オンラインでの観劇とは?~Zoom演劇『「未開の議場」-オンライン版- 』観劇レポート

レポート
舞台
2020.4.27
『「未開の議場」-オンライン版- 』

『「未開の議場」-オンライン版- 』

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新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、劇場が閉鎖され数多くのカンパニーが公演中止を余儀なくされている昨今。2020年4月17日(金)〜19日(日)にインターネット上での演劇『未開の議場 オンライン』が生配信された。

本作は、脚本・演出の北川大輔(カムヰヤッセン)が発起人となり、過去上演作をリメイクしたもの。稽古から上演まで全ての工程をオンラインで上演するという実験的な試みだ。劇場では机に向かい会議をしている様子が描かれていたが、オンライン会議に設定を変え画面上で会話劇が繰り広げられた。オンラインでの演劇とは、劇場での上演に替わるものになるのか、映像作品の映画やドラマと何が違うのか――。初体験となった“オンライン観劇”の様子をレポートしよう。

『「未開の議場」-オンライン版- 』キャスト

『「未開の議場」-オンライン版- 』キャスト

オンラインだからこそのリアル

出演者はそれぞれ別の場所からテレビ電話アプリ・Zoomを使用して会議を実施。観劇者はYouTubeで会議の映像を視聴する。劇場での公演のように、開場と開演時間が設定されてはいるものの、当然座席があるわけではないので入退場は自由。開場時間に視聴を始めると、すでに一人の登場人物が会議を待っている様子が配信されていた。開演時間になると、「ケータイ電話は自由に使ってください。上演中もハッシュタグをつけてSNSで拡散してくださいね」とのオンラインならではの注意事項がアナウンスされ、気付けば本編が始まっていた。続々と出演者が入室し、幕開きとなった。

観劇者も会議参加者の一人に

観劇している自分自身もZoomを使用した会議に参加しているような没入感があった。現在オンライン会議をしている観劇者にはかなりリアルにうつったのではないだろうか。上演中もYouTubeLiveにコメントができるため、感想を随時書き込みながらの視聴が可能なのも興味深い。観劇中にリアルタイムで他の観劇者の感想を垣間見ることは、劇場公演ではまずないため新鮮な体験だ。観客の拍手や笑い声、すすり泣く声は聞こえないかもしれない。しかし、オンラインならではの小さな共感から生まれる、観劇者同士の新しいコミュニケーションに可能性を感じた。

表情と間合いで魅せる

オンライン会議アプリでの映像の特性上、写っているのはほぼ役者のバストアップショット。見えるものが限られる分、役者が表情、会話の間合いの良さに、作品の良し悪しが左右されると感じた。上演中ずっとオペラグラスで役者の表情だけを見ている感覚が近いかもしれない。ふとした表情や話し方に注目できるのは贅沢とも言える。観劇者が一瞬目を話したり、席を外したりが想定されるため、セリフの間合いとテンポの良さが、観客を引き込む要になるとも感じた。

どこを見るか観劇者に委ねられる演劇ならではの自由さ

同じ映像作品として映画やドラマと比較すると、どこを見るかが観劇者に委ねられているのが豊かな点ではないだろうか。本作は細かなカット割はされず常に各役者を定点カメラで映している状態。観劇者が役者全員を見続けることは現実的に不可能だ。セリフを話していない役者の表情が実はすごく大きな意味合いを持っていたり、全く本編に関係のない芝居をしていたり。これは劇場での観劇体験に近い、とても演劇らしい魅力ではないだろうか。

脚本・演出の北川は「演劇の最小単位は『演じる人がいる、そして、それを見る人がいること』」と事前にコメントを寄せていたが、まさにである。実験的な試みゆえ、観劇者側が集中力を切らさず見続ける難しさ、大きな画面を使用しないと見づらい、などの改善点も感じつつ、興味深い観劇体験となった。今だからこそ生まれる新しい表現方法と、エンターテインメントの発展を今後も楽しみにしたい。


なお、『未開の議場-オンライン版-』は次回、2020年5月1日(金)~5月3日(日)に英語字幕付きで上演が予定されている。上演時間等の詳細は公演情報にて確認してほしい。

取材・文:永瀬夏海

公演情報

「未開の議場」-オンライン版-
 
■脚本・演出 北川大輔(カムヰヤッセン)
■キャスト
安藤理樹(PLAT-formance)
石井舞
内山拓磨
川本ナオト(観劇三昧下北沢店店長)
木村聡太
小林春世(演劇集団キャラメルボックス) 
コロ(COROBUCHICA.)
宍泥美(マチルダアパルトマン)
ハマカワフミエ
原啓太
藤田雄気
宮原奨伍(大人の麦茶) 
山本沙羅(演劇集団キャラメルボックス) 
 
■日時 2020年
5月1日(金)21:00[イギリス夏時間] ※日本時間5月2日(土)5:00
5月2日(土)19:00[日本時間]
5月3日(日)21:00[アメリカ東部夏時間] ※日本時間5月3日(日)10:00
 
■会場 画面の前(YouTube LIveにて生放送)
https://www.youtube.com/channel/UChpmFOPIbRQZqj3oqi9uJAw
 
■料金 無料カンパ制
PayPay、PayPal、pring、note、Ofuse、物販、銀行振込 が可能です。
詳細は公式HPをご覧ください。
 
■スタッフ
プロデューサー/WEB 大石晟雄(劇団晴天)
広報協力 大塚由祈子(アマヤドリ)
デザイン協力 横井希美(https://nyokoi.pb.design/)
 
■協力
アマヤドリ/ECHOES/演劇集団キャラメルボックス/大人の麦茶/オフィスマトバ/カムヰヤッセン/観劇三昧/劇団晴天/COROBUCHICA./ナッポスユナイテッド/PLAT-formance/マチルダアパルトマン/フォセット・コンシェルジュ
 
■助成
オンライン活動支援プログラム #KeepgoingTOGETHER
 
■公式HP https://mikaionline.jimdofree.com
■Twitter @MikaiOnline
■お問い合わせ mikai.onlineme@gmail.com
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