今泉佑唯 「同じセリフなのに、前回よりも辛く苦しい」 『修羅雪姫-復活祭50th- 修羅雪と八人の悪党』インタビュー
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2022年3月18日(金)より東京・紀伊國屋ホールにて、舞台『修羅雪姫-復活祭50th- 修羅雪と八人の悪党』が開幕する。「修羅雪姫」は、小池一夫原作・上村一夫作画により、1972年2月に「週刊プレイボーイ」にて連載が開始。昨年の舞台化では今泉佑唯の俳優復帰作としても話題を呼び、売切必至の連日大盛況に。それからわずか4ヶ月、「修羅雪姫」誕生50周年という記念すべき節目に、早くもあの仇討ちの姫が帰ってくる――。主演は、昨年の鮮烈な印象からさらなる飛躍が期待される今泉佑唯が続投。脚本・演出も同じく久保田創・岡村俊一のタッグではあるが、一新されたそのタイトル同様に構成にも新たな風が吹き込まれる。開幕を直前に控えた稽古場で、再び大役に臨む今泉佑唯に話を聞いた。
仇討ちの背景に想いを馳せて
――昨年の公演では3日限りの上演を惜しむ声も印象的でした。半年を待たずとして再演となった今回は、10日間・12ステージの上演。スタミナも要する作品かとは思うのですが、再び主演に挑む今の心境は?
まさかこんなに早くやらせていただけるとは思ってもみなかったので、最初は信じられなかったんです。「本当の話なのかな?」って思いつつ、稽古場に着いてはじめて「あ、本当にやるんだ!」って(笑)。稽古が進んでいくたびに奇跡を実感していますね。昨年の公演の記憶がまだ鮮明な中で新たな稽古に挑んでいるのですが、とても有難い気持ちです。
―― 稽古場はどんな雰囲気でしょうか?
新たに出演されるキャストの方も数名いらっしゃるのですが、大半の方が前作から引き続き出演されています。なので、あの時の和気藹々とした空気感をそのままに引き継いで、稽古もいい雰囲気でできています。
―― チーム感が築かれているのは大きいですね。しかし、そんな稽古場とは打って変わって、舞台の内容はとてもハードなものですよね。ダイナミックな殺陣やアクション、大胆な衣装…見どころもたくさんあると感じます。
前回は殺陣がすごく難しくて苦戦したので、今回はスムーズに覚えられたらいいなと思っています。殺陣のシーンは前回よりも増えていて、かつ、前回と役柄が変わったキャストに応じて互いの動きも変わったりしているので、相変わらず混乱しています(笑)。残された稽古時間でしっかり詰めて、気を引き締めてやっていかなければと思っているところです。
―― たしかに、記憶がまだ鮮明な分、混乱しそうですね(笑)。
そうなんです! 同時に、前作と違いがあることも含めて大きな見どころになるんじゃないかなとも思っています。玉城裕規さんが演じる役が前回とは180度違う役なんですけど、もう恐ろしくて恐ろしくて。玉城さんの大きな目から発せられる鬼気迫る目力がすごくて、つい引き込まれちゃって……。稽古で殺陣のシーンをやる時も、戦うのが怖くて恐る恐る近づいています(笑)。
――前作とは真逆の役柄を演じられる方がいらっしゃる、というのも見どころの一つですね。ご自身の役柄に関してはどうでしょうか?新たな発見や心境の変化がありましたか?
