若手登竜門、2つの国内コンクールで優勝した18歳のピアニスト・亀井聖矢が次に目指すもの

インタビュー
クラシック
2020.1.9
亀井聖矢

亀井聖矢

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亀井聖矢(かめいまさや)は、2019年、若手音楽家の登竜門とも言われる日本音楽コンクール・ピアノ部門、そしてピティナ・ピアノコンペティション特級に17歳で優勝した俊英。飛び入学特待生として桐朋学園大学に入学し、現在、1年に在籍している。

――ピアノを始めたきっかけを教えてください。

出身は愛知県で、高校まで愛知県にいました。ピアノは4歳のときに始めました。

物心つく前、僕は外で遊ぶというタイプではなく、家で鍵盤のおもちゃで遊んでいるような子供だったので、それを見て、母がピアノを習わせてみようと思い、近所の先生のところへ通いだしたのが始まりです。小学生になって、コンクールを1年に1回程度受けるようになりました。そして、中学1年生の時、今も教えていただいている長谷正一先生に出会いました。​

――いつ頃、ピアニストになろうと決心しましたか?

中学の頃から、音楽の道に進みたいと思っていました。中学1年生のときに、学生音楽コンクールの全国大会に進みました。中学2年生のときに、ピティナのF級全国決勝大会で銀賞をいただきました。中学校の部活では、卓球部に所属していました。ほとんど幽霊部員でしたけれどね(笑)。

――そして、愛知県立明和高校音楽科に進まれました。

まわりがみんな音楽の道に進もうしている人たちという環境で、とても刺激を受けました。その頃から、コンクールをより積極的に受けるようになりました。

亀井聖矢

亀井聖矢

――高校2年終了後、飛び入学特待生として桐朋学園大学に進学されましたね。

高校2年のとき、先生を通して、桐朋学園大学で飛び入学という話があるのを聞きました。仲の良い友達と過ごす時間が1年短くなるのは、さみしく思いましたが、新しい環境でいろいろなことが勉強できるのは自分にとってすごく良いことですから、すごく行きたいという気持ちもありました。高校の杉浦日出夫先生に相談したら、「それはすごく良い話」と言っていただけ、それで受験を決めました。

試験は実技だけでした。桐朋には今までそういう(飛び入学特待生の)制度がなく、僕が初めてでした。

――大学ではいかがですか?

桐朋では、新しく上野久子先生と岡本美智子先生に教えていただいています。先生たちにいろんな視点からアドバイスをもらい、それを吸収して、自分の解釈にまとめて、自分の音楽にしています。周りには、日本音楽コンクールで第1位を取ったような先輩たちがたくさんいて、自分もがんばらないと追い付いていけないような高いレベル。刺激を受け、切磋琢磨しています。大学では、音楽史や音楽理論も勉強できて、とても充実しています。

――2019年の日本音楽コンクールのファイナルとピティナ・ピアノコンペティションの特級ファイナルで、ともに、サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」を取り上げましたね。これは珍しい選曲ではないですか?

ラフマニノフやプロコフィエフが王道なのでしょう。でも、サン=サーンスの第5番を聴いて、きれいな部分、激しい部分があり、すごく惹き込まれ、弾きたいと思って楽譜を買いました。コンクールで弾くことを先生たちに相談したら、「この曲を選ぶ人は少ないし、この曲で大丈夫?」と言われました。僕は、好きな曲を弾きたい思いと、サン=サーンスの第5番は演奏者によって変わる魅力的な曲だと思っていたので、「弾きたいです」と言って、押し切りました。最終的に良い結果をいただいて、先生たちにも「良い曲だったね」と言われました(笑)。

亀井聖矢

亀井聖矢

――サン=サーンスとは、フランス音楽に特に興味があるということですか?

フランス音楽というより、サン=サーンスの曲自体にすごく魅力を感じました。第1楽章は最初がすごくきれいで、第2楽章は「エジプト風」の副題の通り、異国情緒豊かな旋法が現れて、面白い。第3楽章は、技巧的にも難しくて、派手に盛り上がり、見ていても、聴いていても、楽しい。全楽章を通して、いろんな場面があり、飽きないのです。

――それまでにオーケストラとの共演の経験はありましたか?

