中村鴈治郎、中村扇雀、松本幸四郎、片岡愛之助らが華やかに勢ぞろい 大阪松竹座『壽初春大歌舞伎』が開幕
『大當り伏見の富くじ』より (C)松竹
2020年1月3日(金)大阪松竹座で『壽初春大歌舞伎』が初日を迎えた。本公演には、中村鴈治郎、中村扇雀をはじめ、松本幸四郎、片岡愛之助ら、華やかな顔ぶれが勢ぞろいしている。初日公演のレポートが届いたので紹介しよう。
昼の部の最初を飾る『九十九折』は、四十五年ぶりの上演となり、幕末の京都を舞台にした男女の悲しき恋と、人間関係やお金に翻弄される主人公・木谷屋手代清七の人生を描いた物語。終盤の松本幸四郎演じる清七、片岡愛之助演じる八坂の力蔵、中村壱太郎の山猫芸者雛勇が繰り広げる悲しい駆け引きと、生死を分かつ立ち廻りに観客は息を飲んで、その姿を見守った。
『九十九折』より (C)松竹
続いて『大津絵道成寺』は、江戸時代に庶民の間で流行した『大津絵』に描かれた藤娘・鷹匠・船頭・座頭・鬼の五役を、愛之助の早替りで魅せる、初春らしい華やかな舞踊。次々と見せる早替りに客席は大盛り上がり、盛大な拍手と「松嶋屋!」の大向こうが送られた。最後には、幸四郎による矢の根の五郎らも加わり、華やかな幕切れとなった。
『大津絵道成寺』より (C)松竹
『艶容女舞衣 酒屋』は、「今頃は半七さん……」の口説きが有名なこの演目は、大坂が舞台の上方らしい作品。今回は中村鴈治郎が茜屋半七と宗岸の二役。そして中村扇雀が半七女房お園と、先日発表した坂田藤十郎の休演を受けた配役変更にて、美濃屋三勝の二役を演じる。家族、恋人への想い、そして親子の情愛が交錯。その姿を見事に体現する鴈治郎と扇雀に、客席からは惜しみない拍手が送られた。
『酒屋』より (C)松竹
夜の部『義経千本桜 川連法眼館の場』は、愛之助演じる狐忠信、壱太郎の静御前、そして片岡秀太郎による源義経の華やかな顔ぶれに加え、舞台にさまざまな工夫が施された、ケレン味あふれる作品だ。舞台上のあちこちから次々と現れる狐忠信に、客席は驚きを隠せない様子で、親子の情愛を軽やかに表現した愛之助の健闘を称え、最後には大きな拍手が送られた。
『義経千本桜』より (C)松竹
続いて『夕霧名残の正月』は、鴈治郎の藤屋伊左衛門と、扇雀による亡くなった恋人遊女夕霧の切ないひと時を体現した舞踊劇。夕霧の四十九日で気を失った伊左衛門の前に、突如夕霧が現れると、観客は思わず引き込まれる。そして、二人の愛が織り成す儚い夢物語に誘われ、客席は温かくも胸を締め付けられる雰囲気に包まれた。
『夕霧名残の正月』より (C)松竹
『大當り伏見の富くじ』では、幸四郎扮する紙屑屋幸次郎が、ある日花魁道中に遭遇し、鴈治郎演じる鳰照太夫に見惚れてしまう。うつつを抜かす幸次郎と、鳰照太夫の柔らかな笑顔に客席からは笑い声が。その後も富くじをめぐって、笑いあり!涙あり!犬あり!河童あり!とテンポ良く繰り広げられるストーリーに、観客も大盛り上がり。出演者勢ぞろいの絢爛豪華なフィナーレの後には拍手が鳴り止まなかった。本公演は1月27日(月)まで上演されている。
『大當り伏見の富くじ』より (C)松竹