演出家の川口典成が主宰するドナルカ・パッカーンが野田秀樹の戯曲『野獣降臨(のけものきたりて)』を上演
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演出家の川口典成が演劇実験場として立ち上げたドナルカ・パッカーンが、2020年7月21日(火)~ 7月26日(日)、東京都豊島区大塚の萬(よろず)劇場にて、野田秀樹作『野獣降臨(のけものきたりて)』を上演する。
本作は、野田が40年も前に感染症をモチーフとして書き、第27回岸田國士戯曲賞を受賞した作品。自らが生きている・生きていた証拠を残すために伝説を創り出そうとするノケモノたちを描いた今作は、現在形で演劇を行い、現在のニッポンを映し出そうと活動しているドナルカ・パッカーンにとって、新型コロナウイルス禍のなかで上演するにふさわしい演劇だと考えた。
新型コロナウイルスの蔓延により、日本においても世界においても、見過ごされてきた差別意識が目に見える形で噴出し始めている今、野田が40年近く前に書いた『野獣降臨』は、古代から宇宙、宇宙から古代へと時空を移動しながら、現代へとそのまま突き出している。
舞台上で、劇中の必然としてフェイスシールドをつけた3人の宇宙飛行士でもあり、伝染病対策班でもある俳優が待っているとのことだ。
演出・川口典成コメント
中学校の図書館でたまたま手に取った野田秀樹氏の初期戯曲『回転人魚』が私の人生を決定づけました。実際に演劇活動を始めると野田秀樹氏の演劇活動とはかなり異なるような道に踏み出していましたが、今回の新型コロナウイルス禍のなかで演劇を作り出すとしたらどんな戯曲がふさわしいかと考えあぐねている時にふと『野獣降臨(のけものきたりて)』が頭に浮かびました。
『野獣降臨』は感染症というモチーフを用いて書かれた物語です。古代ギリシアでは「ミメーシス」=感染的模倣は非常に重要視されており、それは芸術や演劇において根本的な力のひとつと認識されていました (そして同時に恐ろしい力・堕落の力とも認識されていたからプラトンは「詩人追放論 」を唱えたのです)。もちろん実際の「感染症」と芸術における「感染」というのはまったくの別物ですが、新型コロナウイルス蔓延の間隙に、こうした敢えてのゴチャマゼを行い、その似非的・パロディ的創作行為によって現在の状況を考えてみるのも一興ではないでしょうか。
感染予防対策は稽古場においても劇場においても、業界団体(舞台芸術)のガイドラインに基づいて万全に実施いたします。万難を排して劇場にお越し下さいとは言えませんが、それぞれのご判断で劇場に足を運んでいただければと思います。