シンセ番長・齋藤久師が送る愛と狂気の大人気コラム・第七十五沼 『ブラボー!そしてゴメン!bonobo!!沼』
「welcome to THE沼!」
沼。
皆さんはこの言葉にどのようなイメージをお持ちだろうか?
私の中の沼といえば、足を取られたら、底なしの泥の深みへゆっくりとゆっくりと引きずり込まれ、抵抗すればするほど強く深くなすすべもなく、息をしたまま意識を抹消されるという恐怖のイメージだ。
一方、ある物事に心奪われ、取り憑かれたようにはまり込み、その世界にどっぷりと溺れることを
「沼」
という言葉で比喩される。
底なしの「収集」が愛と快感というある種の麻痺を伴い増幅する。
これは病か苦行か、あるいは究極の癒しなのか。
毒のスパイスをたっぷり含んだあらゆる世界の「沼」をご紹介しよう。
第七十五沼 『ブラボー!そしてゴメン!bonobo!沼!』
原宿、夜の名所の一つに「bonobo」というクラブがある。週末になると日本人だけで無く、多くの人種が集まるそのクラブはオーディオエンスーの成浩一さんが運営する、世界でも稀に見る実験の場を提供してくれるハコだ。
古い一軒家の扉を開いたらそこは別世界。
毎日毎日、信じられないような豪華なミュージッシャンがお忍びのように演奏している。
けっして広く無いフロアーだが、1階、2階、そして屋根ありのガラス張りの屋上を構えたbonoboは小さな宇宙空間だ。
デコレーションもたまに頭にぶっ刺さるが素晴らしい。
オーナーの成浩一さんは、若い連中から我々のようなオサーンまで、多くの世代から愛される人物であり、皆彼の虜だ。
そんなbonoboでgalcidとsaitoが6月にドイツ「Force inc.」と「ミルプラトー」から発売された作品のリリースパーティーを成さんがオーガナイズしてくれた。
galcidのキ○ガイビートに満員の会場は狂喜乱舞!
メンバーは私がいうまでも無く成さんが完璧なコーディネートしてくれた。
巨匠 小林径、怪物 中原昌也、悪魔王子 森田潤、天才 IZPON、脳のほとんどが音楽でできているTOYOくん。NACKLE。そして最初と最後を締めくくる成さん。
小林径
中原昌也
森田潤
IZPON
TOYOくん
これだけの豪華布陣にかこまれて行うgalcidとsaitoのライブは安心感に満ち溢れ、同時に身の引き締まる思いであった。
豪華DJ陣はプロフェッショナルな仕事を黙々とこなし、現場を温めていく。
そして、まさかの。まさかの。まさかの。得意のやらかしを起こした。私だ。。。。。。。。
saitoのセッションの時にlenaがDJブースの前、そして私がDJブースの中に機材をセッティングしてセッションを行ったのだ。つまり、マスターボリュームを私が自由にコントロールできるという恐ろしい状況が整ったわけだ。
爆音番長の異名を取る齋藤久師に、よくもまあ成さんはDJブースをジャックさせたもんだ。
演奏中、演者というものは「もっと!もっと!」とお客さんを盛り上げようと音圧をあげて行ってしまう傾向にある。
得にターボサウンドの爆音を子供の頃から浴びてきた私には身体で音を聞くという特性があり、過剰に音量をあげる傾向にあるのだ。
だから「ここの音、デカイよね〜」と知人に言われてもピンとこない。
私にとってデカい音とは、耳が痛く無い上に、気絶する程の音圧感で身体を包まれる事を言う。
そして地面から腹に超重低音、つまり低周波のパンチを食い、天井からハイハットのシャワーを浴びる。
bonoboの音は大好きだし、閑静な住宅街にあって、よくもあそこまで大爆音が出せるといつも思うのであるのだが、自分がDJブースに入ると、そのリミッターがブチ切れる。
リハをしている時に成さんが「久師さん、レベルメーターの赤が2つくらいまでが限界ですので」という神の言葉はどこえやら、ライブが始まってそうそう、レベルメーターの赤いLEDは3個、そして4個と上がって行くのであった。
「ああ、気持ちがいい!」と目を瞑りながら演奏していると、右の方から長い手が出てきてミキサーのマスターボリュームを少しずつ小さくしている!成さんの手だw
そりゃあ、そうだよ。ボクは約束をまんまとやぶって赤いLEDがマックスになるまで出しているんだから。
それでも、私はめげずにすぐボリュームをアップするんだよこれが。
その都度、成さんの白く、長い手がマスターボリュームを下げにくる。
そして直後に私があげる。
この繰り返しを10回以上行ったw
結果!
ウーハーを飛ばしてしもた、、、、、。
激しく反省する私に成さんはこう言った。
「一応、WAVESのリミッターは用意してあるんだけど、やっぱシンセのライブはリミッター外さないと面白くないでしょ!夏、またやりましょうよ!ね!」だって!
もう、泣くどころの騒ぎではなかった。
成さんとは、ちょくちょくSNSで音響機器の出物があると情報交換する仲である。つまり、彼がなみなみならぬ音響機器に対しての愛を持っているわけだが、私はそれを壊した。
謝ってゆるされるものでは無いのに、成さんは「また夏にやりましょう!」と、、、
これが、彼が年齢に関係なく多くの人たちから愛される人柄なのである。
私ならニョキっと手を出す前に飛び蹴りを食らわすだろう。ありがとう成さん。
成浩一
ゲストDJ陣は想像以上に場を熱くしてくれた。
それぞれの持ち味を1億パーセント出し切ってくれた。
お客さんも満員。大阪からきてくれた人もいた。
朝まで一頻り盛り上がり、成さんが全ての演者にギャランティーを配ってくれた。(本当は私がやるべき事である)
そこでまた一つ問題が起きた!
中原昌也くんにギャラが到達していないという情報を小耳に挟んだので、中原くんを探したが、朝方帰ってしまったようだ。
心配になって連絡した。
齋藤「ギャラ、受け取ってないんだって?」
中原「ポッケに入ってました」
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さて。
このように愛に溢れるbonoboで夏のイベントはどんなものにしようか。
久々にDJでもやらせていただこうかな。
マスターボリュームにバラ線貼って触れないようにしてもらってさw