ヴァイオリニスト・三浦文彰インタビュー 「海外の著名なオーケストラと指揮者を迎える東芝グランドコンサートは贅沢なシリーズ」

2020.2.21
インタビュー
クラシック

三浦文彰

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海外の著名オーケストラと指揮者、豪華ソリストらの共演で毎年、話題を集める「東芝グランドコンサート」。39回目となる今年はスウェーデンの名門エーテボリ交響楽団と同楽団の首席指揮者を務める北欧の若き俊英、サントゥ=マティアス・ロウヴァリが登場。ソリストに欧州を拠点に世界中で演奏活動を展開する児玉麻里(ピアノ)と難関の「ハノーファー国際コンクール」で2009年に史上最年少で優勝を果たした三浦文彰(ヴァイオリン)を迎えた2種類のプログラムで、全国の主要ホールを縦断する。

三浦は前半のプログラムA(川崎・兵庫・名古屋・金沢・福岡)に出演し、難曲であるショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番を演奏。旧ソヴィエト時代からの名声を引き継ぐ「チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ(旧モスクワ放送響)」とモスクワにてセッション録音した最新アルバムでも、同曲が高い評価を得ているだけに期待は高まる。

ーー2009年に世界最難関と言われるハノーファー国際コンクールでの史上最年少16歳優勝から、昨年はちょうど10年の節目でしたね。

2019年も海外公演が多い年でした。空の旅が続いて、目が覚めると今、自分がどこにいるのか一瞬わからなくなる程でしたが、それも楽しかった。どこへ行っても結構大丈夫ですね(笑)。

ーー昨年10月にはスウェーデンで、来日前のエーテボリ交響楽団&サントゥ=マティアス・ロウヴァリとも既に共演されたそうですね。これまでに名だたるマエストロが首席指揮者を歴任し、世界各地で高い支持を得ている北欧の名門オーケストラはいかがでしたか?

とてもレベルが高いオーケストラだと感じました。メンバーが演奏を心から楽しんでいるのがよくわかったし、お互いの音をよく聴き合っているのが優れたアンサンブルに現れていると思いました。現地のホールも素晴らしかったです。そしてみんな、オーケストラとして実に23年振りの来日となる今回のツアーを凄く楽しみにしている様子なのが凄く嬉しかった。

ーーマエストロ・ロウヴァリもまだ30代前半という若さで、数多のトップ・オーケストラとの共演を成功させている俊英です。

才能に溢れた指揮者でしたね。左手の動きがとても特徴的でユニークなのですが、彼の考えがオーケストラの隅々まできちんと伝わっているのを感じました。少しも押しつけがましいところがなくて、バランスも抜群。何よりもメンバーみんながマエストロのことが大好きで、彼の音楽を全員でかたちにしていこう、っていう気持ちが溢れていたのが印象的でした。僕自身も、指揮者とオーケストラの両方としっかり繋がることができたと思います。

ーーショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番は、2019年10月にリリースされた最新アルバムにも収録され、非常に高い評価を受けましたね。

自分にとって大切なレパートリーのひとつ。幼い頃に20世紀の巨匠ダヴィド・オイストラフのCDを聴いた時から、いつか自分でも演奏したいとずっと憧れていました。ソ連という当時の国家体制に翻弄されつつ書き上げた作品ですが、初演されたのはスターリンの死後であり、特に第4楽章の長いカデンツァには、抑圧からの解放ともとれるユーモラスな部分もあって奥が深い。チャイコフスキーやメンデルスゾーン、ブラームスなどの有名な協奏曲と比べると難解なイメージですが、僕がウィーンで師事していたパヴェル・ヴェルニコフ先生がオイストラフの弟子だったこともあって、自分の中にDNAのように流れるものを感じるのです。

ーー公演でのシベリウスの交響曲第2番との組み合わせも良いですね。

理想的なプログラムかもしれません。シベリウスは自分もひとりの聴衆として楽しみたいです。改めてこの「東芝グランドコンサート」は毎年、海外の著名なオーケストラと指揮者を迎える、贅沢なシリーズだと思います。今回で39回目となるのも凄い!今回、自分が出演するのはどれも素晴らしい響きで知られる名門ホールばかりなので弾くのをとても楽しみにしています。

ーー2020年も始まったばかりですが、今年はどんな年にしたいですか?

あまり先のことは考えないタイプなのです。目の前の事に全力を尽くして、ひとつひとつクリアしていくのがいい。2年かけて勉強したエルガーを昨年は弾く機会がなかったのでまたやりたいし、今までとりあげたことのないベルクやストラヴィンスキーにもいつか挑戦したい。あとバルトークのヴィオラ・コンチェルトにも興味があります。…結構、やりたいことがいっぱいですね(笑)、ご期待下さい!

取材・文:東端哲也

公演情報

東芝グランドコンサート2020
サントゥ=マティアス・ロウヴァリ指揮  エーテボリ交響楽団
 
2020年
2月28日(金)19:00~ 神奈川・川崎 ミューザ川崎シンフォニーホール<プログラムA>
2月29日(土) 15:00~ 兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール<プログラムA>
3月1日(日)14:00~ 愛知・名古屋 愛知県芸術劇場コンサートホール<プログラムA>
3月2日(月)19:00~ 石川・金沢 石川県立音楽堂コンサートホール<プログラムA>
3月5日(木)19:00~ 福岡・福岡シンフォニーホール<プログラムA>
3月6日(金)19:00~ 広島・上野学園ホール<プログラムB>
3月8日(日)14:00~ 東京・赤坂 サントリーホール<プログラムB>
3月10日(火)19:00~ 宮城・仙台 仙台銀行ホール イズミティ 2<プログラムB>
 
<プログラムA>
ステンハンマル: 交響的序曲「エクセルシオール!(天の高みに昇らん)」
ショスタコーヴィチ: ヴァイオリン協奏曲第1番
シベリウス:交響曲第2番
 
<プログラムB>
R.シュトラウス: 交響詩「ドン・ファン」
ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第2番
ショスタコーヴィチ: 交響曲第5番
 
[出演]
エーテボリ交響楽団(管弦楽)
サントゥ=マティアス・ロウヴァリ(指揮)
三浦文彰(ヴァイオリン)<プログラムA>
児玉麻里(ピアノ)<プログラムB>
 
■東芝グランドコンサート2020 公式サイト:http://www.t-gc.jp/index.html
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