UA 6年ぶりのCD発売、『Are U Romantic?』制作プロセスと現在の音楽観とは? 「生きていくにはロマンが必要でしょ」
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年齢を重ねると責任が増えて、ロマンティックなことにときめくこと自体が罪みたいになりがちだけど、みんなもっとロマンを求めていいんじゃないかな。
――EP『Are U Romantic?』には、今をときめく若い世代のアーティストも参加。「蜂蜜とミルク」は、NulbarichのJQさんとのコラボレーションです。
2018年から東京の音楽シーンを掘り始めたんですけど、そのなかで飛び抜けてセンスがよかったのがNulbarichだったんです。今回の曲に関しては、“レトロな感じにしよう”から始まって、けっこうミーティングを重ねました。お互いに好きなものを話したり、JQさんから“J-POPに寄せたいから、日本語でリリックを書いてほしい”と言ってもらったり。アレンジに関しては、まずJQさんがドラムを叩いてくれて、スタジオで音を重ねて詰めていきました。そうやって音を作るタイプみたいですね、普段から。
――《何も知らないという事を/知っているあなたが/柔らかくて愛おしくて》というラインもありますが、この歌にはお子さんへの思いも込めているんでしょうか…?
いえいえ、男と女のラブソングですね。ただ、私の歌詞は一つに絞れないというか、いろいろなことに置き換えられるので、どのように捉えてもらっても何の問題もないです。私としては、スイートなラブソングにしたかったんですよね。というのも、JQさんが歌ってくれたデモがめちゃくちゃメロウでスイートだったんですよ。JQさんはすごく謙遜される方なので、“恥ずかしい”って仰るかもしれないけど、本当に完璧で。これをどうやって歌えばいいんだろう?と思って。そのときから、絶対に甘いラブソングにしようということだけは決めてたんですよね。
――そして「Honesty」は、中村佳穂さんの作詞・作曲。去年、一気にブレイクを果たした印象もある中村さんですが、UAさんは以前から彼女の音楽を聴いていたそうですね。
私は以前から魅力を見抜いていましたよ(笑)。最初にお会いしたのは2016年かな。その後、大阪のフェスティバルで再会して、(2ndアルバム)『AINOU』をいただいたんですけど、衝撃を受けまして。マネージャーを介してメールアドレスを教えていただいて、恋文を送らせてもらったんですよ。いかに私が『AINOU』に感動したかはもちろん、そのときに私が思っていたことも赤裸々に書いたし、“あなたと何かができれば本望です”ということもお伝えして。そんなに長い文章ではないんですけどね。
――その“恋文”が「Honesty」につながったんですね。
そうかもしれないですね。実は2曲送っていただいたんですけど、もう1曲はダンスチューンだったんです。そちらも素晴らしかったんですけど、バラードのほうを選ばせてもらいました。
――《HONESTY そこに戻るまでしばらくかかるわ》など、歌詞も本当に素晴らしくて。《傷ついても/こんな時代に/うまれてきて/よかった》という最後のセクションにもグッときました。
最後の部分だけ、私が書いたんですよ。中村さんともスタジオに入ってアレンジを詰めていったんですが、ギターの君島大空くんも参加してくれて、サビがあって、長めの間奏があって、そこからの流れでなぜか私が書くことになって。もちろん、中村さんの歌詞にインスパイアされて出てきた言葉なんですけどね。
――EPの最後はDragon AshのKjさんとのコライトによる「Okay」。Dragon Ashも今年、25周年なんですよね。
そうそう。信じられないですよね、若々しくて。
――Dragon AshはUAさんがデビューした2年後に登場したわけですが、当時から交流はあったんですか?
フェスで一緒になったことはありますね。当時からすごく好青年だったんですよ。その前の世代のロックバンドの人たちは、誰とも目を合わせず、まともに挨拶もしない人が多かったんですけど(笑)、彼はしっかり目を見て挨拶してくれて。
――「Okay」は作詞がUAさん、作曲がUAさんとKjさんの共作ですね。
顔を合わせて打ち合わせしたり、その後、メールでやり取りして曲のイメージを共有して。Kjさんは全部の楽器をプレイするので、ドラム、ベース、キーボード、シンセなどを重ねてトラックを作ってくれたんです。それを受け取って、僭越ながらメロディを自分で乗せさせていただきました。歌詞については、応援歌にしようと思ってました。メロディも歌詞も、Kjさんにインスパイアされて書いたんですけどね。
――Kjさんも一緒に歌ってますね。
彼のサポートがあったほうが曲が活きると思って、アプローチさせていただきました。最初は嫌がってたんですけど(笑)、何度もお願いしてたら、承諾してくれて。
――『Are U Romantic?』というタイトルについても聞かせてもらえますか? 確かに現代はロマンティックが足りないような気もしますが……。
リアリストが多いですからね。と言っても、実は情報を見ているだけで“自分はリアリストだ”って錯覚してるだけって気もするけど、数字やシステム、機械化の方向に進んでるのは間違いなくて。私としては“ロマンがなくて、どうやって生きていくの?”って思っちゃうんですよね。壮大なロマンではなくて、心のひだがちょっと潤うだけで、日々が豊かになるじゃないですか。たとえばタクシーでピューッと行くんじゃなくて、ちょっと早めに出て、ゆっくり歩くことで季節の花を眺めるだけでもいいと思うんです。
――日常のちょっとしたロマンが大事だと。
そうそう。年齢を重ねると責任が増えて、ロマンティックなことにときめくこと自体が罪みたいになりがちだけど、そんなことはないし、みんなもっとロマンを求めていいんじゃないかなと。
――そういう視線も、カナダから日本を見ているなかで得たものなんですか?
うーん、私の活動のエリアは、“え? ぜんぜん楽しいんだけど”という感じなんです(笑)。でも、ニュースを見たり、自分が興味を持ってるジャーナリストたちの意見を聞いたりすると、“いろんな問題があるんだな”って。
――過度な効率化だったり、短期間で利益を得るのが正義というシステムも問題ですよね。音楽業界も例外ではないですが……。
そうかもしれないですね。今回のEPは“ポップに仕上げる”というテーマを掲げてましたけど、一緒に曲を作った方々は、オーセンティックな音楽を忘れていない人ばかりなので。消費されるポップスを作ったつもりはなくて、自分にとってのポップを追求した作品なんですよね。
――素晴らしい姿勢だと思います。EP『Are U Romantic?』を聴いて、自分の日常もかなりカラフルになりました。
わあ、最高の言葉をいただきました。聴いてくれるみなさんもぜひ、楽しんでもらえたら嬉しいですね。
取材・文=森朋之
リリース情報
2022年5月25日(水)発売
品番/ VICL-65654 ¥2,500(税抜)
品番/ VIZL-2024 ¥4,000(税抜)
初回限定盤
1. 微熱 【マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)】
2. お茶 【永積 崇(ハナレグミ)】
3. アイヲ 【岸田繁(くるり)】
4. 蜂蜜とミルク 【JQ(Nulbarich)】
5. Honesty 【中村佳穂】
6. Okay 【Kj(Dragon Ash)】
1. 情熱
2. 黄金の緑
3. 閃光
4. HORIZON
5. 微熱
6. プライベート サーファー