松本幸四郎・市川猿之助コメント到着 11月歌舞伎座『吉例顔見世大歌舞伎』魅力をギュギュっと凝縮した“超高速”忠臣蔵
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(左から)市川猿之助、松本幸四郎
2021年11月1日(月)から、豪華出演者が揃い『吉例顔見世大歌舞伎』が上演される。
いよいよ来週に迫った初日に向け、第三部『花競忠臣顔見勢』に出演する松本幸四郎と市川猿之助が作品への思いを語った。
歌舞伎座11月公演『吉例顔見世大歌舞伎』の第三部で上演するのは『花競忠臣顔見勢(はなくらべぎしのかおみせ)』。歌舞伎の三大名作狂言の一つとして、時代とともに人々の心を惹きつけてきた『仮名手本忠臣蔵』をはじめ、元禄年間に起きた赤穂浪士の討ち入り事件を題材とした「忠臣蔵もの」は今日まで数多く創作されている。今回はそんな名場面満載の「忠臣蔵」の世界を新たな展開で上演する。
本作に出演するのは、古典はもちろん、新作にも意欲的に挑戦し歌舞伎界をけん引する存在である松本幸四郎と市川猿之助。歌舞伎座では猿之助が演出を勤め、幸四郎と猿之助の二人がコンビとなって活躍する「弥次喜多」シリーズなど、これまでにも様々な話題作を上演してきた。
そんな二人が、コロナ禍における歌舞伎上演の新たな形を模索し生まれたのが、『花競忠臣顔見勢』。猿之助が演出を勤め、歌舞伎界の未来を担う若手の“花形”俳優たちも「忠臣蔵」のそれぞれの名場面で大きな役を勤め、ドラマチックかつスピーディーな演出の本作は、一言で表すと“超高速”忠臣蔵。新たな魅力の詰まった作品が誕生する。
『花競忠臣顔見勢』松本幸四郎・市川猿之助コメント
●今回の企画が実現した経緯と思い
幸四郎:歌舞伎の興行形態もずいぶん変わった中で、今この状態でどういったことができるかを考え、一歩でも前進していけるように、と企画しました。「忠臣蔵」は本来であれば全部を通して上演すると1日かかるところを凝縮して、この興行形態でもできる「忠臣蔵」を考えようということで実現しました。
松本幸四郎
猿之助:最初は「忠臣蔵」の大序から大詰まで古典を縮めてやろうと思いましたが、完成された『仮名手本忠臣蔵』という作品を下手にいじるとすべてが崩れてしまう。
そこで、最近はあまり皆様にお見せできていない“忠臣蔵外伝”部分を描くスピンオフとして上演するのはどうか、と。幕の内弁当のようないいとこどりの「忠臣蔵」で、ひと味もふた味も違う作品となっています。
市川猿之助
●若手の活躍について
幸四郎:今は上演される部ごとに一座が分かれていて後輩、同輩一緒に舞台に立つめぐりあわせの機会がなかなかない。今回はこの年代、若手の人たちが一緒に舞台に立つということや、今大きな役をやるということを通して、これからの歌舞伎に希望を持てるそういう舞台にしたいと思いもあり、若手の方々みんなに活躍してもらいます。
猿之助:普段若手と言ってもなかなか一堂に会することがないので『花競忠臣顔見勢』という題名にもあるように、義士たちの面々が一堂に会するという意味にかけて、若手俳優も一緒に出るという意味もあります。それぞれの場面の主役には、将来この役を勤めてもらいたい、当たり役になってほしいという思いをもって、彼らがこれをしっかり勤められるようになるということを見越したうえで配役をしております。ということで、本来であれば我々なら2人で四十七士全部をやってしまいたいくらいですが、今回は涙をのんで脇に…(笑)
(左から)市川猿之助、松本幸四郎
●注目ポイント
幸四郎:「忠臣蔵」のお話で、数日間にわたる物語の展開を肌で感じていただけるような構成で、客席にいらっしゃる皆さんにも義士の一部のような感覚で観ていただけるのではと思います。それぞれ「あのお芝居の名場面だ!」というところが、今の状況で上演できる形に生まれ変わっていますので、ドラマを追いながら楽しんでいただきたいです。
猿之助:せりふ劇としてドラマ仕立てに作っていて、凝縮された時間の中でじっくりご覧いただきます。いつもは大序から厳かにはじまりますが、そこに一工夫加えていて知っている人がご覧になると「あれ?」と思うかもしれません。驚きの発端になっておりますので、その辺りも楽しみにご覧いただきたいです。
公演情報
『花競忠臣顔見勢』あらすじ・みどころ
鎌倉は鶴ヶ岡八幡宮。足利直義を筆頭に、饗応役の塩冶判官、桃井若狭之助が居並ぶなか、兜の鑑定役として呼び出された判官の妻・顔世御前に横恋慕する執権・高師直が顔世にしつこく言い寄ります。そこへ助けに入り顔世を逃がした若狭之助でしたが、気分を害した師直から散々に侮辱されると、耐えかねて刀を抜き…というのは若狭之助が見た夢。現実の世界では、師直に侮辱された塩冶判官が刃傷に及び切腹して1年、大星由良之助をはじめとする塩冶浪士たちはそれぞれの物語を生き、ついに討ち入りの刻が迫ります…。
元禄年間に起きた赤穂浪士の討ち入り事件を題材とした『仮名手本忠臣蔵』は、歌舞伎の三大名作狂言の一つとして、時代とともに人々の心を惹きつけてきました。また、討ち入りに関わる人物を、さまざまな視点からドラマチックに描き出した「忠臣蔵もの」も今日まで数多く創作されています。このたびの上演では、『仮名手本忠臣蔵』の「大序」の世界で幕を開け、小浪と力弥の縁組みに若狭之助が心を砕く「桃井館」、おなじみ「徳利の別れ」を題材にした「稲瀬川々端」へと続きます。さらに、亡き主君の奥方との涙の別れを描いた「南部坂雪の別れ」、討ち入り当日の吉良邸隣家の物語『土屋主税』を『仮名手本』の世界に置き換え、クライマックスは十一段目より「高家奥庭泉水」、「花水橋引揚げ」とそれぞれの名場面をスピーディーな展開でお見せする新たな演出で上演いたします。顔見世月の歌舞伎座、花形俳優の競演で挑む「忠臣蔵」の世界にどうぞご期待ください。