the quiet roomがWOMCADOLEとのツーマンライブで見せた、未来への意気込み
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the quiet room 撮影=山川哲矢
the quiet room Tour 2022 "知りたい、高鳴りの正体を” 2022.6.23 渋谷CLUB QUATTRO
6月23日に渋谷CLUB QUATTROにて、the quiet roomのツーマンツアー『the quiet room Tour 2022 "知りたい、高鳴りの正体を”』のファイナル公演が行われた。今回のツアーは、東名阪に加えてthe quiet roomの地元である水戸での公演を含めた全4か所で開催されたもので、東京公演にはWOMCADOLEがゲストとして招かれた。今回はリリースを引っ提げていないツアーということもあり、セットリスト的にも自由度があると思うが、その上でthe quiet roomは、私たちをどのように楽しませてくれるのだろうか? その期待に満ちた会場は、ソールドアウトであることも相まって、熱気が渦巻いていた。
先攻・WOMCADOLEは、樋口侑希(Gt/Vo)による「JAPANNEEDS DYNAMITE-WOMCADOLE始めます! かかってこいよ!」との威勢のいい掛け声と共に、骨太のセッションでスタート! そこから続けてプレイした「レイテンシー」で、導火線に火を灯すどころか、オンタイムで爆発をもたらす。「誰かに邪魔をされても進め/馬鹿にされても進めばいいんだ」という歌詞の通り、彼らが持ち得る揺るがぬ精神性を、爆音と渾身の歌唱に託し、オーディエンスの心をガンガン撃ち抜いていく。安田吉希(Dr/Cho)が両手を思いっきり振り上げてビートを刻むと、続く強烈なロックチューン「YOU KNOW?」では、黒野滉大(Ba)のベースラインが大躍動を生み出し、マツムラユウスケ(Gt/Cho)のエッジの効きまくったサウンドがフロアを斬っていく。そのアクトは、まさに痛快! 疾走感が巻き起こす疾風がハンズアップを巻き起こした「黒い街」や、「まだ足りねぇだろ?」と渇望を露わにしつつ鋭利に刺しにかかってくる「応答セヨ」など、怒涛の勢いでプレイしていく。
人間が集い、音楽の下で自らの本性を剥き出しにして真っ向から鬩ぎ合う。そこに何かしらの制限があろうとも、気持ちと気持ちの摩擦で熱気は生まれるし、それができるのがライブだ。WOMCADOLEは、そういう魂のぶつかり合いを常に欲しているバンドだと思う。そんな彼らは、「人生は、人生はゲームみたいに上手くいかないと思うんですよ。サイコロもなければ、自分の進む道くらい自分で決めていかなければいけないこんな世の中で、俺たちに託されたのはたったひとつのロック。どこでどう巡り合ったかじゃない、今まで何をやってきたかが大事なんじゃろうが! だから、生ぬるいものなんてずっといらねぇんだよ! ほっといたら腐る、だから生モノは素晴らしい! だからライブは素晴らしい!」と喝を入れつつ「人生一回きりだぞ!」と渾身の想いを込めた「アオキハルへ」を捧げた。その想いに呼応するように、満面のハンズアップが広がったフロアは、力強さが漲っていた。
そして、the quiet roomへの感謝を告げつつ、「単なる嬉しさや喜びを表現しにきたんじゃねぇんだよ。ただただ、音楽をしにきたんだよ」と、ジャジーでアダルティックな色香を放つ「doubt」で雰囲気を変えると、ラストに青春賛歌「ラブレター」を届けた。樋口は最後に、「俺らは、隣の子が傷つくような音楽やライブはしたくない。優しい音楽に救われている俺だからこそ、優しいロックンロールを愛し続けたい」と言葉にした。人を思い遣る気持ちはこの時代、いや、時代は関係ないのかもしれないが、本当に大事なことだと思い知らされる日々が続いている。だからこそ彼らの音楽は、この日も多くの人にとっての明日を生きるエネルギーとなったに違いない。
そんなWOMCADOLEの熱いライブを受けてステージに登場した、the quiet room。菊池遼(Vo/Gt)、前田翔平(Ba)、斉藤弦(Gt)、サポートドラマーのぴのり(Dr)の4人が最初に届けたのは、「キャロラインの花束を」だ。春の日差しのなかでまどろんでいる時のような、優しくてまろやかな空気感が会場いっぱいに広がっていく中、菊池の「愛を込めて、Fressy!」の掛け声がハンドクラップを誘引し、カラフルな照明の中で「Fressy」のポップで可愛らしいメロディが甘く響いていく。声は出せずとも、オーディエンスの高揚感はしっかり伝わるようで、菊池は「最高だね、渋谷!」や「超いい感じだな!」と喜びを露わにしつつ、さらにサマーナンバー「(168)日のサマー」や「You」を鳴らしながら、どんどんとテンションを上げていく。
