京都・南座にて京の年中行事『吉例顔見世興行』今年も開催決定ーー「晴れやかな劇場で師走のひと時を味わってほしい」
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「吉例顔見世興行」製作発表
京都・冬の風物詩としても親しまれている南座での『吉例顔見世興行』が今年も開催されることが9月29日、京都市内で発表された。新型コロナウィルス感染拡大予防の観点から、開催期間は12月5日(土)~19日(土)とし(11日(金)休演)、1日3部制、各部とも上演時間は約2時間前後と例年とは異なる構成でおくる。
新型コロナウィルス感染拡大のため、3月から松竹株式会社が運営する全国の劇場が休館となり、3月から7月までは上演不可という未曽有の状況に追い込まれた。そして規制が緩和されたことから、感染症の専門家らの指導や政府、自治体等のガイドラインを基に徹底した感染予防対策を打ち立て、8月に東京・歌舞伎座で公演再開を果たした。
松竹株式会社代表取締役副社長・安孫子 正氏
『京の年中行事 當る丑歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎』製作発表会見に出席した松竹株式会社代表取締役副社長・安孫子 正氏は、公演再開にあたっての覚悟を振り返った。「8月の歌舞伎座では、お客様、出演者、スタッフ、従業員など関わる人のすべての安全を確保することを大前提に、最もリスクを少なくするにはと考えて4部制にしました。出演者、裏方のスタッフも各部入れ替えで、第1部が終わってから第2部の俳優らが劇場に入るなどし、その間に楽屋の消毒や換気をはかるなど万全の体制を取りました。何が起こるか分からないため、いろいろなリスクを一つずつ排除して、短い演目にして出演者も少なくし、また、極力複雑な道具を使わないなど考えました。また、舞台関係者、劇場関係者もPCR検査をし、毎日、楽屋入りと同時に検温。さらに、関係者の劇場・楽屋間の出入りも禁止するなど、全ての面にあたって悔いの残らないように安全対策をはかりました」。
そんななか、1名の関係者から発熱の報告があり1日だけ第3部を休演した。その日は提携先の医療機関でPCR検査をおこない、陰性であったため翌日から再び公演を続けることに。全96回公演のうち1回を休演したものの、無事に千穐楽を迎えた。
こういった経験を積み重ねた上で、京都・南座での『吉例顔見世興行』を行うことを決意。三密を避け、換気の徹底をはかることから、1部約2時間の公演で1日3部制に。俳優は各部のみの出演で、従来、1日約250人のスタッフや関係者が出入りしていたが、今回は1日約150人、各部約50人体制で展開する。
南座支配人・藤田 孝氏
観客も各部総入れ替えで、販売する座席数は各部466人と南座の収容人数の50%以下に設定した。前後左右を空けた配席で、最前列や花道脇の座席は販売しない。公演期間も15日間とし、休演日を1日設ける。また、マスク着用必須や入場時の手指の消毒、劇場内での飲食は原則禁止といった業界団体、自治体のガイドラインに沿った感染予防対策一覧をチラシの裏などに印刷して配布し、劇場内にも分かりやすいガイドを掲示する。歌舞伎の醍醐味でもある大向うや掛け声も禁止と少々寂しいが、8月の歌舞伎座ではその分、観客が大きな拍手で応えていたという。
演目は各部とも舞踊と芝居を上演。片岡仁左衛門、片岡秀太郎、中村鴈治郎ら関西ゆかりの俳優陣に、松本幸四郎を筆頭に東京を代表する若い世代、そして今後の活躍が期待されるさらに若い俳優たちが集う。各部とも序幕の舞踊はおめでたい演目で松羽目を背後に若い俳優たちが舞い、約15分の休憩をはさんだのちに、名優たちの重厚な芝居が楽しめる演目を上演。たとえば、第2部で上演する『一谷嫩軍記 熊谷陣屋』では義経四天王を二人体制とするなど、舞台上での密を避けるための演出も随所に施されるという。
「こういう状況の中で『吉例顔見世興行』を行います。上演期間は2週間と短いですが、つつがなく千穐楽まで続けられるよう感染予防対策を徹底し、お客様にもご協力をお願いして、心して頑張っていきたいと思います」と安孫子副社長、「大勢のお客様が歌舞伎をお待ちいただいているという実感がある」と、歌舞伎座での公演を経ての手ごたえも語った。
「吉例顔見世興行」製作発表
同じく製作発表会見に出席した南座支配人の藤田 孝氏は、客席内及びロビーで飲食ができないことなど感染予防対策を説明するなかで、「今年は第1部の終演時間を12時30分頃と想定していて、第2部の開演時間は14時30分です。また、第3部は18時40分に開演し、20時前後の終演を予定しているので、お昼ご飯や夜ご飯は劇場の周辺のお店で楽しんでいただければと思います」と今年ならではの京都での過ごし方を提案した。
なお、恒例行事でもある「まねき書き」や「まねき上げ」も例年通り実施予定となっている。
「伝統ある京都の『吉例顔見世興行』です。今年は料金も比較的お手ごろになっていますので、『吉例顔見世興行』は初めてという方もぜひお越しください。ご遠方からの方は「Go To トラベルキャンペーン」なども活用されると、大変お得に足を運んでいただけるのではと思います。ぜひ、今年限定の『吉例顔見世興行』を楽しんでもらいたいと思います。序幕はこれからの歌舞伎界を担う若手花形俳優によるおめでたい舞踊を。2本目は俳優の皆様が得意とする演目となっています。例年とは異なりますが、多くの皆様に来ていただき、晴れやかな劇場で師走のひと時を味わってほしいと思います」と藤田支配人は、感染予防対策を徹底してお迎えすると語った。
取材・撮影・文=Iwamoto.K