スーパー歌舞伎『もののけ姫』ついに開幕 市川團子(アシタカ役)・中村壱太郎(サン役)ほか出演 名台詞や宙乗りなど見どころ満載【SPICEレポート】
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スーパー歌舞伎『もののけ姫』サン=中村壱太郎、アシタカ=市川團子
スーパー歌舞伎の誕生から40年という節目の年に、新たな歴史がまた一つ刻まれる。2026年7月3日(金)に、スーパー歌舞伎『もののけ姫』が新橋演舞場にて待望の幕を開けた。主役のアシタカに市川團子、サンに中村壱太郎という若き才能を迎え、満を持して製作された本作。スタジオジブリ・宮﨑駿監督による不朽の名作を、歌舞伎の様式美と現代の演出技術でどのように昇華させたのか。7月2日(木)に行われた公開舞台稽古の模様を、囲み取材のコメントと舞台写真とともにレポートする。
スーパー歌舞伎『もののけ姫』左よりエボシ御前=中村時蔵、アシタカ=市川團子、サン=中村壱太郎 (C)松竹
アシタカとシシ神の二役を演じる市川團子は、スーパー歌舞伎の創始者である二世市川猿翁の孫として、その系譜を継ぐ次代の歌舞伎界の筆頭として熱い視線が注がれる若手俳優だ。最初の挨拶では、「お稽古を通して、祖父が作ったスーパー歌舞伎という大きな一つのものに向かって、稽古場で意見を出し合いながら進んでいる印象を受けました。みんなが熱量を持ってこの作品に取り組んでおります」と報道陣に伝えた。
伝統の様式美と現代の演出技術が融合。誰も見たことのない『もののけ姫』の世界へ
スーパー歌舞伎『もののけ姫』 アシタカは村を襲ったタタリ神に勇ましく立ち向かい、弓矢を放つ
切ないながらも物語の始まりとなる旅立ちの一曲「アシタカせっ記」は、日本音楽集団と尺八の音色で歌舞伎らしくアレンジされ、違和感なく成立していた。舞台化にあたりヤックルはどうするのだろう、と思っていたら、原作そのままの姿でアシタカを乗せて花道を歩いて行ったことに驚く。
「我が名はアシタカ」と名乗る人気のセリフはもちろん、スーパー歌舞伎でも耳にできる。森の奥深くの場面では、團子がアシタカからシシ神へ、再びアシタカへ見事に切り替わる仕掛けが秀逸で、客席からも微かなどよめきが漏れていた。
サン役の中村壱太郎は、確かな表現力で若手歌舞伎俳優を牽引し、高い注目を集める存在。本作では、獣と少女という二面性を持つサンの複雑な役柄に挑戦した。「この扮装をするとなかなか、笑顔で! と言われても笑顔になれないんですね。サンというのは、芝居が始まってだんだんと表情がついていく役だなと思っております」と、これまで役作りに励んできたことを表した。
荒々しさの中に、どこか優しさや可憐さを感じられる本作のサン。歌舞伎の女方の役には珍しいイメージを斬新に体現しつつ、魅力たっぷりのジブリヒロインとなっていた。
スーパー歌舞伎『もののけ姫』 原作そのままに再現された古き神の仮面をつけ、すっぽんから登場するサン
スーパー歌舞伎『もののけ姫』 劇中でもサンとして寡黙さを貫く壱太郎だが、「唯一、笑顔になれるのはヤックルを見たときですね」と話す
エボシ御前役の中村時蔵は、その高い表現力と安定した技術で、現代の歌舞伎界を牽引する実力派。作品に深みと重厚感をもたらす重要な役割を担う時蔵は、「この作品に関われて非常に光栄に思っております。稽古が進むにつれ、改めてこの作品のメッセージ性や、偉大さをとても感じております」と述べた。
堂々とした立ち姿にオーラがあり、美しさと気高さを声色でも表現する時蔵のエボシ御前。ストーリーの重要人物として立ち回りつつ、22歳で主役を勤める團子をしっかりと支えていた。
スーパー歌舞伎『もののけ姫』 山犬たちから憎まれるエボシ御前だが、女や病人たちを手厚く保護し、仲間からは慕われる
やかましいほど賑やかな男たち、「元気があり過ぎる」と言われるほど血気盛んな女たち、ついつい主要キャストに注目しがちな中で、脇を固める俳優陣の勢いも間違いなく芝居を面白くしている要素の一つだ。場面の緩急も心地よく、この新作が単にジブリ作品を歌舞伎化しただけでなく、舞台芸術として高いクオリティに仕上がっていることにも圧倒された。
1幕終盤でサンがタタラ場を襲撃する場面は、屈指の見せ場だ。まさかと思うようなサンの登場方法にはぜひご注目いただきたい。舞台空間を大きく使って中央にそびえる大階段も、見る者の興奮を高める。
スーパー歌舞伎『もののけ姫』 タタラ踏みの装置も、大がかりなセット造形が魅力
スーパー歌舞伎『もののけ姫』 「女方同士で一騎打ちをするのはなかなか無い」という見応えのある立廻り。止めに入るアシタカにも注目
