Capital Rhythm(キャピタリズム)無観客バンドライブ配信「音ノ都」は混沌とした時代に光をもたらす最高のエンタメだった【ライブレポート】
高い志と熱い想いは、どんな逆境にも負けない強さを生む。
つくづくそう感じさせてくれたのは、7月5日に二部制の無観客バンドライブ配信を行ったヴォーカルチーム・Capital Rhythm(キャピタリズム)である。
あじっこ、いかさん、カケリネ、けったろ、つかさし、nero、NORISTRY、rairu、団体を立ち上げたRio。メンバーは、ニコニコ動画やYouTubeをホームに活動し、ズバ抜けた歌唱力と音楽への情熱を併せ持つ9人だ。2019年11月に“Capital Rhythm -音ノ都-”と題し初ライブを開催して以降、“音ノ宮高校”の生徒として声劇や“歌ってみた”動画を投稿したり、“音ノ都”と題したライブを行ったりと、ネットに加えリアルでも精力的に活動してきたCapital Rhythmは、コロナ禍で身動きが取りづらい中でも自分たちなりの表現・発信を模索し続け、4月12日のライブに続いて、この日も無観客で公演を行うことを選択した。無論、観客を入れての通常ライブを開催できないもどかしさ、悔しさもあっただろうが、画面越しということを忘れるほどのエモーショナルなパフォーマンス、魂込めた歌力には、胸を震わせるほどのパワーがあった。
まずは、“Capital Rhythm-音ノ宮高校-”と題した第一部。一流のアーティストを目指す若者が集う伝統校“私立音ノ宮音楽高等学校”、通称“音ノ宮高校”の生徒として動画を投稿してきた9人が、学生服風の衣装でステージに立つのは今回が初めてのことだ。フレッシュな1年生のいかさん、rairu、Rio、やんちゃな2年生のカケリネ、つかさし、NORISTRY、落ち着きある(?)3年生のあじっこ、けったろ、neroと3チームに分かれ、繰り広げるのは「学年対抗ステージバトル」。
Capital Rhythm(キャピタリズム)/ 音ノ宮高校1年
Capital Rhythm(キャピタリズム)/ 音ノ宮高校2年
Capital Rhythm(キャピタリズム)/ 音ノ宮高校3年
ボカロ曲やアイドルソング、ディズニーナンバー、アニメソング、Jポップ、Jロックと多彩なセットリストで、各学年で2人でデュエットしたり、3人一緒に歌ったり、合間にわちゃわちゃ面白かけ合いトークをしたり。全員が劇的に歌ウマなだけでなく、学年それぞれの持ち味も出て、まるで学園祭のような賑やかさで、こんな夢のような宴があるだろうか。
校長先生の提案で「学年シャッフルステージ」も行われたが、学年の枠を越えてのコラボレーションも、次はどんな組み合わせでくるかな!?とワクワクしっぱなし。学園を舞台にしたエンターテインメントは、目にも耳にも楽しすぎた。
第二部“Capital Rhythm-音ノ都-”は、Capital Rhythmとしてのガチライブモード。3時間という長丁場をあっという間に感じてしまったのは、ソロとコラボレーション、カヴァー曲もオリジナル曲も織り交ぜての構成が実にテンポがよく、個のぶつかりも混ざり合いもとんでもなく刺激的だったからだろう。
Capital Rhythm(キャピタリズム)
「チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!」で勢いよく先陣を切ったのは、あじっこ、カケリネ、つかさし、Rioの4人。「画面の向こうでも関係ねぇぞ、お前ら全力で暴れていけるか!」と叫んで、画面の向こうにいるファンをアオる、アオる。“先生に言ってやろ!”のあとにマイクをカメラに向ければ、画面の向こうでそれぞれが歌声を重ねる姿が目に浮かぶ。
5月に声帯手術を受けリハビリをしていたカケリネは、「戻ってきたぜ! 戻ってきた早々、(ソロの)トップバッター!」と笑顔を見せ、「HONEY」を歌うその声は実に伸びやかだ。「ライアーダンス」で艶やかな歌声を響かせながら、「クラップいけるかな?」「コメントでも声届かせてくれるよね?」と呼びかけたのはいかさん。「楽しんでいこうね」と微笑んだRioは、フロアのあちこちを指さしながら「チェリーハント」を歌って視聴者を昂らせて、neroは「丸の内サディスティック」をソウルフルに歌い上げる。けったろの歌に和情緒漂う「茅蜩モラトリアム」にしても然り、それぞれのアプローチで、JロックもJポップもボカロ曲も鮮やかに染め上げていく。
+α/あるふぁきゅん。
「君色々移り」では、ゲストの+α/あるふぁきゅん。の澄んだ高音といかさんの愁いを含んだ歌声が心地よく絡まって、2人で向き合って歌ったり、振りを合わせたり。「いかさん、会いたかったよ!」と迫る+α/あるふぁきゅん。にいかさんが後ずさりする姿も微笑ましく、お互いを指さして歌う“君が好き”にはキュンとしてしまう。
いっぽう、シティポップな「Sing」を、軽やかなステップも交えて歌ったNORISTRY。エールソング「Hello Journey!!」で、背中を押してくれたあじっこ。オリジナルソングが放つのは、個の持つ輝きだ。
「俺たちはカヴァー曲もオリジナル要素を加えてお届けできます!」という言葉から、あじっこ、けったろ、NORISTRYによる「ノーダウト」へ。けったろのラップに、あじっことNORISTRYのハーモニー。本家とはまた違った味わい、めっちゃいい感じ!
