行きすぎた善と悪がぶつかり合う 『ハロウィンKILLS』 #野水映画“俺たちスーパーウォッチメン”第八十八回
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(C)UNIVERSAL STUDIOS
TVアニメ『デート・ア・ライブ DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス 怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。
劇場で予告編が流れるたび、ジタバタと身悶えさせられた2019年公開の『ハロウィン』。あれから二年は長かった……長かったぜ! だが、リアルハロウィーンの時期に合わせて愛するマイケル・マイヤーズに会えるのはめちゃくちゃうれしいーーー! というわけで、続編『ハロウィンKILLS』が公開されるぞ。
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ブギーマンことマイケル・マイヤーズに命を狙われ続けたローリーだったが、家族とともに彼を打ち倒すことに成功。しかし、戦いはまだ終わっていなかった。ローリーの仕掛けたトラップから生還したマイケルは、三度ハドンフィールドの街で殺戮を繰り広げる。一方、街の人々がブギーマン狩りを始めたことで、ハドンフィールドは混乱を極めるのだった。
行きすぎた善は悪になる
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前述の通り、今回はローリー一家のみならず、ハドンフィールドに住む街の人々も果敢にマイケルに挑んでゆく。ハロウィンパーティーの最中、人々が都市伝説のごとくブギーマンについて語っていた矢先に本物が現れ、そのニュースを聞いた住人たちが「これ以上ヤツの好きにはさせない」と武器を手に取るのだ。先導するのは、かつて家族や大切な人をマイケルに殺された被害者たち。ローリーと同じく、人生を狂わされた人々が自らのトラウマにケリをつけようとするのである。
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また、戦う被害者たちの姿に鼓舞され、恐怖に怯えていた人たちも共に立ち上がる。殺人鬼に打ち勝つために街全体が一致団結する様子は、最初こそ「おっ!皆やるな。かっこいいぞ」と思わせてくれるが、次第にその正義は狂気へと変転してゆく。人々は悪を倒すという熱に浮かされ、真偽も確かめずにマイケルと思しきターゲットを追い回す。右往左往する人を突き飛ばし、怪我人をも踏みつけて進む。もちろん助けを求める声にも耳を傾けたりしない。そんな行いは、到底正義とは呼べないだろう。私が今作で一番恐ろしかったのは善良なはずの小市民が、殺人鬼と変わらぬ悪になってしまった瞬間だ。
やっぱり語らせてくれ! マイケル・マイヤーズの魅力
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本コラムで前作『ハロウィン』を紹介した際にもとことん書いたし、今回の冒頭でも叫んだように、私はマイケル・マイヤーズが大好きだ! やっぱり彼の魅力を語らずには終われない。本編中マイケルが初めてスクリーンに映るシーンでは、彼が振り向く姿がとても綺麗で、不意に涙が溢れてしまった。体幹にブレがない。スルリと振り向きじっとこちらを凝視する姿は、まるできょとんとした猫ちゃんのようで愛らしい。周りをチラ見してみても、こんなところで泣いていたの私だけですよ。ちょっと恥ずかしい。
また、これまでの黙々と目的を遂行するクールさに加え、前作のラストで火に炙られて溶けたマスクのワイルドさも加わり、さらに魅力も増している。さらに、殺した人数と残虐さは、シリーズの中でもずば抜けているのではないだろうか。圧倒的な殺意で確殺(ゲーム用語でトドメの意)を決める瞬間は、必殺仕事人のような丁寧な仕事っぷり! 様々な殺しスタイルを堪能できるのがうれしいところだ。
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前作で死んだと思われたマイケルが生きていたというのは予想通りではあるが、そもそも彼は、なぜ不死と思えるほど強いのか? クライマックスではローリーが、彼の強さの源とも取れる事柄に言及する。それがなんとまぁ、オタク的に言うと“解釈一致”というやつで……私が想像してきたマイケル・マイヤーズ像とピタッとハマったものだから、また感極まって泣いてしまった。マイケルはどこまで私の理想を実現してくれるんだ……!
来年2022年には、トリロジーの最後を飾る予定の『Halloween Ends(原題)』が公開されることもあり、今後も『ハロウィン』シリーズから、マイケル・マイヤーズから目が離せない。いや、離すな!
映画『ハロウィン KILLS』は10月29日(金)、TOHOシネマズ日比谷、渋谷シネクイントほか全国公開。
作品情報