小さい編成で1楽章だけ弾いたことはありましたが、フル・オーケストラで協奏曲の全楽章を弾くのはサン=サーンスが初めてでした。

――好きなレパートリーについて教えてください。

リストのような、派手でわかりやすく、聴いている人にも喜んでもらえる曲が好きです。楽しんでもらえるのがうれしくって、そういうレパートリーが好きで、得意です。

最近はショパンが好きですね。小さい頃は特に何とも感じなかったのですが、最近、弾いたり、聴いたりして思うのは、同じようなパッセージが何回繰り返されても毎回違う表現ができるということ、そして、その繰り返しは何回聴いてもきれいだと思えるメロディがあってこそ可能だということ。その良さを引き出せるかどうかは、演奏者の表現にかかっていると思います。

亀井聖矢

亀井聖矢

昔から好きなのはバッハですね。すごく緻密に音楽が組み立てられているフーガのようなものが特に好きです。

コンチェルトでは今後、ラフマニノフを弾きたいと思っています。彼のソナタは弾いたことがあるのですが、コンチェルトはまだなので演奏してみたいです。

――2020年2月26日(水)の日本音楽コンクール受賞者発表演奏会ではチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番 第1楽章を演奏されますね。

チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番は、ずっと弾きたいと思っていた曲です。こういう機会をいただけたので、ちゃんと勉強していきたいと思います。

――2020年3月21日(土)のピティナ・ピアノコンペティション入賞者記念コンサートでは、独奏と室内楽ですね。

第1部でソロを弾かせていただいて、第2部はピアノ五重奏です。最初はスペインもので、アルベニスの組曲「イベリア」第2巻から「トゥリアーナ」。「リストのハンガリー狂詩曲」第13番は、ヴォロドスの編曲による、リストの原曲をさらに華やかに技巧的に昇華させたような、聴き応えも見応えもある、楽しい曲です。後半は、ポローニア・クァルテットとドヴォルザークのピアノ五重奏曲から第3、4楽章を弾きますが、弦楽器のアンサンブルとの共演は初めてです。

「緊張する」と言いながら撮影にのぞむ亀井

「緊張する」と言いながら撮影にのぞむ亀井

――これからは海外へも活動の場を広げていくのでしょうか?

今月末(2019年12月末)に初めてヨーロッパに行き、パリでレッスンを受けてきます。そして、2020年4月にはウィーンでのリサイタルがあります。

――将来はどういうピアニストになりたいですか?

コンサートを積み重ねて、「亀井君の演奏をもう一度聴きたい」と思われるようなピアニストになりたいです。国内はもちろん海外でコンサートをひらいたり、オーケストラとも共演したりしたいです。それから、海外のコンクールも少しずつ受けていって、できれば5年後のショパン・コンクールに挑戦したいと思っています。

――大学生活はいかがですか?

大学に入って、東京で一人暮らしになり、自分でご飯を作ったりもします。嫌々ながら家事もしています(笑)。どこかに遊びに行ったりというようなことはあまりありません。

作曲するのも好きで、趣味で曲を書いたりしています。今は大学の副科で作曲の勉強もしています。ちゃんとした曲が出来たら、どこかで演奏したいですね。

亀井聖矢

亀井聖矢

取材・文=山田治生 撮影=福岡諒祠

公演情報

『第88回日本音楽コンクール受賞記念演奏会』

日程:2020年2月26日(水)18:30開演(18:00開場)
会場:東京オペラシティ・コンサートホール
料金(税込):S席4,000円 A席2,500円
一般発売:2019年12月21日(土)10:00~
 
出演
小鍛冶邦隆指揮、アンサンブル・リーム(作曲部門)
太田弦指揮、東京フィルハーモニー交響楽団(演奏部門)
松本真結子(作曲部門):風の形象 8人の奏者のための
小堀勇介(声楽部門):
ドニゼッティ/歌劇<連隊の娘>”マリーのそばにいることは”
ロッシーニ/歌劇<泥棒かささぎ>”おいで、この腕の中に”
亀井聖矢(ピアノ部門):チャイコフスキー/ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23より 第1楽章
東亮汰(バイオリン部門):ブルッフ/スコットランド幻想曲 作品46より 第3・4楽章
山本楓(オーボエ部門):グーセンス/オーボエ協奏曲 作品45
瀧本実里(フルート部門):
W.A.モーツァルト/アンダンテ 作品315
W.A.モーツァルト/ロンド 作品184 ニ長調
※演奏順未定。曲目は変更になることがあります。