前回も「ここのセリフは言うのが辛いな、苦しいな」ってところがあったんですけど、今回の稽古で、よりしんどくなったというか……。昨日初めて通しやったのですが、「こんなに辛かったっけ」と思ったほどでした。
――それは、具体的にどんなシーンなのでしょうか。
雪が終盤で自身の父や母のことを独白するシーンで、「父は小学校の教師をしておりました」、「母は無実の罪を着せられ……」と両親それぞれの生き様に触れるんです。雪は父にも母にも会ったことがなく、それらは人から聞いた話で。なのに、そのセリフを口にすると、たまらなく悲しくて辛くて……。
―― “復讐劇”と聞くと、つい激しいシーンを思い浮かべがちですが、復讐の動機となるところに迫るものがあったのですね。
家で台本を読んでいる時は平気だったんです。でも、いざ稽古場でやると、いろんな風景が思い起こされたり、空気から伝わるものもあったりして、一個一個の言葉がしんどくなっていったんですよね。仇討ちの理由や背景にあるものが胸に迫ってくるような。前回よりも体の奥の方にセリフがグサグサと刺さっていくような感覚でした。
自分の素直な気持ちを初めて言えた稽古場
――静かな語りの裏に心が燃えている。そんな印象を受けるお話でした。俳優としての今泉さんにとって、本作や雪という役柄はどんな存在ですか?
時代も状況も今とは全く異なる物語なのですが、雪の気持ちとは通じるものがあると感じています。セリフを読んでいても、「私もこんな気持ちになったことある」と重なる部分がたくさんあったんですよね。だから、役作りをする上でも、いつもより悩まなかったし、迷わなかったし、作らなかった。そして、そんな自分でいられたのは座組のみなさんのお陰でもあって……。
――とても頼もしい座組なのですね。しかし、昨年の稽古の頃はまだ初めましての方もいらっしゃる中で、プレッシャーや緊張もあったのではないでしょうか。
そうですね。緊張というよりも、気を遣ってしまう自分に悩んでいました。自分の見方で役を決め込みすぎちゃうと、みんなが思う方向性と違った時に変えられなくなっちゃいそうで最初は怖かったし、踏み込み過ぎている気がして、思ったことも言えなかったりしたんです。だから、演出の岡村さんや脚本の久保田さんからの言葉を待っていた部分もあって……。でも、稽古序盤でお二人が「そのままでいこう」と背中を押して下さり、自分から滲み出るものや溢れ出すものをみんなが受け止めてくれて……。だから、今は毎日の稽古がすごく楽しいです。自分自身がブレずにいられるって、こんなにも心強いことなんだと感じています。
――お馴染みの顔ぶれに支えられながら、この大役に臨まれているのですね。
とくに脚本の久保田さんは、『熱海殺人事件』、『あずみ戦国編』と私の出演舞台は全部ご一緒して下さってきた方なので、とても心強いです。私が稽古の意図を理解できていなかったり、演出に疑問を持っていたりすると、それを言葉にする前に久保田さんや岡村さんが察してくださって……。みなさんの大きさに甘えながら、一歩ずつ前進しています。
――前作で築かれた強い信頼関係を感じるエピソードです。
みんなで意見を出し合って作った、という前回の手応えも大きいです。全員が都度「ここはやりにくい」とか率直な感想を話しながら稽古をしていたので、今回の稽古場でも自然とそういう空気が出来上がっていて……。「自分の気持ちや意見って言ってもいいものなんだ」って、この稽古場で初めて知ったんですよね。そして、「この舞台をより良いものにしたい」という想いも強くなりました。
――さらにパワーアップした本作の開幕を楽しみにしています。タイトルも一新されていますが、このあたりがより強くなった、輝きが増したというところがありましたら教えてください。
内容はわかりやすく、かつ深度は深く掘り下げた仕上がりになっています。目に見えるものだけでなく、背景にあるものを紐解くようなシーンも多いので、前回拝見して下さった方も、初回の方も楽しんでいただけると思います。殺陣のシーンが増えていることで、立ち回りにも迫力が増しているので、そのあたりにも注目していただけたら。私自身、今回で初めて、鞘と刀の両方を使って戦ったりもします!殺陣やアクションの内容もガラッと変わっているので、前作との違いを楽しみつつ、そのインパクトでみなさんを圧倒できるよう頑張りたいと思います。
取材・文=丘田ミイ子 写真=中田智章