松岡茉優インタビュー、『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』は、もう一度私たちに勇気と元気と、前に進む力を託してくれる作品

2020.2.20
インタビュー
アニメ/ゲーム

撮影:大塚正明

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2020年2月21日(金)から全国映画館で公開される『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』。「デジモンアドベンチャー」シリーズ、太一とアグモン、ヤマトとガブモンたちの最後の冒険が描かれる本作は、デジモン世代が待ち望んだ作品になっている。そこで本作のキーパーソンである映画オリジナルキャラ、メノア・ベルッチ役を演じた松岡茉優に、「デジモンアドベンチャー」への想い、見どころなどを訊いた。

大学生になった太一とアグモンは変わらず一緒にいた。 (c) 本郷あきよし・東映アニメーション

<あらすじ>
太一とアグモンたちが出会ってから、十年以上が経過した2010年。
世界中の“選ばれし子どもたち”の周囲で、ある事件が起こり始める。
太一たちの前に現れたデジモンを専門に研究する学者・メノア・ベルッチと井村は、
“エオスモン”と呼ばれるデジモンが原因だと語り、助力を求めてくる。
しかし、エオスモンとの戦いの中でアグモンたちの“進化”に異変が起こる。
その様子を見たメノアは、太一たちに選ばれし子どもが大人になった時、
パートナーデジモンはその姿を消してしまう、と告げ――


太一とアグモンたちの物語が一つの区切りを迎えることは『デジモン』ファンとして嬉しい

――まず映画『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』の出演オファーがきたときの感想からお聞かせください。

今回、太一とアグモンたちの物語のひとまずの一区切りと言うか、最後の話になるとお伺いしていたので、そういう映画が作られるということだけでも、とても高揚感がありましたし、嬉しかったです。やっぱり、太一とアグモンの物語はずっと追っていたけれど、卒業式じゃないですけれど、一つの区切りをもらえるのって、ずっと見ていたファンとしては、嬉しくもあって。

――たしかに、ある意味『デジモン』ファンが待ち望んでいた作品ですよね。

アクションシーンも大好きだし、やっぱり太一とアグモン、ヤマトとガブモンの物語を見たいなあっていうものがどこかにずっとあって。そんな中で今回の映画ということだったので、オファーいただいたことを置いても、映画が出来ることがすごく嬉しかったです。そしてオファーをいただいて、「どんなキャラクターですか?」ってお聞きしたら、新しく出てくる映画のキャラクターだと。やっぱり私は映像の俳優で、こういうアニメーションには専門職の声優の方がいらっしゃるものなので、『デジモン』のお話が来たのが嬉しいって手放しに喜ぶというよりは、もしやらせていただけるなら覚悟を持って、専門職の方とは違うわけだから、ちゃんと自分のできることを踏まえて挑まなくてはいけないなというのは感じました。

――ご自身もかなり『デジモン』に関しては思い入れがあるというお話は伺っていますが、ちょうど1999年が劇場作品1本目の上映とテレビシリーズが始まった時ですので、まさにデジモン初期世代って感じでしょうか?

幼稚園の頃に観ていたので多分、ちょっと下の世代だと思います。周りは、小学校のお兄ちゃんがいる子が観ていたりしました。多分、デジモン世代の中では年下組です。

――なるほど。テレビシリーズ1本目が1999年から2000年に放送されていて、特に『デジモン』に惹かれた部分というのはどのような部分なのでしょうか?

やっぱりキャラクターたちが成長したのが、また戻るというのが、ほかの成長系のアニメーションの中でも少ないかな、と思っていて。例えば子どもながらに、パルモン(植物型デジモンで、太刀川ミミのパートナーデジモン)が好きだけど、進化してトゲモンになっちゃった、トゲモンの姿はあまり可愛くないから苦手だけど、でももう一個進化したらリリモンになるからいっかー、とか。

撮影:大塚正明

――確かに進化すると見た目が変わりますからね(笑)。

成長の過程で好みが変わる。でも成長しちゃってその状態のままじゃなくて、また成長期にも戻るキャラクターの流動性っていうのは、子どもながらに惹かれていたのかな、と思います。それとやっぱり、等身大のキャラクターたちがいて、それも個性豊かで。私は幼稚園生だったから、どちらかと言うとタケルやヒカリちゃんに惹かれながらアニメを観ていたんですけど、それぞれきっと好きなキャラクターがいたと思うし、私はミミちゃんも好きだったんですけど、今回の作品では当時好きだったキャラクターが今、いろんなところで活躍している様子も描かれているので、どのキャラクターが好きだった子でも満足してもらえるかなと思います。

医者を目指している丈は医大の5年生。 (c) 本郷あきよし・東映アニメーション

ミミはネット販売ビジネスで世界中を飛び回っている。 (c) 本郷あきよし・東映アニメーション

――『デジモン』ってすごく、「成長」ということに重きを置いているシリーズな印象があって、特に今回で言うと太一たちが大学生になっていて、っていうところでもまだ『デジモン』の世界観を描いてくれると思ってなかったんです。もう二十歳を過ぎていて、大学生で、将来をどうするか考えるとき、というミミちゃんや太一やヤマトっていうのを、作品の中で一緒に触れあって、どう思われましたか?

