りょう×上條恒彦、小島聖×平田満が語る、濃密な2人芝居 『Heisenberg(ハイゼンベルク)』取材会レポート
-
ポスト -
シェア - 送る
上條恒彦「素敵な会話だなぁと思ってね」
小島聖
ーージョージーという役にどのようにアプローチしようと考えていますか。
りょう:おしゃべりで風変わり、でもとても魅力的な女性なんですが、衝動的な言動というのが多くて。ほぼ衝動的にお話ししているんですけど、そういう言動が多いからこそ、やはりひとつの芯を持って、シンプルにストレートに演じたいなと思って。それをやることによってお客様を揺らしたいというか、心を揺らせるように、ジョージーはシンプルに。そのまま真っ直ぐ。どれが本当・嘘とかいうのは考えず、そのままいきたいと思っています。思うままにという感じですかね。
小島:あまりまだ何も考えていないんですけど、一度本読みをする機会があって、平田さんと一緒に声を出して、発見したこともありました。そういう発見をベースにしたいなと思う。「きょう、こんな発見があったな」という積み重ねが平田さんとの中で見つかればいいな。平田さんという器の中に、すごい遊んでいるようなイメージもあるだろうし。大きなものがあるから、はしゃいでいる気が今はしています。
平田満
ーーアレックス役についてはいかがでしょう。
上條:素敵な会話だなぁと思っていましてね。日本人は会話が下手だというテレビ番組をたまたま見たことがあって。でもこの作品は会話が噛み合ってもないのに、2人の会話が上手なんですよ。こういう風な会話を若い頃ずっとやってこれたら、もう少し素敵な人生が送れたんじゃないかなと思うんですよ。
そういう会話をしてこなかった。だからこそ、この本を読んで、素敵な会話だなと思っているわけで。そのことから、まず開拓し直さなきゃいけないぞと思っている。できるかどうか分からないです。だけど、自分だったらこんなこと言わないけど、こいつはなんでこういう風に言うんだろうと思う箇所を少しずつクリアしてやっていこうと僕は思っています。
平田:実はまだ稽古始まっていませんし、演出も全く受けてないので、責任は持てないんですけど、決してうまく立ち回ったりとか、脚光を浴びたりすることがない。かといって、不幸な目や辛い部分に集中するようなお話でもない。それぞれの話が、確かに嘘か真実か分からないところも、でも嘘でも真実でもいいので、人物が生きてきた何か人間性みたいなものができてくればいいな。なにせ小島さんと2人しか出ない。しかも男女の話なので、なんとか嫌われないように頑張ろうという消極的なアプローチです(笑)。
小島聖「余白とか無駄とかが面白いんだろうなぁ」
りょう、上條恒彦(左から)
ーー本作は、オフ・ブロードウェイでヒットした作品。本作の魅力は何でしょう。どういうところが受けたのでしょう。
りょう:このお話の最初、ジョージーがアレックスの首にキスをするという、とても電撃的な出会いから始まって、偶然なのか何なのか、その出会いから2人の人生が変わるゲームのような会話が繰り広げられるんですけども、本当に日常的な会話で。
でもものすごく私自身読んでいて、振り回されるというか。さっきまではこうだったのに、なんでこうなったんだと、すごく心がぞわぞわする。スリリングな感じもしまして。だからそれは私自身、今回参加させていただく上で、ストレートにシンプルにお芝居をして、お客さんに私が本を読んだときに感じたようなスリルやサスペンスも感じるような感情を持っていただきたいなと。そこが面白いところでした。魅力でした。
上條:オフ・ブロードウェイの舞台を見ていないから分からないけど、僕もそれ、すごく知りたいです。アメリカの観客、ブロードウェイの観客はどういう風に受け取ったんだろうというのを知りたいよね。だけど、参考にはならないと思う。東京の観客で日本人の私たちがやるから。でも、話ぐらいは聞いてみたいなと思っていました。
まぁ、自分では思ってもいないような展開がありましたからね。粗末な印刷のコピーの本をめくるのが楽しかった。それだけのことなんですけどね。
平田満、小島聖(左から)
小島:余白とか無駄とか面白いんだろうなと。コロナになって余白が少なくなったと言われますけど、ラジオを聞いていたら、無駄みたいなところからアイディアが生まれたり、新しいコミュニケーションが生まれたりしているけど、それが今減っているというお話を耳にしたことがあって。確かにそうだよなって。
会話の余白みたいなところ覗き見していると、何がどうという、物語を構築して最後にたどり着くという演劇ももちろんみて、すごいと思う素敵さもあるけれど、なんだかよく分からないものを見たときに、面白かったなと持ち帰る演劇もある。そういう空気感が素敵な物語なんじゃないでしょうか。
平田:僕自身が思うのは、まず(アレックスは)75歳男性、老人ですよね。その恋愛というところがね。75歳って、膝が痛いとか、血圧が高いとか、セクハラとか、そんなので世間を賑わすぐらいで(笑)、これだけまともな恋愛劇というのがまず少ないんじゃないかな。連ドラを作っている人はまず考えないような題材なので、そんなにお客さん呼べるのかなってちょっと心配になるぐらい(笑)。
僕にヒットしたのはそこです。この年になっても、恋愛できるんだな。それは挑戦していいんじゃないかなと。そこが魅力的だったり、面白かったりすれば、お芝居もまだまだ捨てたものではないなと思いました。