【RIZIN.19 見どころコラム(前篇)】RENA、地元大阪で復活の舞台へ 山本美憂、王座挑戦権獲得なるか
『RIZIN.19』は10月12日(土)にエディオンアリーナ大阪(大阪府)で開催される
■日本女子プロ格闘家 初のMSG参戦
2019年6月14日は日本格闘技界にとって記録と記憶に深く刻まれる日となった。
米メジャーMMA(総合格闘技)団体「ベラトール」のマジソン・スクエア・ガーデン(MSG)大会で、堀口恭司が世界バンタム級王座を奪取。堀口は保持するRIZIN同級王座とともに世界2冠を成し遂げた。また同大会には同じくRENAも出場。MSGにおいて日本の女子プロ格闘家が試合をするのは初めてであり、記念碑を打ち立てた。
だが注目度の高まりとともに、そのレベルを急速に高めているのが現在の女子MMA。“アメリカで試合をする”という自身の夢を叶えたRENAであったが現実は甘くない。新鋭ファイター、リンジー・ヴァンザントと対戦するもバックからチョークを極められ、一本負けを喫してしまった。
[第10試合/スペシャルワンマッチ RIZIN MMAルール:5分3R(51.0kg)※肘あり] RENA vs.アレキサンドラ・アルヴァーレ
■地元・大阪で復活へ
長年の想いを現実のものとしながら、夢の舞台でショッキングな敗戦。直後には「やっぱり私MMA向いてないわ 悲しませてごめんなさい・・」と自身のツイッターに綴ったRENAだが、しばらくするとやはり悔しさとともにファイターとしての思いが沸き上がってきたか、「今は辛くて苦しい思い出だけど いつか笑って話せる日がくるように」と前向きな思いをツイートし、練習も再開。復帰の舞台は地元・大阪で行われる「RIZIN.19」(10月12日、エディオンアリーナ大阪)と、思いがけず早いタイミングで訪れた。
シュートボクシング(SB)では“絶対女王”として、11年9月の黒星を最後に連勝街道を走ってきたRENAだが、「(MMAは)チャレンジと言いながら負けることに慣れていなくて、すごく辛い時期が続いていた」と冷静に自身を分析。改めてMMAは自分にとって“チャレンジ”であるととらえ直し、「これからは自分が一番強いもの(打撃)で勝負したい」と、初心に戻っての再出撃を誓った。
■スペインからの刺客が襲来
そんなRENAの対戦相手はかつて日本で活躍したブラックマンバの弟子ショーナ・ラムが予定されたが、練習中に脳震盪を起こしたためドクターストップに。代わってスペインのアレキサンドラ・アルヴァーレがRENAと対戦することとなった。
16年に初めてアマチュアMMAに挑んだアレキサンドラは、18年4月にプロデビュー。約30回の大会開催を数えるスペイン最大のMMAプロモーション「AFL」にも参戦経験を持ち、負けん気が強く好戦的なファイターであるという。キックボクシングで培った打撃を武器としており、RENAとは噛み合う勝負が予想される。
■打撃スタイルで爆発なるか
15年末のMMAデビューから6連勝を果たし、RIZINのトップ選手へ昇り詰めるとともに一般層の目を女子格闘技へ向かわせたRENAだが、ここ5試合で2勝3敗。しかし「初心に戻って、シュートボクシングの打撃を活かした戦い方を確立できるように頑張りたい」と語る通り、ここから再出発を期する。
「最近は打撃をおろそかにしている感じがありました」と自身も認める通り、浅倉カンナ戦(17年末)戦以降、敗戦の影響か“らしさ”を欠いていた感のあるRENA。
「地元大阪のパワーを借りて、最近スカ勝ちもしてないので、大阪人として爆発させたいと思います」
初心を取り戻した新生RENAが大阪に降り立つ。
■進化するMMAファイター山本美憂
[第11試合/スペシャルワンマッチ RIZIN女子MMAルール:5分3R(49.0kg)] ハム・ソヒ vs.山本美憂
