ナイロン100℃『イモンドの勝負』テレビ初放送記念、主演・大倉孝二にインタビュー
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大倉孝二 (撮影:宮田浩文)
昨年(2021年)、劇団本公演としては約3年ぶりの上演となったナイロン100℃の『イモンドの勝負』(作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ)が、2022年5月29日(日)CS衛星劇場にてテレビ初放送となる。。主演を務めたのは大倉孝二。これまで数多くの舞台に出演してきた彼が、今作では「役者人生の中でベスト3に入る大変さだった」と吐露。はたして、その理由とは…?
■これまでやったことも、見たこともない、初めて経験する舞台でした
ーー 今回の舞台では、大倉さんが普段以上に疲れている様子だったのが印象的でした。
そうですね。疲れ具合でいえば、この作品は役者人生の中で間違いなくベスト3に入る作品でした(苦笑)。感染症対策をしっかりとった上での稽古でしたので、そうした精神面での大変さもあったのですが、それ以上にとにかく出番が多くて(笑)。台本の続きが届くたびに、“どれだけ俺を出すんだ!?”と思うぐらいでした。しかも、場面がぶつ切りで展開されていくので、テンションがまったく違うシーンが立て続けにやってくる。それを、どう上手く成立させられるのかを考えるのも大変でしたね。
ーー 作・演出のKERAさんからはどのような演出があったのでしょう?
それが、あまり説明をしてくれなかったんです(笑)。僕は普段、自分から演出家に質問をするほうではないんですが、今回に限っては意外と多くて。にもかかわらず、「俺も分からないんだよね」とか「そのあたりはなんとかやってみて」みたいな感じだったんです(笑)。もちろん、KERAさんも投げやりで言ってるわけではなく、今回の作品はナンセンスコメディだったので、そもそも分かりやすい正解なんてものはないですし、そうした“なんとかやってみる”ということも含めて、役者と一緒に楽しんで作っていこうという意図があったんだと思います。
ーー 公演を終え、この『イモンドの勝負』についてどのような印象を持たれましたか?
きっと作品をご覧になられた方以上に、キャストのほうが不思議で変わったものをやっていたという感覚があったと思います(笑)。KERAさん自身も、「今後、こういう感じのナンセンス作品はしばらく作らないと思う」とおっしゃっていましたし。シーンの一つひとつを細かく見ると、ナイロン100℃の初期の頃を彷彿とさせるエッセンスを感じるところもありました。でも作品全体で見ると、やはり今までやったたことがなく、見たこともない、初めて経験する舞台だったなという印象が強いですね。
(撮影:宮田浩文)
ーー その“初めての経験”というのは、具体的にどういったことでしょう?
例えば、今回演じたスズキタモツという男性は、場面によって年齢も人柄も変わっていくので、摑みどころがないんですよね。ですから、どれだけ必死に演じてもカタルシスがなくって。やっぱりお芝居って、感情の動きに理由があるから役に入っていけるわけです。実際、昔は、“しっかり気持ちが伴った芝居をしなさい”といろんな方から言われてきましたから。それなのに今回は、「感情と行動が一致しないんだけど、とりあえずやってみて」と言われて。この劇団も恐ろしいことになってきたなと思いましたね(笑)。
ーー とはいえ、笑いの部分はやはりナイロン100℃らしく緻密さが感じられました。
そうですね。そこはうちの劇団の特徴でもありますから。アドリブがたくさんあるようで、すべてが緻密に作られている。KERAさんがグズグズなノリを好まないので、仮にそう見えるシーンでも、実はどれもコントロールされているという作り方なんです。ですから、キャスト陣はいろんな不安を抱えながらの稽古でしたが、いざ本番を迎えたら、お客さんはすごく喜んでくださっていて。劇場でたくさんの笑い声をいただけたことですごく安心感も生まれましたし、カーテンコールでの皆さんの拍手にホッとする毎日でした。
ーー また、今回は客演として山内圭哉さん、池谷のぶえさん、赤堀雅秋さんが参加されていました。共演してみていかがでしたか?
強烈な個性のある方ばかりですし、今回もものすごく支えてもらいました。皆さん、自分が出ているシーンは一律不安そうな顔をされていましたけど(笑)、稽古場ではすごく楽しそうに笑っていて。それになんと言ってもKERAさんからの信頼が厚い方ばかりですからね。KERAさんが求めているものを的確に表現されるし、むしろ、それ以上のものを見せてくださる。特にこうした不思議な作品だと、より力強く感じられましたね。尊敬するところ、見習うところが多く、僕も皆さんのように年齢を重ねていけたらなと思いました。
ーー では、今作の放送に向けて、楽しみされているシーンを教えてください。
僕は、自分の出ている映像を見るのが苦手なんです(笑)。あまりにも“ダメだなぁ…”と思って挫けそうになってしまうので。それに今作に関しては、本当に自分がどうお客さんから見られていたのか、まったく分からなくて。ですから、僕自身が楽しみにしているシーンというより、大変だった場面を挙げさせていただくと、一幕のラストです。急にタモツの感情があふれ出すので、気持ちを作るという意味でも苦労したのを覚えています。また、そこからの二幕の序盤も見どころかもしれません。休憩にもならないような休憩時間を挟んで(笑)、ヘトヘトの中、いよいよタモツの“勝負”が始まるんです。しかも、その内容が本当にくだらなくて。正直、体力的に“もう、勘弁して!”という気持ちにもなったこともあったんですが(笑)、お客さんがすごく喜んでくださっているのが伝わってくるし、演じる側としてはそれ以上の喜びはないので、いつも気力を振り絞って頑張ってましたね。
(撮影:宮田浩文)
撮影:宮田浩文
ヘアメイク:山本絵里子
スタイリング:JOE(JOE TOKYO)
シャツ¥29,800、Tシャツ¥10,800(2点共にnonnative/vendor03-6452-3072)、その他スタイリスト私物
放送情報
■出演:大倉孝二、みのすけ、犬山イヌコ、三宅弘城、峯村リエ、松永玲子、長田奈麻、廣川三憲、喜安浩平、吉増裕士、猪俣三四郎 / 赤堀雅秋、山内圭哉、池谷のぶえ
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