大衆演劇・無観客特別公演を千円で期間限定配信~「この面白さを知ってもらうきっかけに」
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梅田呉服座公式サイトより
大衆演劇の人気劇団「たつみ演劇BOX」による、お芝居・舞踊ショーを含む無観客特別公演の配信が決定した。第1弾の配信期間は4/28(火)15:00~5/1(金)17:00。一度
※記事末尾に販売サイトへのリンク。購入は5/1(金)15:00まで可能。
大衆演劇は観客のメインの年齢層が高いこともあり、公演がWEB公開されることは珍しい。今回の配信企画は、大衆演劇専門劇場の梅田呉服座(大阪市)の山崎理史(やまざき・りひと)若社長と、たつみ演劇BOXの小泉(こいずみ)たつみ座長、両者のアイディアによるものだという。すでに梅田呉服座で第2弾、第3弾の収録も終わり、第2弾は5/7(木)15:00~5/10(日)17:00配信予定、第3弾は5/15(金)15:00~5/18(月)17:00配信予定だ。
4/23(木)午後、山崎若社長に電話取材を行い、異例の配信に踏み切った経緯を伺った。
■梅田呉服座・山崎理史若社長インタビュー「画面越しのお客さんを想像しながら」
――コロナウイルスの影響で、梅田呉服座を含む多くの大衆演劇場が休演を余儀なくされています。今回の配信企画は、その状況を受けて生まれたのでしょうか。
そうですね、4月ひと月間、たつみ演劇BOXさんが梅田呉服座で公演して下さる予定でしたが、コロナの感染拡大防止のために中止になりました。4月の頭ぐらいにコロナの状況がどんどん悪くなってきた頃、楽屋でたつみ座長と雑談する中で、公演の配信みたいなことができたらなぁという話題が出てきた感じですね。
――大衆演劇の世界ではレアな試みです。
コロナの問題が起こる前から配信事業には興味を持っていたのですが、たつみ座長も同じようなことを考えておられて、お互いに意気投合しました。
――以前から構想されていたんですね!
大衆演劇のメインのお客さんは年配の方が多いですけども、大衆演劇独特の時代ものや、大衆演劇の面白さ、楽しさを若い方にもどんどん伝えていきたいなという気持ちがありました。若い世代の間ではYoutube、LINE LIVE、ツイキャス、インスタライブなどが非常に盛んになっていますから、配信事業を通して、そういうお客さんにも大衆演劇を観るきっかけになってもらえたらいいなと。もちろん大衆演劇は生の舞台なので、配信はメインの事業にはならないと思っているんですけども、配信で観たというのをきっかけに劇場に足を運んでもらって、今度は生の舞台を楽しんでもらえればと考えていました。
――実現に至るまでのハードルは高かったと感じますか。
配信をやれば賛否両論あると思うんです。たとえば、劇場に来られるお客さんがちょっと減ってしまうんじゃないかとか、生の舞台を映像を通して見せるのはどうなのかとか、色々な意見があるのは感じるんですけども。やっぱり大衆演劇という業界自体を盛り上げていくのには、一つの手段としては必要なんじゃないかなと僕は考えています。
――今回の1,000円というリーズナブルなお値段が、初めての方へのきっかけとしてすごく良いなと思います。
価格にこだわったわけではないんですけど(笑)、配信なので手軽に観てほしいなと。梅田呉服座は通常の当日券が2,300円で前売り券が2,000円なので、それよりはだいぶ抑えた金額にしたいという思いはあったんですね。たつみ座長とお話する中で、いったん1,000円で行きましょうかと決まりました。大衆演劇を生で観たことのない方も、この価格ならお試しで観てみようかと思ってくれるんじゃないかと。
当初はライブ配信を考えていました。でも、たとえば12時から配信開始で15時までとかにすると、お客さんはそのときにしか観られません。もちろんライブならではの良さはあると思うんですが、今回はいつでもお客さんがゆっくり観られるようなやり方のほうが良いんじゃないかということで、収録したものを期間内自由に観られるという形にさせてもらいました。
――大衆演劇は、演者とお客さんの距離が近いのが特長の一つです。無観客公演という試みが決まったとき、役者さんたちの反応はいかがでしたでしょうか。
皆さん収録をすごく楽しみにされていましたが、収録当日はけっこう緊張されていたと思います。というのは、お客さんがおられないので舞台への反応がないんですよね。
――それが普段と一番違うところですよね。
たとえばお芝居にお笑いを混ぜたりしても、本当にお客さんに笑ってもらえるのかどうかわからないですし。でも、画面越しのお客さんの表情や反応を想像しながら、皆さん演じておられたんじゃないかなと思います。
何より、劇団さんは本当に舞台が好きな方たちで、舞台に出たいという気持ちがやっぱりあると思うんですよ。なのに劇場が閉まってしまい、モヤモヤした気持ちがあったと思います。画面越しではあっても舞台を見せることができる、お客さんに見てもらえるということで皆さんすごく喜ばれて、テンションも上がっておられました。前日からずっと稽古されて、打ち合わせされていました。
収録風景 (提供:旅芝居専門誌「カンゲキ」)
収録風景 (提供:旅芝居専門誌「カンゲキ」)
――コロナ終息後も、より多くの方が大衆演劇を観る手段として、配信事業はぜひ続けていただきたいと思います。
結果的に、舞台の配信ができるようになったことは一つのステップだなと思います。コロナが終息して通常公演が始まっても、ポイント、ポイントでやってみたいですね。梅田呉服座の昼の部は12時半開演、夜の部は18時開演ですが、仕事などでどうしても足を運べないお客さんもいます。配信を通せば、お仕事が終わってから家でゆっくり観ることもできて、大衆演劇をもっと気軽に楽しんでもらえるんじゃないかなと。
あとは、劇団の座長さんの誕生日公演などは大勢のお客さんがいらして、劇場のキャパシティの問題で入りきれない場合があります。遠方にお住まいで、来たいけれど来れなかったお客さんもたくさんおられます。たとえばそういうときだけ特別にライブ配信をしてみるなども、面白いかなと思っています。色んな形を模索していきたいですね。
まずは最初の第1弾を、多くの方に観ていただきたいと思います。
劇場が開いているときも、そうでないときも。“大衆演劇を届けたい”という思いで、人々が動き続けている。
取材・文=お萩
配信情報
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■配信
■今後の配信予定
たつみ演劇BOX × 梅田呉服座『無観客特別公演』
第2弾 5/7(木)15:00~5/10(日)17:00
第3弾 5/15(金)15:00~5/18(月)17:00