腸が舞う!腸楽しい大乱闘ゾンビ映画『処刑山 ナチゾンビVSソビエトゾンビ』#野水映画“俺たちスーパーウォッチメン”第七十三回
TAPPELUFT PICTURES (C) 2014
TVアニメ『デート・ア・ライブ DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス 怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。
私はゴア表現(血や肉が飛び散るような猟奇的な描写)があるホラーが好きだ。そんなシーンにキャッキャと手を叩いて喜んでしまう性分だが、中でも腸は特別。長い小腸がズリズリと引き摺り出される瞬間に、見てはいけないものを見てしまった背徳感のような、独特の高揚感が得られるからだ。……あなたはそうでも、僕は私はそうじゃないって? では今回は、あなたも腸の魅力にハッとなるであろう、楽しい作品を紹介しようと思う。ノルウェー・アメリカでの公開から6年の時を経て日本公開が決まった『処刑山 ナチゾンビVSソビエトゾンビ』だ。
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マーティンとその仲間たちは、かつて旅行で訪れた雪山で、ゾンビとして蘇ったナチスの残党に襲われた。友達も、恋人も、自分の右腕までも失ったマーティンは、なんとか一命を取り留めたものの、目を覚ますとナチゾンビのリーダー・ヘルツォーク大佐の腕を移植されてしまっていた。しかし、マーティンは苦労の末に腕に宿るパワーを使いこなすことに成功。アメリカからやってきたゾンビ退治の専門家集団“ゾンビスクワッド”と共に、ナチゾンビ軍団への逆襲を開始する。
シビれる強さ!私も欲しいぞゾンビアーム
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本作は、2009年に公開された『処刑山 -デッド・スノウ-』の続編にあたる。「海に行けばよかった」というインパクト抜群のキャッチコピーを掲げた前作を観たことのない方も大丈夫。本作の冒頭では、優しいことに前作のあらすじをサラッとおさらいしてくれる。
『処刑山 -デッド・スノウ-』予告
前作で右腕を失くした主人公マーティンがどうやって戦うのか? そんな心配もどこへやら、医者が「君の腕、色は悪かったけどくっつけといたよ!」と腕を縫合してくれていた。しかし、よく見てみると、「それ、俺の腕じゃねー!ゾンビの腕じゃねーか!」という悲劇で幕を開ける。色が悪いだけならまぁいいじゃんなどと思っていたら、手が届く範囲の人間全部をぶっ殺しまくってしまう、暴れん坊ゾンビアームだったからさあ大変。力あまって、助けてくれた子どもを窓からぶん投げてしまったり、ゾンビへのパンチが胴体を突き抜けてしまったりとコントロールが難しい……しかし、やってみたい。私も素手でゾンビの内臓抜きしたい!心臓掴み取りしたい!
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『キャプテン・スーパーマーケット』(『死霊のはらわた』シリーズ作品)主人公・アッシュの、チェーンソーの右手よりもピーキーなこのゾンビアーム、力が強いだけでは終わらない。なんと“触れた相手を蘇らせる”という能力が宿っていたのだ。マーティンは、ナチスに苦汁を飲まされたソビエトの兵士を蘇らせナチスと戦わせようと思いつき、サブタイトル通り、ナチスゾンビVSソビエトゾンビの大乱闘になってゆく。元気なゾンビたちが運動会のごとく芝生の上で肉弾戦を繰り広げるシーンは、かつてない衝撃だ。負傷したゾンビは衛生兵により、腹に草を詰められ戦場に送り返されるなど、彼らが愛おしくなるような可愛い場面もあるぞ。
腸楽しい!ナチゾンビによる大虐殺
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ナチゾンビ軍団は、マーティンを追い戦車で乗り込んできて、町で大虐殺を繰り広げる。老若男女どころか、赤ちゃんも車椅子の人も、戦車に轢き潰され大砲を撃ち込まれ、ある意味平等に死んでゆく。その度に、血と肉片が飛び散らかるのだが、冒頭で触れた通り、腸をこれでもかというほど見せてくれるのだ! 切れた腸は空を舞い、長い腸は電線に引っ掛けられ、相手を感電死させるのに使われる。腸の使い方にこんなにもバリエーションがあったのかと驚かされる。私の中の“好きな腸の使い方に”ナンバー1に輝く“腸でできたマフラーを首に巻く”を余裕で飛び越えてくるこの感じ……トミー・ウィルコラ監督の腸への並々ならぬ思い入れを感じる。くぅー!いつか監督と腸について語り合いたいものだ。
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テンション高く突き進む本作は、ゴアシーンはあれど、コメディとしても笑えるので、ホラーと気負わずに観てもらいたい。深い愛と究極の多様性理解(!?)によるハッピーエンドは一見の価値あり!
『処刑山 ナチゾンビVSソビエトゾンビ』は、未体験ゾーンの映画たち2020にて公開中。