福岡『CIRCLE’25』2日目はChappo、君島大空からUA、矢野顕子まで、全世代が音楽の輪で繋がる類稀な祝宴に

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レポート
音楽

『CIRCLE’25』 写真=『CIRCLE』提供

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『CIRCLE’25』2025.5.18(SUN)福岡・海の中道海浜公園

2日目は、初日(レポートURL)同様に10時過ぎに海の中道海浜公園内に入る。初日ほどのピーカン大晴天ではないが、ちょうど良い曇天で風も心地良い。大雨天気予報だったことを考えると、やはり奇跡としか思えない天気。フェスは天気に左右されるが、そういう点では『CIRCLE』は天気を確実に味方につけている。

毎年『CIRCLE』での当たり前に起きる現象過ぎて初日ライブレポートでは触れなかったが、両日共に相変わらずトンビが飛んでいて、低空飛行してきた時は流石に怖くなるものの、自然溢れる環境であることを再確認もできる。初日同様、出演者全組を詳細に記録するようなレポートではないが、引き続き『CIRCLE』の空気感が伝われば幸いである。

君島大空トリオ

CIRCLE STAGEトップバッターは君島大空トリオ。一昨年、KOAGARI STAGEに弾き語りで出演していたが、今年は藤本ひかり(Ba)と角崎夏彦(Dr)と共に出演した今年は、バンドならではの激しさをのっけから感じることができた。『CIRCLE』が本気で好きなこと、バンドで初めて来れた嬉しさが真っ直ぐに伝わってくる。鳴らされる音楽に身を委ねて、じっと聴いている観客も見受けられて、『CIRCLE』に来られる観客皆様は祭り騒ぎというよりは胸騒ぎを楽しみに来ている方が多いなと、毎年ながらではあるが改めて思えた。君島は初日フィッシュマンズのライブに出演していたが、そう言えばメンバーもみに来ていて、『CIRCLE』は出る人も来る人も本当に音楽好きな人ばかりである。

KOAGARI STAGEトップバッターは、「せーの、Chappoです」と福原音(Gt. etc.)と細野悠太(Ba.etc.)がふたり声を合わせて自己紹介して始まるが、細野のベース一音目が聴こえてきた瞬間、重みがある独特の音に仰天してしまう。ギターもキレがあり、全体的に音も大きく、若くして初登場ながら、その存在感は既に絶大。細野は昨年CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUINでも出演しており、初日のLAUSBUB同様に『CIRCLE』新世代の凄みと喜びも感じる。世代で言えば、一昨年のムーンライダーズ、去年の大貫妙子らといった大御所世代の孫世代。

インタビューなどで公表しているように、細野は『CIRCLE』初年度2007年から常連の細野晴臣の孫で、このふたりは特別ではあるものの、良き音楽の遺伝子継承を確かめられるのも『CIRCLE』ならではで感激する。そうそう、Yellow Magic Orchestra「Absolute Ego Dance」のカバーを披露したのも特筆すべき点であろう。サポートメンバーは、ドラムが海老原颯で、曲を追うごとに小山田米呂(Gt)と清水直哉(Key)と、福原いわく「我々は人数が増える設定」。

「めし」では朗読部分を、所属レーベルのカクバリズム代表を務める角張渉が担当。『CIRCLE』では毎年DJも務めていて、お馴染みの重要人物なだけに観客たちも沸く。単なる朗読台詞では無くて、1stアルバムや翌日の福岡ライブの告知などもされて、THEカクバリズム的な独特のオリジナリティーやユーモアを感じる。

mei ehara

そういう流れでは、KOAGARI STAGE・2番手のmei eharaもカクバリズム所属。レーベル買いではないが、このレーベルのミュージシャンならば絶対に良いという安心感がある数少ないレーベルの代表格である。eharaはクールなサングラス姿で淡々と歌っていくが、その空気感はたゆたうという言葉そのままであった。特にMCもなく、ただただ演奏していく姿も静かなるストロングスタイルであったが、ラストナンバーの前に少し話し始める。7年前に弾き語りで出演したが、ある時期までは雨女であり、当時も雨であった。しかし、今日は天気がもって「ヤッター!という感じです」と、淡々ながらも打ち明けた。弾き語りからバンド、または違うバンドなど、年度ごとに様々な形で観られるのも『CIRCLE』特有のドキュメントである。

