玉野和紀&妃海風「コロナ禍だからこそ、元気を届けたい!」~『CLUB SEVEN ZEROⅢ』インタビュー
(左から)玉野和紀、妃海風
玉野和紀が脚本・構成・演出・振付・出演を手がけるエンターテインメント・ショー『CLUB SEVEN ZEROⅢ』が2021年6月、日比谷シアタークリエほかで上演される。『CLUB SEVEN』初演は2003年で、2017年からは『CLUB SEVEN ZERO』と銘打って上演されている。
今回の『CLUB SEVEN ZEROⅢ』は、玉野和紀、吉野圭吾、東山義久、西村直人、大山真志といったお馴染みメンバーのほか、凰稀かなめ、妃海風が初参戦。どんな舞台になるのだろう。玉野と妃海に話を聞いた。
コロナ禍から地球を守る、地球防衛軍!?
ーー『CLUB SEVEN ZEROⅢ』ということで、現段階の構想を教えて下さい。
玉野:構想は……ないです!(笑)。必ず聞かれるんですけど、基本は構成的に変わらないので、オープニングでいつものナンバーを踊って、歌って、スケッチがあって、ミニミュージカルがあって、50音順ヒットメドレーで、という流れは変わりません。その内容をいろいろと考えている最中で、頭の中はぐちゃぐちゃなんですけど、実はまだ何も書いていません(笑)。
ーー具体的にはこれからだと思うんですけど、今回、新しくやってみたいことを教えてください。
玉野:『ZERO』シリーズになってからは、新しいことをやりつつ、過去作品をリニューアルして上演してきた部分もあったんですけど、今回は全部新作にしようかどうしようか、迷っているんです。
我々は大変になっちゃうんですけど、2023年が『CLUB SEVEN』20周年なんですよ。なので、そのときに過去の名作をたくさんやりたいなと思っているので、今回はあえて全部新作にしようかな、どうしようかな。試行錯誤中です。今言えるのは、必ず新しいスケッチは入ります。それはお楽しみに。これから頑張って考えたいと思います(笑)。
……はぁ、『CLUB SEVEN』を見たいですね、僕。本当に見たい。だから誰かに作ってほしいという感じです。
玉野和紀
妃海:先生! そればかりは!(笑)。
玉野:でもいつもの(吉野)圭吾と、(東山)義久、(西村)直人がいてくれるので本当に安心します。(大山)真志も過去に出てくれている。男性陣はいつものメンバーなので安心して任せられる。女性陣は、凰稀かなめさんと(妃海)風ちゃん。キャラ的にも違う2人で、面白いなと思っています。イメージが違う感じでやらせてみたいなとかいろいろ考えています。
ーー前回の『CLUB SEVEN ZEROⅡ』の時は、チラシのビジュアルがウエスタン風でしたが、今回は……?
玉野:まぁ、ウエスタンの時も別に作品のテーマではなかったんですけどね(笑)。今回のチラシは、地球防衛軍になっています。いまコロナ禍で、「CLUB SEVENの7人がやっつけてやるぞ!」という思いで浮かんだので。最高のチラシになったなと思います。これだけで笑っていただけると思う。だけど、本編がどうなるかは、まだ分かりません(笑)。
妃海:「本編とは関係ありません」という文言がつくんですよね(笑)。
玉野:そう、「関係ないかもしれません」ってね(笑)。
『CLUB SEVEN ZEROⅢ』チラシ画像
妃海風「『本当に覚悟がいるよ』と言われています」
ーー妃海さんは初めて『CLUB SEVEN』にご出演されます。出演が決まった時の気持ちを教えてください。
妃海:以前自分が出演するとは思っていない状態で、北翔(海莉)さんらが出演されている『CLUB SEVENⅡ』(2019)を観に行ったんです。ただのお客さんとして観る分にはすごく楽しいんですけど、出ている人は大変だろうなと思っていたんです。だから、いざ自分が出演するとなると、ドキドキしかないという状態です。北翔さんからも「本当に覚悟がいるよ」と言われているので、覚悟して挑みたいと思います。
ーーやってみたい役やシチュエーションがあれば教えてください。
妃海:『CLUB SEVEN』でみんなで青春するというのはもちろんあるんですけど、チラシのビジュアル撮影で初めて地球防衛軍の格好をしたんです。こんなにテンション上がる、興奮するものとは思わなかったんです! このチラシを見ると、映画の撮影でもするんじゃないかというぐらいのスケールですけど(笑)、どうにか地球防衛軍のシリーズをやっていただきたいなと。
玉野:え、これシリーズになるの?(笑)。……僕と(西村)直人はずっとやっているじゃない? 評判得て、いろいろシリーズ化するじゃない? そうすると、新作が全然できないのよ。監督やらないといけない、たま子やらないといけないと決まってきちゃうと、僕たちだけ新作がないんですよ(笑)。
妃海:お決まりのものたちがあるんですね。いや、地球防衛軍の格好をして「隊長っ!」とか言いたいんです(笑)。
妃海風
玉野:隊長は誰?