そんなRENAと16年9月、MMAデビュー戦で対戦したのが山本美憂。レスリング世界王者のバックボーンに弟・山本“KID”徳郁がMMAで示した神懸かった格闘センス――美憂にもKIDの再来が期待された。しかし、結果はRENAがニンジャチョークで一本勝ち。美憂にMMAの洗礼を浴びせた。
総合第2戦もアンディ・ウィンに腕十字で一本負けを喫し(16年大晦日)、MMAの適性が疑われたが、人生の荒波を乗り越え五輪を目指し戦ってきた美憂は屈しない。17年7月のキャシー・ロブ戦で初勝利を上げ、同年10月のアイリーン・リベラ戦こそ一本負けを喫したが、18年7月の石岡沙織戦から、アンディ・ウィン(18年9月)、長野美香(18年大晦日)、浅倉カンナ(19年6月2日)と立て続けに降し現在4連勝。デビュー当初こそ苦しんだが、持ち前のレスリング技術&パワーに打撃と寝技の融合が進められており、タイトルマッチ目前の位置まで進んできた。
■韓国の世界的ストライカー
そして浜崎朱加が持つスーパーアトム級王座への挑戦権を賭け美憂と争うのが韓国のストライカー、ハム・ソヒ。キックボクシングをベースに2007年DEEPへ初来日したハムは、アグレッシブな戦いと実力で支持を受け、その後も来日を続けていく。現在同じくRIZINで戦う浜崎、RENAとも対戦があり、浜崎とは2010年12月と11年12月にJEWELSで対戦するもいずれも敗戦、RENAとは12年8月にSBで対戦し延長判定まで持ち込むも判定で敗れた。
その後JEWELSの王座を獲得すると(13年5月)、韓国人女性ファイターとしては初めてUFCに参戦(14年12月)。体格差のある中奮闘し、ファイト・オブ・ザ・ナイトを獲得するなど活躍した。
17年からは自国のROAD FCを舞台としてここでも王者となり、今年7月のさいたま大会でRIZINに初参戦し前澤智に初回TKO勝ちすると、美憂との対戦をアピール。美憂もリングに上がってこれを承諾し、この流れを受け今大会での対戦が決定となった。
■レスリング世界王者vs世界的ストライカー
自身のベースであるレスリングを活かした勝ちパターンを確立した美憂だが、MMAファイターとして百戦錬磨のハムにもそのスタイルを通用させることはできるか。ハムの打撃を過度に恐れ、距離を取り過ぎてしまってはテイクダウンも困難となる。テイクダウン狙いの瞬間生じる接近の刹那をハムがとらえるか、あるいは美憂がグラウンドで漬け込むのか。
美憂にとってはオリンピックと同じ意味合いを持つMMA王座の挑戦権、ハムは過去2度敗れている浜崎へのリベンジを懸けた一戦となる。
■ウェルター級主役争奪戦:K太郎vsマルコス
[第5試合/スペシャルワンマッチ RIZIN MMAルール:5分3R(77.0kg)] 中村K太郎 vs.マルコス・ヨシオ・ソウザ
その他のワンマッチでもさらに注目のカードが組まれている。日本を代表するウェルター級強豪にしてグラップラーである中村K太郎がRIZIN初参戦、同じくグラップラーで弟のサトシ(ライト級)とともにRIZIN王者を目指すマルコス・ソウザと対戦する。
北岡悟、廣田瑞人と連覇しライト級GPで台風の目となっているサトシだが、兄のマルコスは柔術の実力において弟を上回ると言われる実力者(ワールドプロ柔術2013世界大会の優勝者でもある)。日本への愛情も深くRIZINウェルター級の中心となりうる存在だが、同じくRIZINウェルター級の盛り上げを期待されるK太郎といきなりの対戦となる。
チョークスリーパー=裸絞めを得意とし“裸十段”とも呼ばれるK太郎は、2006年12月~2008年2月と、2015年9月~2019年4月の2回に渡ってUFCに参戦し、特に後期は強豪ひしめくウェルター級で4勝4敗の戦績を上げ、得意のチョークで一本勝ちを収めパフォーマンス・オブ・ザ・ナイトも獲得した。