私が一番かじりついて観ていたのが初期のシリーズなんですけど、あのとき毎日一緒にいて、一緒にいるのが当たり前だったチームが、今はバラバラになっていて。『02』でも『tri.』でもだんだんと離れていくんですけど、もっともっと離れて世界中に散らばっていて。なんだかそれって、私たちの現実の環境も同じことで、子供の頃に毎日一緒にいた友達と会うのは、何カ月に一回だったりとか、もっと遠くに行った友達だと、3年に一回とか。当たり前に一緒にいた人たちがバラバラになっていくっていうのは、自分たちの世界では納得していたことなのに、『デジモン』の皆がそうなっていると、やっぱり寂しい思いがありましたね。連絡しても出ないとか、世界中に散らばっちゃったんだな、とか。特に丈君なんかは、研修医さんになっちゃって、たぶん凄く忙しいから会えないんだろうな、とか。なんかあのとき毎日一緒にいたのが嘘みたいで。実生活の方はもう受け入れていたんですけど、『デジモン』の皆が同じようにバラバラになっちゃっているというのは、寂しいし、切ない思いがありますね。

松岡茉優演じる、映画オリジナルキャラクターのメノア・ベルッチ。 (c) 本郷あきよし・東映アニメーション

――確かに。まさに現実と同じようになっていってしまうんだ、という思いはありますよね。その中で今回は、映画版オリジナルキャラクターであるメノア・ベルッチというキャラクターを演じられているわけですが、どういう風に演じられたのでしょうか?

新しいキャラクターであり、海外で活躍している女の子で、太一たちとまったく違う考え方を持っているというのが今回の物語のキモかな、と思います。太一たちは、あの頃から変わらず、20年ずっと前に進む力がとても強くて、どんなときも諦めないし、どんなときも前に進む人たちなんですけど、メノアは、実はとある理由で前に進めなくなっている人で。どちらに共感できるかと言ったら、大多数の人はメノアなんじゃないかなと私は思うんです。もちろん大好きで、あの頃から引っ張ってくれるヤマトや太一なんですけど、前に進み続けるのってすごくパワーがいるし、簡単なことではないと思うんです。できることなら立ち止まってしまいたいし、過去に栄光があるならそれにずっとすがっていたいって。前に進み続ける太一たちに憧れながらも、メノアの考え方の方に、共感しながらアフレコをしていました。

――先ほど、専門職、声優の方々に交じっての演技になるので自分のできることを、と言われていましたが、すでに『バースデー・ワンダーランド』や『聲の形』などででも声優を経験されていて、今回アフレコの現場に入り改めて何か思うところがありましたでしょうか?

そうですね……アニメーションで声のお仕事をいただくとき、いつも思うことなんですけれど、やっぱり自分が普段やっている映像のお芝居とはまったく違うな、って感じていて。普段映像でやっていることが通用しないところがある。やっぱり専門職の方がいて、私は映像で主にやっている俳優で、演じるということとか、役を理解するということとか、同じことはたくさんあるのに、ぜんぜん同じじゃない仕事だなという印象があります。

――今回のアフレコで難しい部分などはあったりしたのでしょうか?

今回は英語交じりの台詞があるということで、それは初めての経験でしたし、なかなか難しいと言うか、かなり壁がありました。

――なるほど。もう一度物語の話に戻るのですが、今回の物語は「成長」そして大人になるタイミングが描かれています。松岡さんは子役からこの芸能界でお仕事をされているのですが、ご自身と重ね合わせて大人になった瞬間、もしくは、気づかなかったけど振り返れば大人になってしまったんだな、という瞬間が、ご自身のキャリアの中であったりしましたか?