妃海:え! 玉野さんが隊長でしょう?!
玉野:僕、隊長になるのかな? うーん、そもそもこの7人で地球守れますかね(笑)。
ーーAバージョンとBバージョンをこれまでも用意されてきましたが、改めてなぜ用意されるんでしょうか。観客としては2倍楽しめるので嬉しいんですけど、出演者としてはとても大変なことだと思うのですが。
玉野:やりたいことが増えちゃって、ひとつにまとめようとすると、尺が3時間半ぐらいになっちゃう(笑)。じゃあ分けようというのが最初のきっかけでした。『CLUB SEVEN ZERO』のときかな。1回だけやったつもりなんですけど、1回やると、なんか定番になってしまいます。IIのときには、「またやってもらえますよね」っていう感じで、またA・Bバージョンになったし、今回なんて、もう最初から書いてあった(笑)。A・B・Cと増やす分にはいいんだろうけど、ひとつに戻してしまうと、お客さんとしても「あれ、今回はひとつなんですか?」ってなるでしょう?
妃海:ちなみに3つになる可能性はあるんですか?(笑)。
玉野:もうもう無理!(笑)。衣装もそうだし、照明も変わって、みんな大変なんですよ。
妃海:そうですよね。衣装も倍になっちゃいますもんね。頭では理解しているんですけど、合間でA・Bバージョンがある作品はやったことがないので、今日はAなのかBなのか、混乱しそうで。
玉野:しないしない。スケッチだけが違うだけだから、劇中の2作品か3作品かが違うだけなんだけど、1日2回公演の時は、新鮮だよ。
妃海:新鮮に思えるといいなと思います。
大の大人が汗を流して一生懸命にやる。そこに魅力がある。
ーー妃海さんが一番楽しみにされている演目と一番苦労しそうだなと感じている演目を教えてください。
妃海:私が一番楽しみにしているのは、実はオープニングなんです。
玉野:えー! そうなの!
妃海:オープニングはみなさん歴代の方々が踊ってこられて、『CLUB SEVEN』に出演された方はみんな踊れるんですよね。だから同じ高校出身の人が同じ校歌を歌えるみたいな感覚だと思っているんです。
玉野:18年前に作った振りなんだけどね。
妃海:初めてオープニングを観た時に本当に格好いいなと思ったので、そこに参加できるのがすごく楽しみです。あとは、50音順メドレーが、観ていても本当に大変そうだなと。観客として観ている分には楽しかったですけど、出演者としては未知ですね。こんなに振付覚えるの?! と思います。
玉野:覚えられない、覚えられない。僕、初日の時はまだうろ覚えだもん(笑)。
妃海:!!
玉野:みんなはいいけど、僕だけ、作り終えてからの1週間が勝負なの。それまでなかなか覚えられないんだよね。だから、なるべく出ないように一生懸命、香盤表を考えるんだけど、必ず人手が足りなくなる(笑)。
玉野和紀
妃海:『CLUB SEVEN』のお稽古スタイルとしては、演出家として前でずっと見ていらっしゃるんですか?
