大トリ・TESTSETら10組と共に、不屈の精神で見事に終宴ーー福岡で3年ぶり開催『CIRCLE'22』が愛される理由とは、そして来年へと続く

レポート
音楽
2022.6.9
TESTSET (砂原良徳×LEO今井×白根賢一×永井聖一)

TESTSET (砂原良徳×LEO今井×白根賢一×永井聖一)

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『CIRCLE'22』2022.5.13(FRI)〜15(SUN)福岡・マリンメッセ福岡B館

■1日目・13日(金)のレポートはこちら
 
福岡で3年ぶり開催『CIRCLE'22』が愛される理由とは
 ーー初日は岡村靖幸ら10組出演、福岡への想いに溢れた全身全霊のステージ


■2日目・14日(土)のレポートはこちら
 
NUMBER GIRLが地元・福岡シティで伝説のナンバー、10組がしのぎを削りあった2日目
 ーー福岡で3年ぶり開催『CIRCLE'22』が愛される理由とは


Predawn

Predawn

yonawoで始まり、NUMBER GIRLという福岡出身ミュージシャンで〆られた2日目。最終日の「KOAGARI STAGE」トップバッターも福岡在住のPredawnという地元にちなんだミュージシャンからスタート。本人も「福岡を感じてもらえたら」と言っていたが、やはり福岡ならではのフェスなのだと再確認する。まもなく産休に入るので、産休前の最後のフェスとなる『CIRCLE』で、彼女を観られたのは貴重だった。

羊文学

羊文学

CHAI

CHAI

特に、この2日間で感じられたのはコロナ禍もあり、中々、福岡にミュージシャンたちが来ることができなかったという現状。この日も「CIRCLE STAGE」トップバッター・羊文学が「福岡にバンドで来るのは2回目なので、出番が終わったら色々観たい!」と言っていたり、CHAI(「KOAGARI STAGE」出演)も福岡のグルメについてうれしそうに話した上で、出番終わりにメンバーが他のライブを観る姿も見受けられた。出演者たちが心から『CIRCLE』を楽しむ姿というのは、しっかりと我々にも届くものだ。

Kan Sano

Kan Sano

例えば、Kan Sano(「KOAGARI STAGE」出演)やペトロールズ(「CIRCLE STAGE」出演)という一見クールに見えるタイプの出演者2組が、『CIRCLE』への強い気持ち強い愛をエモーショナルに爆発させたのも誠に印象的であった。Kan Sanoは2016年の『CIRCLE』にUAのサポートメンバーで来ていたことを振り返り、いつか自分がフロントで演奏するのが夢だったと話した。実際に1週間住んだことがあって、本気で住みたいと思うくらいに福岡が好きだとも語っていた。他で観るライブとは、また違う気合いが全身からほとばしっていた。ペトロールズの長岡亮介も広い会場で孤軍奮闘していると漏らしつつ、「不屈の精神ですよね。絶対やってやるぞみたいな」と『CIRCLE』の気概を心から賞賛していた。

ペトロールズ

ペトロールズ

2012年の再開催年度から、ほぼ常連組として出演しているEGO-WRAPPIN'。1年半ぶりのライブということもあり、明るく楽しく喜びのパワーを大爆発させていた。「(久々のライブ)一発目が馴染みある『CIRCLE』で良かったです! (主催の)是澤さんも元気で良かったです!」という森雅樹の言葉を聞いた時、『CIRCLE』がミュージシャンたちから愛されていることは初日からわかっていたが、是澤さんがミュージシャンたちから愛されていることも本当に伝わってきた。是澤さんが3日間ずっと、全てのライブを観客と同じく2つのステージを行き来して観ていたのも目撃していた。

EGO-WRAPPIN'

EGO-WRAPPIN'

主催者は色々と大変な業務がある中で、全てのライブを観るのは実は至難の業。本当に音楽を愛していて、『CIRCLE』に全力を注いでいる。EGOも普段とは違う今年ならではの光景を楽しみながらも、「今日のセットリストは青空で聴きたい感じなので、来年は青空に戻れるように」と心から祈っていた。ミュージシャンたちに、観客たちに、早くいつもの青空を見せたいと、是澤さん自身も心から祈っているのだろうなと、EGOのライブを観客席後方で見守る是澤さんを見ながら思った。

クラムボン

クラムボン

3日目にもなると時間が経つのを異様に早く感じる。すっかり『CIRCLE』の時間感覚に慣れ親しめているのだろう。夕方17時20分。終盤に差し迫ってきたところで、『CIRCLE』の歴史において、重要な2組が登場する。クラムボンと向井秀徳アコースティック&エレクトリック。2007年の初年度に出演した2組であり、原田郁子はソロとして2012年再開催年度にも出演している。そして、原田と向井は共に福岡市博多区出身ということ。この日も実家から来たという原田が、福岡で3年ぶりに開催ができたことについて、「ただいま~!」と喜ぶ姿も可愛らしかった。

クラムボン

クラムボン

野外と室内では音響環境も大きく異なる訳だが、ミトが「CIRCLE STAGE」について「このグワングワン(とした音の反響)は最初で最後だと思うし!」と未来を見据えて言うのも明るい気持ちになれた。福岡のダンサー・Yurinasia率いるダンサーチーム8人と共に、「福岡の海辺と言えば!」と「波よせて」も披露。これぞ福岡でしか見れないコラボレーションであり、とてもスペシャル感がある。何と言っても最後の原田による「次、向井秀徳へ急げ!」と福岡バトン、CIRCLEバトンが完璧に繋がれた瞬間であった。

