつかるというお話なので、なるべく人間ドラマを中心において作りたい思っています。その中で、新しいバレーの見せ方みたいなこともやっていけたらいいかなと。
醍醐虎汰朗「日向のポジティブさを大切にしたい」赤名竜之輔「ひとりの男として影山を尊敬してる」
ーー演劇『ハイキュー!!』に対するイメージと、それぞれの役についてどのように考えているかを教えてください。
■醍醐虎汰朗/日向翔陽役
実際に生で演劇『ハイキュー!!』を観劇して、すごくプラスの方向に感情がもっていかれる舞台だなと思いました。役者さんたちが汗をかきながら演じられていて、会場の熱気もすごかったので、熱い舞台だなと意識しています。日向という役については、三次元には存在しないんじゃないかと思うくらいポジティブな人だなと思っています。本作で描かれるのは壁にぶつかる部分ですが、そこで日向がとる行動ひとつひとつが本当に、へこまずにくじけずに、ずっと前を向いているので、役を演じるにあたってポジティブさみたいなものは大切にしたいです。
醍醐虎汰朗 (C)古館春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会
それと僕がやりたいのは、漫画やアニメとは異なる、リアルなものを作りたいということです。原作やアニメでは描かれていない、日向が家で過ごしている時間や、いろんな葛藤があって日向翔陽というキャラクターがいると思うので、そういった部分を大切にしていきたいと思います。
■赤名竜之輔/影山飛雄役
観劇したあとにハッピーになれるというか、なにか頑張ろうとか、そういうことを思える舞台だと思っています。それと、演者さんの熱量や一生懸命さが直に伝わる演劇だと思います。お芝居を見ているというよりかは、躍動感とエンターテイメントに満ちた一種のライブのようだなと。影山は天才プレイヤーで、一年生でレギュラーをやっていることから、常にプレッシャーがかかっていると思うんですけども、彼はその期待にずっと応え続けていて、ひとりの男としてとても尊敬しています。
赤名竜之輔 (C)古館春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会
ウォーリー木下「メンバー全員に、託すことの面白さを見つけてもらいたい」
ーー須賀健太さんから役を引き継ぐ思いは?
醍醐:僕としては、須賀さんのあとを引き継ぐという気持ちはこれっぽっちもなくて、あくまでも同じ日向翔陽という役ですけれど、須賀さんが演じたのは須賀さんのフィルターを通した日向であって、僕がこれからやるのは、醍醐虎汰朗という自分のフィルターを通した日向を演じるだけだと考えています。なので、前回こうだったから今回はこうしようとか、物真似ではないですけども、そういったことはまったくせずに、僕が一からはじめるんだくらいの気持ちで、新しいことをしていきたいなと。とはいえ、ひとつ前にあれだけ偉大な方が役を演じられたので、ライバル心ではないですけども、もっと頑張ろうと燃える部分はあります。
ーーすべての公演を終えた時に、どのような頂の景色がみえると思いますか?
赤名:約1ヶ月の公演を通してではなく、毎公演がおわったときに、見に来てくださったお客様を笑顔にしたいです。
醍醐:どうなるかまだわからないです。東京凱旋公演まで終わったあとに、どんな景色が見えるのかは、きっとこれからの僕らの動きや、お客さんがどう見てくれるかだと思うので、これからを大切にしていった結果が、いい景色につながるといいなと思います。
ウォーリー:これまでは「繋ぐ」という言葉がよく作中に登場しましたが、今作から新しく「託す」という言葉も出てきます。劇中で登場人物が何回か口にするんですけども、託すって言葉は面白いなと思って。つまり自分じゃない人に全部やってもらうというか、ただ繋ぐだけじゃなくて、絶対的な信頼のなかで物事を進めていくということに烏野自身が気付くんです。新しい劇団『ハイキュー!!』のみんなには、37公演を通して、託すことの美しさや面白さを見つけてもらえると、素敵な景色が見えるんじゃないかと思っております。
ーー最後に一言お願いします。
醍醐:まだ稽古もはじまっていないですが、きっと素敵な舞台にしてみせるので、楽しみにしていてください!
赤名:とにかく一生懸命、そして新生烏野で楽しく高みを目指して頑張りたいと思います!
ウォーリー:原作『ハイキュー!!』の面白さをたっぷりと詰め込んだ作品として、また初心に帰ってやってみたいと思います。新しい彼らと一緒に、まだまだこんなに面白い演劇があるんだということも、みなさんにお見せできたらいいなと思っております。応援よろしくお願いいたします。
取材・文・撮影=田中未来