あじっこに「顔で歌う素敵なシンガー。バラードは特別すごい」と絶賛されたNORISTRYが歌ったのは、バラードアレンジの「少女レイ」。オリジナル曲「すずらんの日」をていねいに歌い上げたnero。「コールドハンド」で耳心地よく歌声を響かせ合ったneroとrairu。「人間の森」の繊細さもスケールの大きさも表現しきったrairu。時折目線を交わしながら、「ピニャコラーダ」で透明感ある歌声を重ねたカケリネとRio。何度、鳥肌が立ったことか。
ハイトーンやスクリームで圧倒した「unravel」、疾走感と高揚感をはらんだオリジナル曲「神話-mythology-」とたたみかけたつかさし。「無限∞タイムトラベル」を凜として歌ったいかさん。この日に自身の活動10周年を迎えた感慨深さもにじませて、「Break the limit」で高まらせてくれたカケリネ。「迷いなんて捨てちまえ!」と叫んで、「Re:ject」を真っ直ぐに力強く届けたRio。ラップが映えるミクスチャーチューン「アッパーグライダー」で、ますます火をつけてくれたけったろ。オリジナル曲が続いたここでもまた、個の底力を思い知らされることに。
さらには、けったろ、nero、rairuがやさぐれモードで歌った「コールボーイ」。いかさんとつかさしがスリリングなかけ合いで魅せた「劣等上等」。カケリネがピアノを奏で、rairuがメインヴォーカルを、あじっこがサブヴォーカルを担当してグっとこさせた「ホシアイ」。贅沢すぎるコラボの連続だ。
そして、ゲストの+α/あるふぁきゅん。が歌った、「死ぬとき死ねばいい」と、オリジナル曲「アリピプラゾール」。失っても生きる苦悩、愛を模索する赤裸々なもがきの歌と想いは、あまりにも生々しく突き刺さった。
そんな+α/あるふぁきゅん。とNORISTRYによる「shake it!」では、2人が向き合ってジャンプしたり、手をつないだり、フェイク合戦を繰り広げたり。なんて楽しい本編ラストなんだ。
+α/あるふぁきゅん。も加え、それぞれに“今思うこと”を語っていったアンコールでは、音楽、ファンを含めての仲間への愛が止まらない。音楽に真摯に向き合ってきた者同士だから、強く惹かれ合い、共鳴するのだろう。心が暗くなるニュースも多い中、10人の歌と言葉は救いにもなったわけで、Rioの「音楽は人の気持ちを変えることができる」という言葉もだいぶ説得力があった。
Capital Rhythm(キャピタリズム)
最後に10人で気持ちひとつに届けてくれたのは、「Smiling」。肩を組み、笑い合って歌う中で、感極まってしまったNORISTRY やつかさしを支えるメンバー。依存でもなれ合いでもなく、信頼やリスペクトがつなぐ絆は、揺らぐことがない。この先、どんな困難だって乗り越えていくCapital Rhythmは、混沌とした時代に光をもたらしてくれそうだ。
ライブ終了後、公式アカウントより告知があった。12人のシルエットと共に、【8月1日に重大告知あり】の文字。
Capital Rhythmは、まだまだワクワクを止めさせてはくれなさそうだ。