渡辺えりと八嶋智人の喜劇初顔合わせでおくる『喜劇 お染与太郎珍道中』の魅力を主演二人が語るーーパロディそのものが挑戦
八嶋智人、渡辺えり
渡辺えり&八嶋智人が喜劇初顔合わせとなる公演『喜劇 お染与太郎珍道中』が2月1日~17日まで東京・新橋演舞場、2月21日~27日まで京都・南座で上演される。本作は、昭和54年(1979)3月明治座にて『与太郎めおと旅』として初演された演目で、作家の小野田勇が稀代の喜劇俳優・三木のり平とタッグを組み、落語の噺を中心に、歌舞伎のエピソードも加えたドタバタ珍道中。
主演は、新橋演舞場や南座での『有頂天シリーズ』や、『三婆』などで主演している渡辺えりと、2019年には歌舞伎座にも初出演した八嶋智人。さらに、お染、与太郎が「ワケあり珍道中」で出会う人々には、太川陽介、宇梶剛士、石井愃一、深沢敦、春海四方、石橋直也、三津谷亮、有薗芳記、一色采子、広岡由里子、あめくみちこ、そして西岡德馬といったキャストが登場し、演出は大劇場初進出となる寺十吾が担当する。そんな公演の主演二人を迎えたリモート取材会が2月3日(水)に行われ、無事に東京公演の幕が開いたことの喜びを語った。
舞台写真 (C)松竹
渡辺は、「お客様からも、ほのぼのとして泣けた、感動したと言っていただいています」とすでに届いている感想を噛みしめるように語り、八嶋は「感染予防対策の都合でお客様は少ないですが、その分一人一人のお客様がエネルギッシュに観にきてくださっているなと感じています」と、この状況下でも劇場に足を運んでくださる観客への感謝を語った。
また、現在東京公演が行われている新橋演舞場の客席の雰囲気について聞かれると、「お客様はみなさん、マスクはしていますが、とても笑ってくださっているし、勇気を得られたと言ってくださる方もいるんです。そんな声をいただくと私たちも本当に頑張ろう、夢を与えるぞ!という気持ちで舞台に立てます」(渡辺)、「すごく一生懸命観てくださっているのが伝わります。感染予防の関係でゆったり座っていただけますし、お客様というより、仲間という感じがする空間になっていて楽しいですね」(八嶋)と、これまでとは違う状況下だからこそ生まれる空気感について話した。
舞台写真 (C)松竹
作品の魅力について聞かれると、八嶋は「いろんな作品のパロディを入れているところですね。パロディそのものが令和の時代にどれだけわかってもらえるのか、ということへの挑戦でもありますが(笑)」と本作の魅力であるパロディの難しさを語りつつ、「僕は今年50歳で立場的にも、先輩方の世代が行なってきたことを、僕たちよりも若い世代へ繋ぐという役割も担っているなと考えています。僕自身も勉強して、こういうこともあるよというのを作品の中で伝えることができたら嬉しいです」と意欲を示した。
二人の役どころや見どころについて渡辺は「振袖を着て娘役は、生まれて初めてなんです。学生時代の学芸会からずっとおばあさん役だったんですが、それが今回、66歳で二十歳の役を演じることになりました(笑)。花道から出てきたら大笑いになると思ったら、お客様は出のシーンで全く笑わない。ということは違和感がないということ! 二十歳に見えているんですね!(笑)」と笑い混じりに話し、八嶋は「僕はおっちょこちょいの与太郎とお役者小僧の二役させていただいているのですが、その落差を是非観ていただきたいです。えりさん演じるお染とずっと一緒に旅をしていて、だんだん"すき"の形が変わって恋心になっていく様を観ていただければ」と自身が演じる役が物語に影響を与えるポイントを語った。
舞台写真 (C)松竹
南座のある京都が舞台となるシーンについては、渡辺が「八坂神社のシーンが最後に出てきます。すごい華やかな立廻りがあって、いいセットです。エンディングで泣いているお客さまいらっしゃるので、「私最後まで振袖を着た二十歳に見えているんだなぁ」と思って、感動しました(笑)。あと、歌のシーンもあります。原作にはないのですが、稽古場で追加になったんです」と今作ならではの見どころを話してくれた。
また、他にも滋賀・大津のシーンもあることが話題に上がると、八嶋は「大津でも、珍事件が起きます。京都で見てくださる皆さんにも一緒に旅をしていただいて、だんだん自分の地元に近づいてきているんだなと感じてもらえるのではないかなと思います」と南座での公演がさらに楽しみになるメッセージを伝えてくれた。
2月下旬より南座公演を迎えることについて、八嶋は「なかなか大変な世の中ですけれど、僕自身としては初めての南座。すごく楽しみにしています。あこがれていた場所でもあるので気合も入ります」と初めて南座で公演を行うことへの憧れと気合を語り、渡辺は「南座にいくこと、本当に楽しみです。京都は第二の故郷のように感じていて、大好きです。南座はお客様も劇場もあたたかくて行くとほっとするんです」と馴染みある京都・南座への思いを話した。
最後に、本公演を楽しみにしているファンの方に向けて「ひととき、今の世を忘れて楽しんでいただければと思います」(八嶋)、「コロナ禍でみなさん体を大事にしていただきたいですが、ぜひ笑っていただきたいですね。愛情の深い、濃い芝居で、何か大切なものを発見していただけるような温かいお芝居ですので、ぜひお越しいただければと思います」(渡辺)と、この状況下でも心から楽しめる公演であることを語った。
宣材写真
『喜劇 お染与太郎珍道中』は2月1日~17日まで東京・新橋演舞場、2月21日~27日まで京都・南座で上演される。
公演情報
二等席:8,500円
三階A席:4,500円
三階B席:3,000円
二等席:7,000円
三等席:4,000円
特別席:13,500円
江戸時代、指折りの大商人、米問屋「江戸屋」にお染(渡辺えり)という箱入り娘がいました。
久兵衛夫婦にとっては一粒種の娘で、わがまま放題に育ち過ぎてのグラマー美女に。
蝶よ花よと、金にあかせての花嫁修業、お茶にお花、お琴に三味線、踊りに料理、更に手習いにと大忙し。
ついでの事に恋の手習いにも精を出して、お出入りの大名・赤井御門守の家中での美男の若侍・島田重三郎と良い仲でした。
ところが、二人の仲を裂く悲しい出来事が起こります。
重三郎が京都藩邸へ転勤という事になったのです。
追い討ちをかけて、赤井家からお染を妾に差し出せとの無理難題を突き付けられました。
お染は、一つには赤井家から逃れるため、また一つには重三郎を追って、京へ旅立つ事になりました。
過保護で親馬鹿の久兵衛夫婦は、お染に付き人まで付けて京都に送り出す事に。
その付き人に選ばれたのが手代の与太郎(八嶋智人)、ドジで間抜けでおっちょこちょい、先輩の番頭・同僚の手代・ずっと年下の丁稚小僧まで日頃馬鹿にされている頼りない人物ながら、すこぶるつきのお人好し、無類の忠義者で、年頃の娘と一緒に旅をさせても、間違いも起こらないというのが与太郎当選の理由ですので、男としてはだらしがない話です。
もっとも久兵衛もその点は抜かりなく、出入りの鳶の者、べらぼう半次をこっそり見張り役で跡を追わせる事にしました。
かくて、お染・与太郎は表向きは夫婦という態を取り、五十三次の珍道中が始まるのですが、世間知らずの娘と頼りない手代の二人旅、騒ぎが起こらぬ訳もなくーーー。