横内謙介に聞く! 扉座40周年記念★with コロナ緊急前倒し企画『10knocks~その扉を叩き続けろ~』を上演中

2020.12.9
インタビュー
舞台

横内謙介(いま世界で話題のモノリスが胸上に出現)

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劇団扉座が結成40周年記念のプレ公演として、これまでの代表作10本を日替わり上演するドラマチック・リーディングに取り組んでいる(2020年12月13日迄)。題して「扉座40周年記念★with コロナ緊急前倒し企画『10knocks~その扉を叩き続けろ~』​」。新型コロナウイルスの感染症防止のため新作上演を断念、苦肉の策での企画というが、そこは40周年を迎えた劇団。日替わりで多彩なゲストを呼び、時には台本を離して動きまわり、舞台美術には凝って……とリーディングのイメージを吹き飛ばす意欲的な公演だ。コロナ禍に向き合い、さらにパワーアップしている扉座主宰の横内謙介に話を聞いた。

『10knocks~その扉を叩き続けろ~』より『ジプシー』リーディング

『10knocks~その扉を叩き続けろ~』より『曲がり角の悲劇』リーディング


--ドラマチック・リーディングの企画はどういう経緯で生まれたのでしょうか?

コロナの状況を見ていると、肌感覚で稽古場と楽屋が特に注意が必要だなと思って、そこの人を減らして、でも劇団総がかりでやれることは何かと考えたら、日替わりでリーディングだなと。リーディングについてだれもが共通する意見は、上手い人がやれば面白い、ということ。勢いとパワーで見せるものじゃない。うちは40年やってきて、それなりにベテランもいるし、じゃあ改めてやってみるかとね。ただし、白いシャツに黒いパンツで椅子に座ってやってもうちのお客さまが面白がってくれるとは思わないので、一部動いて、かつての名場面は再現するなど立体落語みたいな感覚で作りました。

--劇団を離れたメンバーを含め、初演のキャストなど豪華なメンバーが集まりましたね。舞台美術も凝っています。

リーディングはかなりの部分を想像力で補ってもらうのだけど、視覚的なことも含め、助けになるものがあったほうが面白いだろうなと、初演キャストに頼んだり、昔の劇団員の菊池(均也)くんを呼び戻してみたり。そうしたら、みんな劇団のことを心配していてくれて、無理をしてでも力を貸してくれて、本当にありがたいよ。

『愚者には見えないラ・マンチャの王様の裸』1991年

--10作品はどういう基準で選んだのですか?

最近上演したものはやめよう。また、この5、6年で人目に触れたのは外そう、本来は幻冬舎プレゼンツを上演する予定だったので幻冬舎プレゼンツもやめよう、原作物はなしにしようと考えていくと、わりと自然に決まっていった。ラストの『歓喜の歌』だけは、立川志の輔さんの落語が原作だけど、大みそかの物語で「第九」で終わるからね。

『10knocks~その扉を叩き続けろ~』より『フォーティンブラス』リーディング

--劇団としてリーディングの手ごたえは?

ほとんどの作品が20年以上前のもので、劇団メンバーでさえ知らないヤツが多いのよ。うわさに聞いたとか、本で読んだ程度で。こんなことやってたんだということを、一緒に観たり感じたりできているのが劇団にとってはとても有意義。それに、今はこういう隙間みたいな企画じゃないと、劇団員全員集まるのが難しい。先日、Zoom会議で初めて全員揃ったぐらい。今回も六角精児はスケジュールがなかったけれど、まわりが協力して送り出してくれた。こんな時だからできた企画ともいえるね。

『夜曲』1986年 ザ・スズナリ

ーー初日の『夜曲』は初演チームが出演して話題になりました。『ジプシー』も久しぶりですね。

『ジプシー』は6演ぐらいやって旅公演もして、うちのイメージを決めたような作品。当時は3世代の役を20代のメンバーでやっていたなと懐かしくもありますね。今は、世代の幅が広がり、あともう少ししたら役にリアルな世代でコンプリートして上演できる。財産にすべき芝居だなと思います。『愚者には見えないラ・マンチャの王様の裸』は代表作と言われるけど、しばらくやっていなくて、「噂には聞くけど観たことない」という人が多い。今回はほぼ同じメンバーが揃った。声優・ナレーターで有名な林田尚親さんも大事な役で出ていたのですが、今回も面白がって参加してくれる。こうやって並べてみると、作品として立ち上げてレパートリーにしても、1年間ぐらいはできそうです。

『ジプシー』1989年 本多劇場

--これまで戯曲は何本書いているのですか?

数えてみたら92本。100本は再来年ぐらいに達成できそう。

--40周年ということで、支援(40ページのパンフレット付き 税込5000円)も呼びかけていますね?