やのとあがつま(矢野顕子&上妻宏光)

大御所世代では、CIRCLE STAGE・2番手、やのあがづまで登場した矢野顕子もそうであろう。『CIRCLE』には2012年から出演する常連組でもある。矢野と上妻宏光(Vo. 三味線)がふたりのみで舞台に立つ姿も誠にいなせであり、矢野の声が上妻の三味線に乗っていくのを聴いているだけで痺れる。「おてもやん」など民謡も演奏されるが、歌詞には英語も混ざるなど、まさに革新的で実験的で最先端。「私たちがやると、ちょっと違いましたね」と矢野は笑いながら話したが、キャリアが長いミュージシャンが未だに新しいことに挑み続ける姿には感服するしかない。

後、何気ないおしゃべりすら聞き逃すことができないのも、この世代の特徴であろう。譜面をiPadで観る人が大半となり、紙の譜面がほとんどなくなる中、「死ぬまで使ってやる!」と言い放つも、風が強くなるとiPadの方が便利かもと言ったりする茶目っ気。でも、こんな何気ないおしゃべりに真実味があったりするので、一挙手一投足見逃せない。アナログとデジタルの融合という意味では、ラストナンバー「小原節」はまさしくそうで、やのとあがつまだからこその電子ビートが効いたアレンジで、またもや感服するしかなかった。

EGO-WRAPPIN'

ここからさらに常連組が続くと書こうと思ったが、よく考えてみれば『CIRCLE』は常連組ばかりである、或る意味。でも、毎年毎年みんなパワーアップされて研ぎ澄まされて出演されるので、毎年見応えある醍醐味がとんでもない。CIRCLE STAGE・3番手のEGO-WRAPPIN'もそうであろう。去年2日目の大トリを務めたが、今年もリハーサルから大盛り上がり過ぎるくらいに大盛り上がり。本番も待ちきれない観客たちが手拍子をして煽るほどの大盛況ぶり。1曲目「PARANOIA」からトップスピード感が半端ない。中納良恵(Vo)が「5月のこの季節は「CIRCLE」の季節になってきました!」と言えば、森雅樹(Gt)も「以前より人が増えている!」と嬉しそうに言う。

中納が何気なく「バンドとバンドが被らない」ことの良さについても触れていたが、今や大きなフェスはステージ数が増えて、ステージ被り、つまりは音被りが当たり前の中、『CIRCLE』は2ステージ被らずに順序良く進んでいく。当たり前のことを当たり前に行なうから、出る側からも来る側からも愛されるのだ。中納の「『CIRCLE』愛しあってるかい?!」という問いかけを聞いて、尚更、その場にいる全ての人たちに愛し愛されて成り立っている祭だと心底思えた。いつしか曇天から晴れに変わっている。『CIRCLE』への強い気持ち強い愛は天気すら味方につける。

YOGEE NEW WAVES

時刻は夕方4時前。2日目も後半戦へと入ってきた。若手だと思っていたYOGEE NEW WAVESも立派な中堅であり、『CIRCLE』とは切っても切り離せない関係であり重要な存在。角舘健悟は弾き語りでも出演しているが、それでも「素晴らしいラインナップの中にYOGEEを入れてもらえて嬉しいです」と言っていたように、いつまでも感謝と程好い緊張感を持っているのは素晴らしいなと思う。「晴れましたね! 最高だね!」とも言っていて、何度もしつこく書くが、やはり大雨と予報されていた2日間が晴れたのは本当に奇跡だ。

こんな天気だからこそ「Summer of Love」は特別感があった。ダンスナンバーの「Like Sixteen Candles」で〆られたが、しっかりと最後まで良い歌のみを届けてくれた。『CIRCLE』はあまりステージの大きさを気にせず、グッドミュージックを楽しむのみだが、次はより大きなCIRCLE STAGEでも観たいと思う。

ハナレグミ

CIRCLE STAGE・4番手はハナレグミ。赤いカーディガンが印象的な永積崇は、「『CIRCLE』に帰って来れて嬉しいです!」「ほんとここはいつも景色が最高ですね!」と心から『CIRCLE』を楽しみにしていたことが伝わってくる。20年前、東京スカパラダイスオーケストラ「追憶のライラック」にゲストボーカルで歌った話から、当時は「追憶」という言葉が自分のものになっていなかったが、その言葉の重み深みを感じる歳になったと明かし、記憶に生かされているとも話す。

