『ねじまき鳥クロニクル』を舞台化するインバル・ピントに注目 イスラエルが生んだ奇才の魅力とは

コラム
舞台
2019.12.12

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世界的ベストセラー作家・村上春樹の大長編小説『ねじまき鳥クロニクル』が初舞台化され、2020年2月11日(火・祝)~3月1日(日)東京芸術劇場プレイハウス、3月7日(土)~3月8日(日)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、3月14日(土)~3月15日(日)愛知県芸術劇場大ホールで上演される。演出・振付・美術を手がけるのはイスラエルのインバル・ピントだ。ここではダンス界に留まらない活躍を果たしている奇才ピントについてご紹介する。

独得のファンタジーとアート性が溶け合う魅惑の世界

ピントは1969年、イスラエルに生まれた。13歳でダンスをはじめ、エルサレムのペザレル・アカデミーでグラフィックアートを学んでいる。ダンサーとしてはイスラエルの名門バットシェバ舞踊団に在籍した。1990年から振付を開始し、1993年の『Doi-Can』で本格的に振付家デビューを果たす。その後アブシャロム・ポラックと共にカンパニーを設立し、世界中で公演を行い、2000年には『Wrapped』で米・ニューヨークの権威ある舞踊賞ベッシー賞に選ばれる。2011年にはイスラエル文化賞を受賞した。コンテンポラリーダンスが盛んなイスラエルの振付家の中でも、長年バットシェバ舞踊団を率いてきたオハッド・ナハリンらと共に国際的に名高い。

インバル・ピント 写真撮影=安藤光夫

インバル・ピント 写真撮影=安藤光夫

初来日は2001年10月、第8回神奈川国際芸術フェスティバルで上演されたインバル・ピント・カンパニー『オイスター』だった。サーカス小屋に誘われたような不思議な雰囲気がただよう中で繰り広げられたのは、異形の者たちが織り成す思いもよらないような物語。演者たちはダンス、アクロバットなどフィジカルな要素満載の動きを自在にこなし自然とファンタジーの世界へ誘う。また隅々まで独特な美的感覚が張りめぐらされているアートとしても完成度が高く魅惑的な作品だった。

日本でも大人気! イマジネーション豊かな世界へようこそ

楽しく、美しく、奇妙な味のある世界観は老若男女問わず魅了する幅と奥行きを備えている。2005年には『オイスター』『ブービーズ』で再来日。2007年には彩の国さいたま芸術劇場との国際共同製作で『Hydra ヒュドラ』が世界初演された。表題はギリシア神話に現れる怪物の意で、宮沢賢治などの影響も受けたというこの作品でもイマジネーション豊かな世界を展開した。

2012年には『ボンビックス モリ with ラッシュ』『ゴールドフィッシュ』で来日。2014年には東京都現代美術館で行われた東京アートミーティング(第5回)「新たな系譜学をもとめて 跳躍/痕跡/身体」 関連企画として『ウォールフラワー』を上演した。特に印象深いのが2016年に彩の国さいたま芸術劇場で上演された『DUST-ダスト』だ。DUSTすなわち塵。息をのむように美しい場面もあるが、塵の如くはかなく流転する人間の生を捉え、生きる切実さが胸に迫った。

日本から発信する極上かつ野心的な舞台

『100万回生きたねこ』舞台写真  提供/ホリプロ

『100万回生きたねこ』舞台写真  提供/ホリプロ

『100万回生きたねこ』舞台写真 提供/ホリプロ

『100万回生きたねこ』舞台写真 提供/ホリプロ

ピントはダンス以外にオペラやCMにも携わり、日本でもホリプロ企画制作によるミュージカル『100万回生きたねこ』(2013年初演、2015年再演)、百鬼オペラ『羅生門』(2017年)が出色である。前者は佐野洋子原作のロングセラー絵本を糸井幸之介、戌井昭人、中屋敷法仁という気鋭演劇人の脚本を得て舞台化し、第21回読売演劇大賞で優秀作品賞、優秀演出家賞、優秀男優賞、優秀女優賞に選ばれた。