本当に、今は大変なんですよ! コロナ対策も3手先ぐらい用意しておかないと、上演できないですからね。そんな中でもありがたいことに、「劇場には観にけないけど、何かできないですか」とおっしゃってくれる方が多くて、支援をお願いしました。今回、当時と同じ音楽なども使っているので著作権の関係で、配信もできないので。

『10knocks~その扉を叩き続けろ~』より横内謙介の前説

--劇団はどうなっていくと思いますか?

先日、「劇団活動は“労働”にあたる」という判決がでたでしょう(※2020年10月19日、東京高裁)。「ふざけんな!」とマジ怒ったんですよ。もちろん世間から異論が出て来るのは想定していたけど、同じ劇団関係者からあまりに声があがらなくて、そのことにも危機感を覚えた。悲しくもあった。僕たちの活動を顧みて、どうあるべきか考えるときだと思った。ニュースの見出しだけみると“劇団”でひとくくりにされる。判決だけが、一人歩きして活動を圧迫してきたらどうするのか? 俺にとっては劇団は活動なんです。世の中のためにどのくらい役にたっているかわからないけれど、面白いことをやって人に喜んでもらう。それを繰り返し誰かしらの人生に何かしらを残して、それがいい影響ならなおよくて。そういう活動です。でも、それはお金だけ考えたらできない。儲からないとわかって辞めるか、それでも、やり続けたいと思うか。文化活動と経済活動は同じ理屈でいかないよなと思うんだよね。

『新羅生門』1992年 本多劇場

--この先どうしていこうと思っていますか? 劇団を続けるかどうか考えていた時期もあったそうですが。

劇団についてはどうにもならない負債を出さない限り、そして体が持つ限りやると決めた。それが2、3年前なので、今のこういう状況で辞めるというイメージはわかないね。劇団の形を残そうとは思わないけれど、ぎりまでやろうと決めたから!

『10knocks~その扉を叩き続けろ~』より『ジプシー』リーディング

--一劇作家・演出家としては?

劇団と両方やっていくよ。今の時代、働き盛りの年齢もあがっているよね。昔は会社を辞めている歳で、ここからバリバリやろうなんて、狂気の沙汰じゃないけれど、なかばやけくそと言ったらやけくそだけど、やりますよ!

--最後に『10knocks~その扉を叩き続けろ~』についてメッセージをお願いします。

この企画は1回きりのことで、評判がよくてもう一回やれと言われても不可能。いま、このときだからできる奇跡のような、僕たちにとっても一期一会の公演。配信ができないのが残念ではあるけれど、どれか1作品でも、ご支援でも、劇団をサポートしていただければと思います。

取材・文=田窪桜子

公演情報

劇団扉座第68回公演 扉座40周年記念★with コロナ緊急前倒し企画
『10knocks~その扉を叩き続けろ~』
 
■作:演出:横内謙介
■日程:2020年12月5日(土)~12月13日(日)
■会場:紀伊國屋ホール
■料金(税込):一般前売 5,000円、当日券 5,500円、学生券 3,000円(要学生証・取扱扉座のみ)
※40周年記念特典して、パンフレット(40P)をプレゼント。
取り扱い:劇団扉座 03-3221-0530(平日12:00~17:00/土・日・祝休/ 公演中平日12:00~15:00)
扉座オンライン http://www.tobiraza.co.jp
紀伊國屋ホール キノカウンター 03-3354-0141

 
■上演演目
12月5日(土)18:00 『夜曲 -放火魔ツトムの優しい夜-』 (客演)加納幸和
12月6日(日)14:00 『フォーティンブラス』(客演)吉田美佳子
12月7日(月)19:00 『曲がり角の悲劇』(客演)朴 璐美、七味まゆ味、わかばやしめぐみ ※演出:犬飼淳治
12月8日(火)19:00 『ジプシー -千の輪の切り株の上の物語-』(客演)林田尚親、菊池均也
12月9日(水)19:00 『きらら浮世伝』(客演)キムラ緑子
12月10日(木)19:00 『いとしの儚 -100DaysLove-』(客演)三木眞一郎
12月11日(金)19:00 『新羅生門』※演出:鈴木里沙
12月12日(土)14:00 『愚者には見えないラ・マンチャの王様の裸』(客演)林田尚親、菊池均也、七味まゆ味
12月12日(土)18:00 『アゲイン -怪人二十面相の優しい夜-』
12月13日(日)14:00 『歓喜の歌』 ※原作:立川志の輔
※出演者詳細は公式サイト参照のこと。

 
■公式サイト:https://tobiraza.co.jp/
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