玉野:最初振付家として、がーっとやるでしょ。振付家を卒業したら、演出家でしょ。演出が終わったら出演者として、覚えなきゃいけないでしょ。それがだいたい1週間ぐらい。1週間あればいいけど、今回は稽古がいつもより1週間短いから、僕、ほぼね、覚えないまま舞台に立つかも(笑)。
妃海:それ一番楽しいですね(笑)。
ーー早替えなども覚えなくてはいけませんからね。
玉野:そうそう。出演者は7人ですけど、衣装合わせのときは、帝劇のグランドミュージカル並みに数がありますから。本当に1日がかりですよ。
妃海:どれだけ出るんだと思ったら、7人(笑)。
玉野:小道具もあわせたらものすごいですよ。出演者に限らず、どこのポジションも大変です。だから、全員ファミリーです。大変な思いをして、お客さんに何かを伝えようとする、みんなの思いがあってね、多少間違えようが、失敗しようが、きっと伝わるんだよね。『CLUB SEVEN』って、大の大人が一生懸命やっている。汗流してね。それで何かを伝えようとしていることが一番の魅力だと思うから。形だけではなくてね、その思いがひとつになれば。
コロナ禍で作品を作ること、舞台に立つこと。
ーー玉野さんからご覧になった妃海さんの魅力を教えてください。
玉野:風(ふう)は明るいところがいいです。以上です。
妃海:以上です!(笑)。
玉野:明るさはいいよね。あとは、お笑いの血が流れているところ(笑)。初めて一緒にやったときに、(東山)義久も出ていたんですけど、お互い顔を見合わせて、「『CLUB SEVEN』の素材がいたね」と話しましたから。実は『Summer Night’s Dream』(2019)の時から決まっていたんです。うーん、ちょっとマイナスなところは、真面目なやつをしていても、なぜかふざけた様にみえるというね(笑)。
妃海:芸人じゃないんだから、ってね。
妃海風
玉野:そうそう、だんだん芸人に近づいちゃうんだけど、俳優だからね。『CLUB SEVEN』って初日にものすごくウケても、リピーターが増えてきて、だんだん反応が薄くなると、急に出演者たちは不安になって、逸脱し始める傾向がある(笑)。だから、ずっと毎回同じだけど面白い。そこを目指すのが一番いいんだよね。
ーー妃海さんからご覧になられて、玉野さんはどういう印象をお持ちですか。
妃海:簡単に「脚本・構成・演出・振付・出演」と仰っていますけど、それはとんでもなくすごいことなんですよ。私も自分で、ファンの方々に向けて作品をちょこっと作る機会があって、それでも本当に大変だったのに、玉野さんはこれだけの人数を従えて、しかもA・Bパターンもあって、内容も3時間越えみたいなものをお一人で作られる。
最初、玉野さんにお会いする前は、ストイックな怖い感じの方かなと思っていたら、「大変! 大変!」と仰ってはいるんですけど、絶対楽しそうなんです。「大変だよ! 大変だよ! できるかな〜」と仰いながら、すごく楽しそうで、すごい才能をお持ちなんだろうなぁと思います。どんどんアイディアが生まれてこられるんでしょうね。本当にピーターパンのような方です。
ーーこの公演は6月ですが、まだまだ先が見通せない状況ではあります。コロナ禍で舞台に立つこと、創作をされることについて、どんな思いを感じられているのでしょうか。
妃海:今日、玉野さんにお会いして思ったんですけど、人がキラキラして何かに向かう姿っていうのは、このコロナ禍ですごい大事だなと思いまして。配信作品もありますけど、直接お会いして、前に進んでいる方のお話を聞くっていうのは、こんなにも明日へのパワーになるのかと思いました。
『CLUB SEVEN』という玉野さんの思いが詰まった作品。大人が一生懸命立ち向かう姿に本当に勇気づけられると思うんです。今回私は出させていただく立場ですけど、今の時代だからこそ『CLUB SEVEN』を観たいという気持ちも分かりますし、キラキラ前に進む、努力する、一生懸命に生きる。それは大事だなということを、改めて感じました。
玉野:こんな世の中になるとは思っていなかったので、本当に普通のこと、普通にお稽古して、普通に劇場行って、普通に終われるということが、自分たちにとっては日常的なことが普通じゃないんだなということを改めてすごく感じました。そのなかで舞台に立たせてもらっているありがたさをより一層感じました。
公演が中止になって、『Gang Showman』を急遽つくることになって。本番2ヶ月前ぐらいに決まったんですけど、やってやるわと逆に燃えて。コロナ禍だから悲しむのではなくて、それを手玉にとって面白くしてやろうと思ったんです。今の時代こそ、楽しい作品が見たいと思って。
僕たちはダンスミュージカル出身。ショーが流行っていることは嬉しいことなので、今こそね、エンターテインメントの楽しさを感じてもらって、頑張ろうと思ってもらいたいと思っています。だから『CLUB SEVEN』はぴったりじゃないかな。コロナ禍で、ウイルスをやっつけるという思いを込めて、(チラシでは)地球防衛軍にもなりましたし(笑)。
この『CLUB SEVEN』の7人のパワーで、お客さんを応援したい気持ちでいっぱいです。(感染予防対策もあって)コール&レスポンスはできないですけど、精一杯舞台上から元気をあげたいと思っています。
(左から)玉野和紀、妃海風
取材・文=五月女菜穂 撮影=荒川潤
公演情報
脚本・構成・演出・振付:玉野和紀
出演:
玉野和紀、吉野圭吾、東山義久、西村直人、大山真志、妃海風、凰稀かなめ
【東京公演】
日時:2021年6月6日(日)〜25日(金)
会場:シアタークリエ
【愛知公演】
日時:2021年6月28日(月)
会場:日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
【大阪公演】
日時:2021年7月3日(土)、4日(日)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