Kのシンガーとして、エンターテイナーとしての魅力が詰まった無観客配信ライブ第2弾を振り返る

2020.7.17
レポート
音楽

K

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K style Online Concert Series vol.2  2020.7.13

今年3月にメジャーデビュー15周年を迎えたK。アニバーサリーイヤーということもあり、様々な企画が用意されていたのだが、コロナウイルスの影響を受け、3月に予定していたFCライブや、4月に予定していた『live K 2020~Curiosity~』が延期になっていた。そんな中、6月に初の無観客ライブを開催。「できる限り、ライブは増やしたいと思っている」というKの想いもあり、2回目の無観客配信ライブ『K style Online Concert Series vol.2』が、7月13日(月)、イープラス Streaming+にて行なわれた。

シックでラグジュアリーな雰囲気のあるステージで、この日のサポートを務める真藤敬利(Key)とnotch(Per)が音を重ねているところに、Kが手を振りながら登場。2人の演奏を盛り上げるのだが、なかなか自分の持ち場につかないK。ひとしきり煽った後、胸に手を当てて深呼吸、そして歌う……かと思いきや再び盛り上げる(笑)。モニターの向こうでライブを観ているユーザーをしっかりと温めると、マイクの前につくやいなや、美しいハイトーンボイスを響かせて、そのまま「525600min.~Seasons Of Love~」へ。多幸感が一気に広がっていく。Kは足でリズムを刻みながら、ときにクラップをしつつ、軽やかな演奏にあわせて伸び伸びと歌うと、「もし知ってるフレーズがあったら一緒に歌ってくださいね?」と、続く「Music in My Life」ではブルースハープを吹き鳴らす。ファンキーなグルーヴを受けて、椅子から立ち上がると、ライブさながらにフロアを指差しながら熱唱。パワフルなロングトーンや小気味いいスキャットも飛び出し、のっけからアクセル全開といった感じだ。

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そこから昨年リリースされたアルバム『Curiosity』のブロックへ。「Curious」では、リズムマシーンが刻む規則的なビートとは裏腹に、Kの歌もサポートメンバーの演奏も情熱的で、視聴者も「ううううう~♪」と、コーラスメロディをコメントに書き込んで曲を盛り上げる。続く、ラテンフレーバーのある「Street Of Love」では、Kがトークボックスを使う場面も。アルバム『Curiosity』は、KのルーツミュージックであるR&Bやファンクを現代的な形で構築したものだったが、この日届けられたアレンジは、楽曲が持つクールな手触りはそのままに、より生々しく、濃密なアンサンブルを味わえる仕上がりになっていた。

曲を終えると、すぐさまスマートフォンを手に取るK。「(無観客)配信ライブのおもしろいところでもあり、恐ろしいところでもあるんですが、曲が終わった後のお客さんの反応がわからないっていうね(笑)」と、サポートメンバーと和やかに会話をしながらコメントを眺めていた。その中で、Kがトークボックスを演奏するときに口にくわえていたチューブが「家の洗濯機のホース」とコメントされていたことに3人は大笑い。Kも「これ、東急ハンズの水道ホースを売っているところで買ってきたんですよ」と裏話をこぼしていて、演奏はもちろんのこと、トークでも息が合いまくりな3人のやりとりを見ているだけで、こちらも楽しくなってくる。

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中盤ではバラードを2曲続けて披露。「梅雨シーズン、まだ抜けていないですけど」という前置きから始まったのは、歌詞に雨の情景が描かれている「抱きしめたい」。キーボードを柔らかく奏でながら歌い上げるKの歌声と、真藤の鍵盤ハーモニカが優しく寄り添いあうと、たちまちセンチメンタルな雰囲気に。続けて届けられたのは、「Only Human」。彼の代表曲のひとつでもあるが、〈悲しみの向こう岸に 微笑みがあるというよ〉という一節や、3人で織りなす優しいハーモニーは、コロナウイルスの影響で混乱しているいまの世界を生きる私たちに、そっと寄り添うように、励ますようにも響き、感動的な一幕となった。

冒頭で「こういうのある?」と、notchから借りたシェイカーを振りながら歌い上げた「夏の夕暮れに詠うバラッド」から、ライブは再び熱を帯びていく。真藤がサンプラーを叩き、Kのピアノとnotchのパーカションが心地よく跳ねた「7days」では、「よかったら一緒に歌ってください!」というKの呼びかけに、チャットのタイムラインには〈手を繋ごうもっと強く〉という歌詞が踊る。さらに、力強く駆け抜けて行く「Life」でもコーラスを煽ったりと、モニター越しでもしっかりとオーディエンスとコミュニケーションを取るエンターテイナーっぷりはなんとも彼らしいところだ。そして、なだれ込む形で始まった「Y.E.S.」で、熱はピークに。Kのパワフルなピアノソロも飛び出し、曲を終えると「早くお客さん入れてライブやりたいねー!」と声をあげていた。

この日のラストナンバーに選ばれたのは、『Curiosity』に収録されている「All of me」だった。曲に入る前に「どうしてもこの曲を本編の最後にしたかった」「この曲を書いていたときから、このメンバーでやってみたかった」と話していたK。ジャズであり、ソウルであり、ゴスペルの雰囲気もあるスロウナンバーを、身体を揺らしながら歌い、ピアノを奏でているKはなんとも楽しそう。サポートメンバーに視線を送り、キメのタイミングで笑顔と笑い声をこぼしながら極上の演奏を繰り広げ、本編は終了となった。

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名演のオンパレードを届けてくれたKだったが、この日はそれだけでなく、7月22日にシングル「Satisfaction」を配信リリースするという嬉しいニュースも届けてくれた。さらに、8月には第2弾、9月には第3弾と、3ヶ月連続で新曲を配信していくとのこと。どんな曲が届けられるのかとにかく楽しみなのだが、Kとしては「こういう世の中だけどできることをやっていきたいと思って、1月から曲をたくさん書いていた」そうだ。本人も話していたように、正直な話、いまは明日が、来週が、2週間後がどうなるのか、まったく見当のつかない状況でもある。しかし、それでも「できることをどんどんやりたい」と、Kはモニターの向こうへ力強く語りかける。

「いまはみなさんすごく大変な思いをしていると思いますけど、時間が経てば、“あのときはこんなことがあったんだよ”って思い出話になったり、今回のことがあったことによって、ある意味距離は離れているけど、(コメントを見ていたスマホを手に取りながら)こんな身近な距離でコミュニケーションを取ったりしてるわけですよ、ライブをしながらね。だから、決してすべてがネガティブなわけじゃなくて、探せばポジティブがめちゃめちゃ落ちている感じが、僕はしています」

そして、「またライブを開催できるときが、こういった時間を笑い話にできる日が来てほしいという思いを込めて」と、アンコールで「Note」を披露。演奏する前に、「1ページ、1ページ、毎日更新されていく感じが、いますごくある」と話していたK。喜びも悲しみも、自分という人生のノートに書き込み、まっすぐに生きていたい──そんな歌でありメッセージは、いまを生きる活力を与えてくれる優しさに満ちていて、心温まるエンディングとなった。


取材・文=山口哲生

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