公演情報

『第43回ピティナ入賞者記念コンサート』第1部
 
日程:2020年3月21日(土) 13:00開演(開場 12:40~)
会場:第一生命ホール
料金:指定席(一般) 3,500円
 
出演:
亀井聖矢(特級グランプリ/聴衆賞/福田靖子賞)*ピアノソロ
黒木雪音(特級銀賞)
荒井玲奈(Pre特級銀賞)
加古彩子(G級銀賞)
ほか
 
曲目・演目:
◆亀井聖矢
アルベニス:組曲「イベリア」第2巻 より 「トゥリアーナ」
リスト=ヴォロドス編:ハンガリー狂詩曲第13番 イ短調 S.244-13
 
◆黒木雪音
リスト: ハンガリー狂詩曲第2番 嬰ハ短調 S.244-2
 
◆各入賞者
ショパン:ポロネーズ第7番「幻想ポロネーズ」
ブラームス:ピアノソナタ第3番 第1楽章
リスト:パガニーニ大練習曲第3番「ラ・カンパネラ」
ストラヴィンスキー:「ペトルーシュカからの3楽章」 より第1、3楽章(2台ピアノ版)
バーンスタイン:キャンディード序曲(連弾版)
など、彩り豊かなソロ・デュオ曲をお楽しみいただけます。
 
※同日に第2部が開催されます。
※第1部と第2部で出演者、演目が異なります。ご確認の上、お申込みください。
※2019年11月末時点。演目は変更になる可能性がございます。

公演情報

『第43回ピティナ入賞者記念コンサート』第2部
 
日程:2020年3月21日(土) 16:30開演(開場 16:10~)
会場:第一生命ホール
料金:指定席(一般) 3,500円
 
出演:
嘉屋翔太(Pre特級金賞)
神原雅治(G級金賞/福田靖子賞第2位)
亀井聖矢(特級グランプリ/聴衆賞/福田靖子賞)*室内楽

 
室内楽共演:
ポローニア・クァルテット(弦楽四重奏)
東 亮汰(第1ヴァイオリン )岸 菜月(第2ヴァイオリン )堀内 優里(ヴィオラ)小林未歩(チェロ)
 
曲目・演目:
◆亀井聖矢
ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲 イ長調 Op.81より 第3、4楽章
 
◆各入賞者
ショパン:ポロネーズ第7番「幻想ポロネーズ」
ブラームス:ピアノソナタ第3番 第1楽章
リスト:パガニーニ大練習曲第3番「ラ・カンパネラ」
ストラヴィンスキー:「ペトルーシュカからの3楽章」 より第1、3楽章(2台ピアノ版)
バーンスタイン:キャンディード序曲(連弾版)
など、彩り豊かなソロ・デュオ曲をお楽しみいただけます。
 
※同日に第1部が開催されます。
※第1部と第2部で出演者、演目が異なります。ご確認の上、お申込みください。
※2019年11月末時点。演目は変更になる可能性がございます。

公演情報

2019年度ピティナ・コンチェルト入賞者記念コンサート
 
日程:2020年5月5日(火・祝)
開演:13:00~ (開場 12:45~)
会場:上野学園 石橋メモリアルホール (東京都)
一般発売:2020年1月9日(木)10:00~
 
出演者:
亀井 聖矢(2019年度特級グランプリ、福田靖子賞選考会第1位)
嘉屋 翔太(2019年度Pre特級金賞)
神原 雅治(2019年度G級金賞、福田靖子賞選考会第2位)
 
曲目・演目:
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 全楽章(亀井 聖矢)
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 第1楽章(嘉屋 翔太)
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 第1楽章(神原 雅治)
*曲目は変更の可能性がございます。あらかじめご了承ください。
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