向井秀徳アコースティック&エレクトリック

向井秀徳アコースティック&エレクトリック

2日続けての登場であり、本日は「KOAGARI STAGE」に登場の向井。昨日同様、「福岡シティー!」とシャウトして、その名も「City」から歌い出す。「ここはウォーターフロント! 福岡シティー!」という語り掛けも聞けた「Water Front」。<ここは水際 ウォーター・フロント>と歌詞にもあるが、クラムボンの「波よせて」でも海辺を意識できた様に、本来とは違う形とはいえ、初めての『CIRCLE』をマリンメッセ福岡という海辺で、水際で、体感ができたのも物凄く良かった。前日に引き続き、「本当にみなさん『CIRCLE』にお集まり頂き、本当にありがとうございます」と挨拶したのも律儀の極みであり、やはり漢気でしか無かった。また、LEO今井とのバンドであるKIMONOS「YURERU」も歌い、「ここで俺の友達LEO今井が入ってくる!」と、LEO本人は次の出番を控えて不在とはいえLEOの歌うパートを強調もしていた。そんなLEOは3日目の重要なキーパーソンでもある。

LEO IMAI [LEO今井 岡村夏彦 シゲクニ 白根賢一]

LEO IMAI [LEO今井 岡村夏彦 シゲクニ 白根賢一]

昼下がりの「KOAGARI STAGE」にLEO IMAIとして登場して、「みなさん、ところでZAZEN BOYSはお好きでしょうか?」と「ポテトサラダ」を激しく鳴らしたのは、本当に粋だった。「去年は東京から配信だったんですけど、ハートだけは福岡にいる気持ちで、今年はハートも体も福岡に来れて嬉しいです」という言葉に、彼の全ての想いが表現されていた。なので、「CIRCLE STAGE」での大トリにTESTSETの一員として登場して、メンバー4人横一列でクールな演奏を、クールな映像と共にMC一切無くクールに魅せたのも、彼のギャップある両極端を観れた様で大満喫することができた。

TESTSET (砂原良徳×LEO今井×白根賢一×永井聖一)

TESTSET (砂原良徳×LEO今井×白根賢一×永井聖一)

3年ぶりに福岡で、そして初の3日間開催された『CIRCLE』は……HPに記された言葉を借りるならば、見事に「終宴」した。TESTSETが終わってすぐ、観客席後方で会場を後にする観客たちを見届ける是澤さんに、3日間の感想と御礼を伝えに行った。「始まったら終わるんですね」とやりきった清々しい表情の是澤さんに、私は条件反射的に「来年は、いつもの海のとこに必ず行かせて下さい!」と返していた。

「海のとこは本当に良いとこなんで、来年ぜひ!」

この是澤さんの最後の言葉を聞いた時、まだ何故だか今年の『CIRCLE』は終わっていないと思ってしまった。マリンメッセ福岡での『CIRCLE』は本当に素晴らしかったが、やはり『CIRCLE』は海の中道海浜公園 野外劇場なのだ。今年初『CIRCLE』の私にとっては、どうしようもないことだし、来年の海の中道海浜公園 野外劇場を楽しみにしていればいいだけのこと。が、じっとしてられなくなった私は編集者に無理を言い、関西に帰る時間を遅らせて、翌朝、海の中道海浜公園 野外劇場へ向かうことにした。

電車だとJR博多からJR西戸崎まで約35分で、そこから公園内を徒歩約20分。船だと、それこそマリンメッセ福岡に面した博多港にあるベイサイドプレイス博多から西戸崎船渡場まで約15分で、そこから公園内を徒歩25分。天神から直行シャトルバスもあり、約45分~60分で行ける。マリンメッセ福岡の様に街中では無いが、それでも街中から決して離れすぎていない。

海の中道海浜公園に訪れた、ライター鈴木

海の中道海浜公園に訪れた、ライター鈴木

海の中道海浜公園という名前から海のイメージを勝手に強く持っていたが、近くに海があるとはいえ、公園自体は草原と原生林という緑を感じられる場所だった。野外フェスとしての運営も設営も何もされているわけがない、現在の海の中道海浜公園 野外劇場だが、それでも過去の写真を参考にしながら、「CIRCLE STAGE」「KOAGARI STAGE」「KAKU-UCHI Annex」に飲食出店エリアを、脳と心をフル回転させてイマジネーションしながら、少しの時間だが過ごしてみた。こんな自然あふれる場所で、今年3日間鳴らされた音楽を聴けたら多幸感しかないだろう。良い意味で、今年の『CIRCLE』が普段の『CIRCLE』と別物なことも理解できたし、でも、イレギュラーな今年の『CIRCLE』を体験できたのは、来年に本来の『CIRCLE』を体験する為には絶対に必要だった。

待ってる一緒に歌う時。待ってる一緒に踊る時……。今の感情はこんな感じだ。ルールが緩和されて、いつもの場所で、いつもどおり歌って踊れますように。『CIRCLE』初心者の私でも、ここまで感情移入して祈念するわけで。来年は海の中道海浜公園 野外劇場で必ずお逢いできますように。

取材・文=鈴木淳史 写真=オフィシャル提供(日隈天明、ハラエリ、ヤマモトハンナ


■『CIRCLE』10回目開催を目指して、クラウドファンディングを開始

『CIRCLE』が10回目の開催に向けて、2022年6月9日(木)12:00から6月30日(木)23:59までの期間、クラウドファンディングを実施中。(詳細はこちら


『CIRCLE '22』LIVE PHOTO

次のページにて、ソロカットなどライブ写真を掲載中

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