2幕では人間ドラマがより色濃くなり、人間の強欲さや愚かさに、救いのないような気持ちにもなる。一方で、猩々(しょうじょう)や猪など森のキャラクターも新たに登場。物語が大きく展開し、ますます『もののけ姫』の世界観に没入させていく。
「黙れ小僧」「お前にサンが救えるか」の名台詞で有名なアシタカとモロの君の場面は、観客が息を詰めてその言葉を聞き逃すまいと静まり返った。そして、サンがアシタカと歩み寄りつつも、モロの君との対話の中で「人間は嫌い」と話す場面など、舞台表現だからこそ光る心の揺れ動きも随所で丁寧に描かれている。
全員が同じ熱量で挑んだ「工夫の歴史」。古典とはまったく違う新作歌舞伎の稽古場裏話
スーパー歌舞伎『もののけ姫』 モロの君は市川笑三郎が好演
歌舞伎の新作を作り上げていく中では、どのような苦労を乗り越えたのだろうか。稽古場で印象的だったエピソードを聞かれた團子は、「今回の演出を務める横内さんは、稽古場にいる私たちにも積極的に意見を求めてくださいました。そんなとき、必ず誰か一人だけではなく、数名から『これはどうでしょう』と提案が出て。歌舞伎は工夫の歴史だと思っていますが、同じ熱量で全員がそれぞれの工夫を持ち、質問が出ると一気にいろんな意見が飛び交ったことが、すごく印象に残りました」と振り返った。
それを受けて壱太郎も、「古典歌舞伎とはまったく違う作り方で、アシタカ、エボシ御前、サンといった役を、歌舞伎俳優が演じた前例はないんですよね。みんなが意見を出し合ってくれたことで、これまで気づかなかった自分の発見や、役の深掘りができました。とてもいい現場だったと思います」と共感した。
スーパー歌舞伎『もののけ姫』 市川中車が演じる乙事主と猪たち
2幕の後半から終盤にかけては、タタリ神と化す乙事主の暴走、モロの君の立廻り、シシ神の首を打ちディダラボッチが出現するクライマックスなど、見どころが尽きない。宙乗りなどダイナミックな演出も取り入れられる。
「今回はシシ神で宙乗りをいたします。どのような場面で、どのような演出でされるのか、ご期待いただけたらと思っております」と團子。壮大なスペクタクルが魅力の、スーパー歌舞伎らしい名場面は必見だ。
スーパー歌舞伎『もののけ姫』 乙事主の命を吸い取るシシ神。コダマは子役たちが音まで忠実に再現する
終幕では穏やかな風景の中、「ここを良い村にしよう」「ともに生きよう」と登場人物たちはそれぞれの道へ進んでゆく。人間と自然の衝突と共生の願いは、現代社会においても考えさせられるだろう。
時蔵は「『もののけ姫』は非常に強い社会的メッセージを持つ作品で、歌舞伎でもそこは崩さずに取り入れています。共生の難しさが争いを生み、お互いに平和を願っているだけでも衝突してしまう。アニメーションが歌舞伎になることによって、感じられることも多分変わるのかなと思いますので、皆様がどう感じたのかをぜひ知りたいです」と、作品の受け取り方を観客に委ねた。
團子は最後に観客へのメッセージとして、「スーパー歌舞伎の大きな魅力の一つとして、話し言葉がほぼ現代語ということがございます。これを機に初めて歌舞伎をご覧になる方にも理解しやすく、最初から最後までしっかりと物語を理解していただけるはずです。我々一同、初日から千秋楽まで、少しでも毎日お客様に感動を届けられるように進んでまいります」と締めくくった。
スーパー歌舞伎『もののけ姫』は8月23日(日)まで、新橋演舞場にて上演中。
取材・文・撮影=さつま瑠璃 囲み取材時のお写真のみ(C)松竹
公演情報
スーパー歌舞伎『もののけ姫』
原作/宮﨑 駿
オリジナル音楽/久石 譲
脚本/丹羽圭子 戸部和久
演出/横内謙介
協力/スタジオジブリ
アシタカ/シシ神:市川團子
サン:中村壱太郎
エボシ御前:中村時蔵
ジコ坊:市川猿弥
モロの君:市川笑三郎
甲六:市川青虎
猩々:市川寿猿
ヒイさま/トキ:市川笑也
ゴンザ:市川門之助
乙事主:市川中車
会場:東京・新橋演舞場
1等席 17,000円 / 2等A席 10,000円 / 2等 B席 6,500円
3階 A席 6,500円 / 3階 B席 3,000円 / 桟敷席 18,000円
※未就学児童は満4歳よりお一人様につき1枚切符が必要です
製作:松竹株式会社
7月公演: 2026年7月26日(日)16:00開演 ※予定枚数終了※
8月公演: 2026年8月15日(土)16:00開演
【手数料0円】詳細・お申込みはこちらから
https://eplus.jp/enbujo260708_kk/
関東の公演情報 @eplusplm_kanto
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