『伊藤万理華EXHIBITION “HOMESICK”』が渋谷パルコにて開幕! 今の伊藤万理華を凝縮した展覧会
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伊藤万理華
伊藤万理華の、展覧会『伊藤万理華EXHIBITION “HOMESICK”』(以下、HOMESICK)が、2020年1月24日(金)に、渋谷パルコのGALLERY Xで開幕した。本展では、乃木坂46OGであり、カルチャーアイコンの伊藤がキュレーターとなり、写真、漫画、映像、ファッションなど、幅広いジャンルのクリエイターたちとのコラボレーション作品を紹介する。開幕を前に、プレス向けの内覧会が開催され、伊藤が会見に応じた。伊藤のコメントとあわせ『HOMESICK』の見どころを紹介する。
会場となる「GALLERY X」は、渋谷パルコの地下1階の一角にある。
人と人と伊藤万理華のコミュニケーション
「こんなにたくさんの方(報道)がきてくださるとは思わず、すごい緊張しています」
伊藤は率直なコメントと笑顔で挨拶し、本展開催の経緯を語った。
「2年前、グループを抜ける時にあわせて、初めての個展『伊藤万理華の脳内博覧会』をやらせていただきました。今、ひとりになり何を思い、何を伝えたいかを考えて、頭に浮かんだのが『HOMESICK』でした」
ホームシックといえば、ネガティブなイメージの言葉だ。伊藤はそこに、独自の解釈を加える。
「一人で活動するようになってから、家に引きこもっていた時期もありました。うちにこもっている。さみしい。ある意味、ホームシックですよね。そこから脱却するための、ポジティブな意味合いでタイトルにしました」
会場を入るとまず、伊藤の手書きメモが出迎えてくれる。
家にこもっていた時期があるという伊藤だからこそ、コンセプトが「人と人とのコミュニケーション」であることに意義を感じられる。「家族や友達とどう接して、何を対話して何を伝えるか。何を作るか。それを色々なジャンルの方とのコラボレーションで挑戦することができた」と語る。
印象に残っているコラボは、漫画家の椎名うみとのクリエイション。
「椎名うみさんは、私が個展をやるきっかけをくれた方です。今回はうみさんに、自分のパーソナルな部分をお話しして、オリジナル漫画を作っていただきました。コミュニケーションをとりながら、私の思うことを話し、うみさんがそれを一度呑み込んで、うみさんの世界観に落とし込む。その作業はお互いはじめての経験。印象的でした」
では、クリエイターたちとのコミュニケーションを通し、どんなテーマを描き出したかったのだろうか。この質問に、伊藤は「家」、そして「家族」と答えた。
たとえば、本展のメインビジュアルで伊藤が着用しているドレスは、会場に飾られている。元ファッションデザイナーの母親と制作したドレスだという。
「それまで私は母と、上手く対話ができていませんでした。どうしたらコミュニケーションがとれるかを、たくさん考えて、『一緒にドレスつくろうよ』の一言から、会話がはじまったり、コミュニケーションが生まれたりしました。私がデザインし、一緒に生地を買いに行きました。そして作ったのは、全部母親です」
制作に3か月。アイデアの共有まで遡ると、それ以上の期間を要したという。
展覧会メインビジュアル
今回伊藤は、クリエイターの選出だけでなく、企画書作成、クリエイターたちへの参加のオファーにも関わった。ドレスやシューズ、グッズのデザインを手がける傍ら、ZINEの制作においては「写真の構成を、アートディレクターの方などと意見を出しあいながら作りました。プロカメラマンさんに撮っていただいた写真も写ルンですの写真も、うみさんの漫画も全部混ぜこんでいます。今までにない本になった」と、振り返る。
ZINEは、表紙+67ページで、会場のみでの販売となる。椎名うみの書き下ろし漫画や、映像作品の撮影中のオフショットも掲載され、本展のエッセンスをつめこんだ1冊といえる。
展示風景
OGとして誇れるように
以下、質疑応答の一部を抜粋して紹介する。
——乃木坂46のメンバーも、この展覧会にくるのでは?
同期のメンバーやOGから、何人かからは、来てくれると聞きました。楽しみしてくれていたので来てくれると思います。
——乃木坂46への思いは?
現在も在籍する一期生が、8年目。すごいことだと思います。私自身もOGとしても誇れるようにありたいですし、次の夢をもち一人になるメンバーや、新しいメンバーがいた時には、応援したいです。
——次回の展覧会も、期待してよいでしょうか?
あまり考えていません(笑)。前回も完全燃焼したから。これ以上、個展とかアートなことは関わりたいと思わないと思うくらいの完全燃焼。今回もそれに近い。またいつかやるか聞かれたら、やるかわからないし、それがまたすぐではないし、定期的ではないのかなと。いまは自分を出し切った状態です。
最後は「少しでも、自分が伝えたいと思っていることが伝わっているといいなと思います。たくさんの方に見ていただければ」と締めくくった。
コンパクトでありながら、濃密な展示空間
展示は、大きく4つのセクションに分かれている。最初のゾーンは、写真家・前康輔とのコラボレーション。スタイリングは伊藤万理華本人が行い、自宅での撮影も敢行したものなのだそう。シャッターがとらえた親密な空気を感じてほしい。
壁沿いに白い背表紙の本がずらりと並ぶ本棚がみえたら、漫画ゾーンだ。椎名うみの短編漫画を読むことができる。20ページほどの短編だが、伊藤が「パーソナルな部分」と要素が、椎名うみというフィルターを通し、非現実的な設定に包まれながらも、痛々しいほどに生々しく描き出されている。
嬉しいことにグッズのZINEにも、この漫画が掲載されている。しかし、会場で上映される映像作品を深く広く鑑賞するには、ここで足を止め、1冊手にとり、ページをめくることをおすすめする。
漫画は約20ページ。読んだら、戻して、黒い幕の中へ。
続くセクションは、ショートムービーだ。監督は、柳沢翔。椎名の漫画を原作にした約12分の作品が上映される。クローズアップを効果的に取り入れた映像と、出演する伊藤の、美しく、儚げでありながらも爆発力のある演技は、観る者の心にいつまでものこり続けるだろう。
最後の一角は、ファッション×ダンスゾーン。ファッションとダンスを掛け合わせた映像を、乃木坂46の楽曲でも活躍する振付師・菅尾なぎさが制作した。ファッションには、BODYSONG.、Tanaka Daisuke、PERMINUTEの3ブランドと、実の母親が参加。いずれも見逃せない。
伊藤万理華の自身2度目の展覧会、『伊藤万理華EXHIBITION “HOMESICK”』は、1月24日(金)~2月11日(火・祝)まで。伊藤の感性に彩られた、今の伊藤万理華の濃縮空間を見逃さないでほしい。
取材・文・撮影=塚田史香
イベント情報
■会場:東京都 渋谷PARCO GALLERY X