お酒が飲めるようになって、例えばそれで打ち上げの二次会に参加できるようになったりとか、あとは労働基準法で22時までに帰されていたのが、いつの間にか22時を超えてもお仕事できるようになったりとか。大人になったんだぞって言われなくても感じる瞬間ってたくさんあったはずなんですけど、じゃあ私は子どものとき憧れていた大人になれてるのかなって考えたら、それはぜんぜん違っていて。25歳になって、私が小学校の時に思っていた25歳って、家庭を持っていると思っていたので、本当に大人になったんだろうか? という思いはずっとあります。

――確かに子どものころって25歳ってすごく大人だと思っていましたよね。それが今25歳になってみたら、子どもの頃考えていた大人になっていないと。それは誰しもが感じる部分ではありますよね。

ただ、今回の『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』を観て、大人にならざるをえない瞬間というのはあったなって再確認できて。大人になりたくなかった部分だってもちろんあるし、大人になって楽になったり、ラッキーになったりした部分もあるけれど、でもでも、っていう思いがある中で、この映画を観ると、もう一度大人になるような思いがすると言うか。大人になり直す感じがしていて。なので、ちょうどデジモン世代、20、30代の方で、任される仕事が変わってきたりとか、後輩ができて頼られるようになったりとか、それでもやっぱりあのとき思い描いていたのとは違う「そんなじゃないんだよなあ」っていう思いを抱えている人がいたら、この映画を観ることで、もう一度「大人になるってこういうことだったんだな」というのを捉え直してもらえるかなと。もう一回背中を押してもらえるのかなって。

撮影:大塚正明

――もっと格好いい大人になりたかった、みたいなところありますよね、確かに。

そういった葛藤を今回の作品では太一やヤマトも抱えていて。でも変わらないのは、太一とヤマトがあのときからずっと私たちを引っ張ってくれるお兄ちゃんたちであるということ。ちょっと格好良すぎる言い方で言うと、勇者のような存在で。私たちが怖くて目をつぶってしまったり、前に進めなくなっている道をバッサバッサ切り開いてくれるような、そんな存在であり続けてくれているのがすごく嬉しいですね。

――確かにあの頃の、小学生だった太一とかヤマトのイメージが強かったから、大学生になって彼らはどうなってしまうんだろうって。最初に今回の映画のCMを見たときには思いました。そんな彼ら、そして演じられたメノアも含めて、選ばれし子どもたちですが、もし「松岡茉優が選ばれた子どもたちの一人で、パートナーデジモンがいたら」どんな存在だと思いますか?

今回、映画を観て感じた想いというのはいくつもあるんですけど、その中でもアグモンの存在の変化というのを感じて。初期のアグモン、『02』のアグモン、太一たちは結局、自分の目線で見ているから、私たちと一緒に戦ってくれる仲間であり、ときに頼もしく、ときに守る存在であった筈の、と認識していたアグモンが、周りの中で唯一俯瞰で見続けてくれている存在、ずっと変わらない存在になっていると思います。

撮影:大塚正明

――アグモンたち、パートナーデジモンたちは今回でも、天真爛漫というか変わらない存在ですよね。

劇中の太一の台詞で、アグモン向かって「お前たちは変わらないな」という台詞があるんですけど、変わらずに俯瞰で見続けてくれている存在って、私たちの世界で一番近いのは親なのかな? と思ったんですね。なんか、アグモンを親のように感じるときがくるんだなというのは、この映画を観て感じたものの大きな一つで、それもまた自分が大人になったんだなって思わざるをえない部分の一つかなと思うんです。太一やヤマトに共感しつつ、アグモンやガブモンたちパートナーデジモンたちへの想い、私たちが感じる捉え方と言うか、皆を、どのポジションに今、自分たちの中で感じているのかなという部分では、まったく違うところにいたので。時が経ったんだなあというところと、見続けてくれている人というのは本当に貴重なんだなというのが、実生活で思いました。

――確かに、太一たちを変わらずずっと成長を見続けてくれている存在にパートナーデジモンたちがなっていったっていうのは今回の物語の中でも特徴的なところですよね。そしてメノアにも、モルフォモンというパートナーデジモンがいますが、改めてご自身のパートナーデジモンは思い描いていたデジモンだったでしょうか?

今回の映画オリジナルのデジモンなので、声を聴く機会はとても少ないですけれど。子どもの頃、思い描いていたデジモン、たぶん女の子だったら可愛らしいのを絵に描いてみたりとかして、「私こんな(パートナー)デジモンがいいな」って言っていたかなあと思うんです。私が子どもの頃、よく描いていた想像上のデジモンって、ハートを羽根に見立てた天使みたいなキャラクターで、卒園アルバムとかにもハートの片割れが羽根になっているみたいなデジモンを描いていた覚えがあります。それが今回、モルフォモンが蝶をモチーフにしたキャラクターなので、何だか私の思いが通じたという感じがしていますね。女の子が好きな可愛さかなあと思って。