 

「素晴らしい記憶を持ち帰って下さい」という言葉からの「家族の風景」は、それこそ重みも深みもあった。続く「ビッグスマイルズ」は、<すっかり街は夏になって><春なんてもうどこにも見かけないよ>という歌詞が、今の状況にピッタリすぎて気持ち良すぎる。それで言うと「雨あがりのGood Day」もまさしくそうなわけで。最後は永積ひとりで弾き語りを。「岸田(繁)君に繋げられるように」というひとことも『CIRCLE』出演者が繋がっていることを感じられて嬉しかった。「光と影」をつぶやくように歌う。静かで沁みる時間。「続いては岸田繁君になります!」と去っていく。

岸田繁(くるり)

KOAGARI STAGEトリは岸田繁。民謡やくるりの楽曲をリハーサルで弾き、本番時間になると、リハーサルでは座っていた観客も一斉に立ち上がり前方へと進む。まずはCreedence Clearwater Revival「Have You Ever Seen the Rain?」のカバーを、ブルースハープを吹きながらアコギを弾いて歌う。すぐにくるり「リバー」も歌われる。バンドマンの弾き語りで楽しみなのは、そのバンドの曲を聴けることだけなくて、ルーツや好みの楽曲のカバーを聴けることでもある。

本人もくるりではない曲をやるとガッカリされると触れたので、ここは敢えてカバーで来るのかなと思いきや、まさかの目下製作中のくるり新曲を聴けることに。ミディアムナンバーの貴重さを噛みしめながら、聴き逃さないように、観客たちが聴き入っている。全く知らない新曲を聴けるのは、ここに足を運んだ人の特権であり、贅沢な時間である。大名曲「ばらの花」はゆっくりゆっくり歌われていく。これもここに足を運んだ人の贅沢な特権。バンドマンの真っ直ぐな弾き語りを聴けた貴重過ぎる夕方。

UA

いよいよ今年の『CIRCLE』2日間も終わろうとしている。CIRCLE STAGE・大トリは、「ウーアナイト♡」と題してUAが登場する。今年でデビュー30周年を迎えるUAの1曲目は、「HORIZON」。96年6月発表のデビュー曲であり、そして「お茶」という2022年発表された楽曲が続く。UAの歴史を辿る集大成の様なライブになるのだなとドキドキしてしまう。本人も「懐かしい曲から新曲までスペシャルセットリストでお送りします!」と言うだけあって、「リズム」「数え足りない夜の足音」「スカートの砂」と90年代ナンバーが立て続けに歌われる。

ここからが驚くべき展開に。「さて、ここで新曲を福岡初公開したいと思います!」と、それも3曲の新曲が披露される。未発表新曲「MOOD」「Happy」「ALUKU」の3曲。新曲含むスペシャルナイトとは理解していたが、にしても3曲とはサプライズにしてもサプライズすぎる。どれもタイプが違った上に今のUAを感じられる3曲。アルバムも半分できているとのことだが、この3曲の仕上がりが凄すぎる上に期待しかない。30年好きなミュージシャンが今もなお新しい挑みを魅せ続けてくれていることは、本当に幸せすぎる。

「情熱」「甘い運命」という大人気曲連発での観客から起きた歓声と、観客みんな幸せそうに手を振る姿も忘れられない。また、30年を意識するのは難しくて話し出しつつ、歌を辞めようとは一度も思わなかったこと、そして、みんなのおかげと感謝する。この世界でいつまでもみんなが自由に歌を歌えるようにと祈念してからの「音楽を愛さずにいられないあなたとまた逢えますように」という言葉は鮮明な印象として残った。アンコールでは中国や韓国からの国際的な観客層に触れて、「『CIRCLE』からまん丸い輪っかを発信していきましょうね!」と言葉をかけてくれた。

ライブレポートを担当して4年目の今年、『CIRCLE』は出演者も観客もスタッフみんなが、まんまるい輪っかで繋がり、存在しているということ。その安心感と恍惚感からの幸福は、『CIRCLE』にしかないと重ねて思えた。2日間共に終演した後の音楽は、高橋ユキヒロ「LA ROSA」。音楽という、まんまるい輪っかは繋がり続けている。

取材・文=鈴木淳史 写真=『CIRCLE』提供

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