『100万回生きたねこ』舞台写真 提供/ホリプロ

『100万回生きたねこ』舞台写真 提供/ホリプロ

後者は文豪・芥川龍之介の「羅生門」「藪の中」などを基に気鋭・長田育恵が戯曲を書いた異色ファンタジーである。いずれの作品にも日本のコンテンポラリーダンス屈指の踊り手が出演し、演劇とダンスが混然一体となったユニークな味わいが特徴的。極上のエンターテインメントかつ芸術性の高い野心的な舞台に仕上がった点に値打ちがある。

『羅生門』舞台写真 提供/ホリプロ

『羅生門』舞台写真 提供/ホリプロ


『羅生門』舞台写真  提供/ホリプロ

『羅生門』舞台写真  提供/ホリプロ

ピントは村上ワールド屈指の大作『ねじまき鳥クロニクル』をどのように舞台化するのか。成河、 渡辺大知、門脇麦をはじめとする俳優陣と8名のダンサーは実力派揃いである。アミール・クリガー(脚本・演出)、藤田貴大(脚本・演出)とのコラボレーションによる一大プロジェクトだが、『100万回生きたねこ』でも『羅生門』でも原作への敬意を払いつつ、俳優・ダンサーの個性を生かし清新なステージを生んできただけに期待が高まる。ピントのような異才がいる限り、舞台芸術の可能性の扉は、まだまだ開かれていると勇気づけられるのだ。

文=高橋森彦

公演情報

『ねじまき鳥クロニクル』
 
原作:村上春樹
演出・振付・美術:インバル・ピント
脚本・演出:アミール・クリガー
脚本・演出:藤田貴大
音楽:大友良英
 
【キャスト】 
<演じる・歌う・踊る>
成河、 渡辺大知、 門脇 麦
大貫勇輔、 徳永えり、 松岡広大、 成田亜佑美、 さとうこうじ、 吹越 満、 銀粉蝶
 
<特に踊る>
大宮大奨、 加賀谷一肇、 川合ロン、 笹本龍史
東海林靖志、 鈴木美奈子、 西山友貴、 皆川まゆむ (50 音順)
 
<演奏>
大友良英、 イトケン、 江川良子

 
【受付期間限定!! 特典付き発売】
インバル・ピントのコラム掲載に伴い、2週間の限定で特典付きを販売
※公演当日劇場内の特典引換所でお受取り可能
特典:ポストカード3枚セット(非売品)
(公演ビジュアルより1枚+演出インバル・ピントの過去作品衣装スケッチより2枚)  
特典ポストカード

特典ポストカード


対象公演:『ねじまき鳥クロニクル』東京・大阪・愛知公演
受付期間:12月13日(金)12:00~12月26日(木)23:59

の申込み:【こちら】から!
 
■東京公演
日程:2020年2月11日(火・祝)~3月1日(日)
会場:東京芸術劇場プレイハウス
 
★アフタートーク開催!
2月22日(土) 18:00の回 成河、渡辺大知、門脇麦
2月23日(日) 18:00の回 大貫勇輔、徳永えり、松岡広大

 
料金:S席 11,000円、 サイドシート 8,500円(税込)
一般発売:2019年11月2日(土)
※本公演のは主催者の同意のない有償譲渡が禁止されています。
 
主催・企画制作:ホリプロ
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
 
■大阪公演
日程:2020年3月7日(土)~3月8日(日)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
 
料金:12,000円(全席指定・税込)
※未就学児入場不可
 
主催:梅田芸術劇場
お問い合わせ:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ 
TEL: 06-6377-3888(10:00~18:00)
 
■愛知公演
日程:2020年3月14日(土)~3月15日(日)
会場:愛知県芸術劇場大ホール
 
料金:S席12,000円、 A席10,000円(全席指定・税込)
※未就学児入場不可
 
主催:メ~テレ、 メ~テレ事業
お問い合せ:メ~テレ事業
TEL:052-331-9966(祝日を除く月-金10:00~18:00)
 
協力:新潮社
後援:イスラエル大使館
 
■公演詳細
https://horipro-stage.jp/stage/nejimaki2020/
■作品公式SNS
作品公式Twitter:@nejimakistage
 
■作品に関するお問い合わせ
ホリプロセンター 03-3490-4949
(平日10:00-18:00 / 土曜10:00~13:00、 日祝・休)
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