――昔思ったもの、考えたものが結実していくって、いいですね。

もちろん小学生が描いていた絵なので、こんなに素敵なキャラクターとは違ったんですけど。かなり女の子ウケしてくれそうなキャラクターですよね。

撮影:大塚正明

――確かに。モルフォモンは女の子たちに人気が出そうです。では最後に改めて今作の見どころと、「デジモン」ファン、そして松岡さんのファンの方に一言いただければと。

「デジモンアドベンチャー」の最初のシリーズしか観たことが無い人とか、「02」も観ていた人とか、『tri.』まで観ていたよという人はもう絶対に観て欲しいんですけど、例えばそうじゃない、細田守監督だから『ウォーゲーム(『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』)』は観たよとか、弟や妹が好きだったからチラッと観たことあるなぁとか、そんな風に、少しでも『デジモン』に触れたことがある人であれば、この物語に胸を打たれるはずです。やっぱり何と言うか、私たちの今までの『デジモン』への思いが昇華されると言うか、子どもの頃から持っていた思いがすごく素敵な形でまとまっていると思います。

太一とヤマトは変わらず、熱い想いで引っ張ってゆく。 (c) 本郷あきよし・東映アニメーション

――確かに、今回の物語は『デジモン』世代が納得できる内容になっています。

今回の田口監督も、私たちと同じデジモン世代で、『デジモン』への熱い思い、ちょっと好き過ぎるんじゃないかなあっていうぐらい、熱い思いがたくさん組み込まれていて。舞台挨拶で、アグモン役の坂本(千夏)さんが監督に話しかけている様子が、何か時空が歪んでるみたいに私は思えて。きっとあのとき子どもで、坂本さんの声を聴いて、元気や勇気をもらっていた田口監督が、いま大人になって、監督としてデジモンの映画を作る。こんなことってあるんだなぁの連続で。でも実生活でもそうなんじゃないかなと思うんです。時間が経つ、もう取り戻せない時間がある、とか。私にも、あのときにちょっと戻れたらな、と思うこともあります。けれども、もう取り戻せない時間の中で、一緒に大人になってきた太一やヤマトたちが、もう一度私たちに勇気と元気と、前に進む力を託してくれる作品なので、少しでも『デジモン』に触れたことがある人はぜひ劇場で観て、最後の勇気をもらっていただきたいです。そしてもし知ってはいるけど一度も『デジモン』観たこと無いなという方がいらっしゃったとしても、同じように、大人になるということを再確認させてもらえる時間になると思うので、ぜひ劇場で、大きな画面で。アクションシーンも、昔のデジタルと今のデジタルの技術の差を思わされるような複雑なアクションシーンになっているところも見どころです。あと例えば、デジモン世代だけど、お子さんができて、まだお子さんはデジモンを観てないという方でも楽しんでいただけると思います。田口監督も「もし親子で観てくれる人がいたらこれ以上の幸せはない」、とおっしゃっていました。なのでぜひ思い当たる方は、劇場で観て欲しいです。

インタビュー:加東岳史 構成:林信行 撮影:大塚正明

上映情報

『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』

2020年2月21日(金)全国ロードショー
 

(c) 本郷あきよし・東映アニメーション

【配給】
東映
【スタッフ】
原案:本郷あきよし 監督:田口智久 脚本:大和屋 暁 スーパーバイザー:関 弘美 キャラクターデザイン:中鶴勝祥 デジモンキャラクターデザイン:渡辺けんじ アニメーションキャラクターデザイン:立川聖治・熊谷哲矢・西野理恵・関崎高明 音楽:富貴晴美 総作画監督:立川聖治 プロップデザイン:吉田大洋 美術監督:岩瀬栄治 美術設定:大平 司 色彩設計:合田沙織 撮影監督:川田哲矢 編集:坪根健太郎 音響監督:飯田里樹 音響効果:古谷友二 録音:松田 悟 アニメーションプロデューサー:漆山 淳 オープニング曲:和田光司 挿入歌:宮﨑 歩 エンディング曲:AiM アニメーション制作:ゆめ太カンパニー 配給・宣伝:東映 製作:東映アニメーション
【キャスト】
花江夏樹 細谷佳正 三森すずこ 田村睦心 吉田仁美 池田純矢 榎木淳弥 M・A・O
坂本千夏 山口眞弓 重松花鳥 櫻井孝宏 山田きのこ 竹内順子 松本美和 徳光由禾
片山福十郎 ランズベリー・アーサー 朝井彩加 山谷祥生 / 野田順子 高橋直純 遠近孝一 浦和めぐみ
小野大輔 / 松岡茉優
 
(c) 本郷あきよし・東映アニメーション
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