日本で開催されるRIZINにおいて、シーンの盛り上げには日本人ファイターの活躍が不可欠。K太郎と日本人の血を持つマルコスの一戦は、まさに“ウェルター級主役争奪戦”ともいうべき戦いとなる。至高の寝技合戦となるか、あるいはK太郎がMMAキャリアの違いを見せるのか、マルコスがサトシのように先輩MMAファイターを食うアップセットを起こすのか。
■ライトヘビー級王者イリー参戦
[第13試合/スペシャルワンマッチ RIZIN MMAルール:5分3R(100.0kg)※肘あり] イリー・プロハースカ vs.ファビオ・マルドナド
また旗揚げ戦からRIZINに出場し、ライトヘビー級王者に輝くなどすっかり重量級の顔となった“チェコの怪鳥”イリー・プロハースカもメインイベントで出場。16年6月の対戦で皇帝エメリヤーエンコ・ヒョードルをパンチでKO寸前に追い込んだ強打の持ち主ファビオ・マルドナドと対戦する。ヒョードルの圧力と迫力に屈せずカウンターを合わせ、あわやの場面を作ったマルドナドだが、イリーは王者の威厳を示すことができるか。どちらもアグレッシブな選手であるだけに、重量級らしい迫力のKOが見られそうだ。
【対戦カード】
[第13試合/スペシャルワンマッチ RIZIN MMAルール:5分3R(100.0kg)※肘あり]
イリー・プロハースカ vs.ファビオ・マルドナド
[第12試合/スペシャルワンマッチ RIZIN MMAルール:5分3R(61.0kg)※肘あり]
朝倉海 vs.佐々木憂流迦
[第11試合/スペシャルワンマッチ RIZIN女子MMAルール:5分3R(49.0kg)]
ハム・ソヒ vs.山本美憂
[第10試合/スペシャルワンマッチ RIZIN MMAルール:5分3R(51.0kg)※肘あり]
RENA vs.アレキサンドラ・アルヴァーレ
[第9試合/RIZIN FIGHTING WORLD GP2019 ライト級トーナメント開幕戦 1stROUND RIZIN MMA トーナメントルール:5分3R(71.0kg)]
ジョニー・ケース vs.ホベルト・サトシ・ソウザ
[第8試合/RIZIN FIGHTING WORLD GP2019 ライト級トーナメント開幕戦 1stROUND RIZIN MMA トーナメントルール:5分3R(71.0kg)]
パトリッキー・“ピットブル”・フレイレ vs.川尻達也
[第7試合/RIZIN FIGHTING WORLD GP2019 ライト級トーナメント開幕戦 1stROUND RIZIN MMA トーナメントルール:5分3R(71.0kg)]
ルイス・グスタボ vs.上迫博仁
[第6試合/RIZIN FIGHTING WORLD GP2019 ライト級トーナメント開幕戦 1stROUND RIZIN MMA トーナメントルール:5分3R(71.0kg)]
トフィック・ムサエフ vs.ダミアン・ブラウン
[第5試合/スペシャルワンマッチ RIZIN MMAルール:5分3R(77.0kg)]
中村K太郎 vs.マルコス・ヨシオ・ソウザ
[第4試合/スペシャルワンマッチ RIZIN キックボクシングルール:3分3R(62.0kg)]
白鳥大珠 vs.大雅
[第3試合/スペシャルワンマッチ RIZIN キックボクシングルール:3分3R(77.0kg)]
HIROYA vs.小西拓槙
[第2試合/スペシャルワンマッチ RIZIN MMAルール:5分3R(無差別級)]
シビサイ頌真 vs.キム・チャンヒ
[第1試合/スペシャルワンマッチ RIZIN キックボクシングルール:3分 3R(56.0kg)]
植山征紀 vs.梅井泰成
※対戦カードは変更になる場合がございます。
同大会から8人の精鋭ライト級選手たちによるトーナメント戦『RIZIN FIGHTING WORLD GP 2019ライト級トーナメント』が始まる