「WOMCADOLEのライブを観て、初期衝動を思い出しましたね。灼熱の太陽に、とか言ってる場合じゃなかったわ」と、「(168)日のサマー」の歌詞に掛けた自虐的な笑いを誘いつつ、「WOMCADOLEに負けないくらいに熱いライブをして帰るので、最後までよろしくお願いします!」と意気込みを伝えた。そして、今回のツアーはリリースを伴っていないことに触れつつ、「いつもと同じセットリストだと面白くないなと思って、個人的にSNSで取ったアンケートを基に演奏する曲を決めました」と話した。その中でも、リクエストが多かったという「かずかぞえ」をプレイした時の、飛び跳ねたり手を挙げたりしながら喜んでいるオーディエンスの様子が印象的だった。「単純にツアーを回りたかった」という、バンドの前向きな気持ちが故に行われた今回のツアーならではのサプライズということで、これはファンもかなり嬉しかっただろう。リリースを伴ったツアーの醍醐味ももちろんあるが、このような自由度の高いツアーを行うことで、the quiet roomにとって、ライブという音楽表現を、さらに、ファンと直接顔を合わせる場を設けるということを、どれだけ大事に思っているのかが伝わってきた。特に「かずかぞえ」は、オーディエンスが指でカウントを取りながらバンドと一緒に音楽を作っていく楽曲なのだが、シンガロングは出来ずとも、こうやって音楽の一部としてライブを作り上げていく実感は、逆に言えば、今だからこそ強く感じるものでもある。
激しいストロボ演出がサウンドの攻撃性をより強めるロックチューン「Vertigo」では、ブーストのかかった斉藤と前田のソロの掛け合いが興奮を煽ったのだが、こういった楽曲では、the quiet roomのフィジカルの強さが顕著に表れる。前半でプレイした曲たちのように、誰もがハッピーになれるポップさがthe quiet roomの主軸になったといえども、牙を研ぐことも忘れていない。そこから、ミラーボールに照らされながらゆったりと聴き込める「グレイトエスケイプ」や、珠玉のバラード「カフネ」と続いたことからも、このタームは「表情豊かに生きる」というバンドコンセプトが息づいていることがよく分かるセクションだった。
菊池は、ツアータイトルの「知りたい、高鳴りの正体を」について、「今の俺たちだったら、こうやってライブに集まってくれるみんなと、もっともっと楽しいことができると思うし、もっとドキドキできると思うんです。だから、現状に満足せずに、先に進んで行けたらいいなと思って、このタイトルをつけました」と意図を伝えた。その上で、もっと胸を高鳴らせてほしい!という気持ちから新曲「Twinkle Star Girl」を披露! 痛快失恋ソングではあるものの、パーティー感のあるポップ&ロックチューンで、オーディエンスも一緒に楽しめるthe quiet roomの新たな代表曲に成り得る新機軸的楽曲だ。1stフルアルバム『花束のかわりに』は、様々な挑戦がなされた作品だったが、その時の「やりたいことを、どんどんやっていきたい!」という彼らのポジティブマインドが、この曲の中で最高の形で結実されているように思う。
そしてここから、ライブは終盤戦へ。盛り上がり必至のキラーチューン「Instant Girl」、「Hello Hello Hello」をプレイして、会場のテンションを最高潮まで持っていく。そんな良い雰囲気の中、菊池は「バンドの調子が良ければ良いほど、悔しくなることも多いんです。こんなに良い曲作っているのになぁ、とか、みんなでこんなに良いライブができているのになぁ、とかね。でも、みんなと一緒だったら、ひっくり返せると思うんです。口だけじゃなくて、もっと大きいところにみんなを連れていきたいと思っているし、でっかいホールとか、でっかいドームとかでライブができたらいいと思っています」と、決意を表明。その言葉に賛同するように、会場からはとびきり長い拍手が贈られた。そしてラストに「最後は、最高の仲間が集まってくれた、今日のような特別な一日にぴったりの一曲を」と「パレードは終わりさ」を届けた。
最高の締め括りではあったものの、それでも足りないというオーディエンスの気持ちに応えてアンコールで出てきた4人は、「予定調和は好きじゃないから、ぬるっとした感じじゃなくて盛り上がっていけますか!?」と、「平成ナイトコウル」と「Happy End」をプレイ! さらに、7月20日に新曲「Twinkle Star Girl」がリリースされることに加え、今年10月から来年1月にかけて全国ツアー『the quiet room Tour 2022-2023 「魔法が解けるまで」』を行うことを発表した。1月21日に東京で行われるツアーファイナルは、バンド史上最大キャパである恵比寿LIQUIDROOMでのワンマンライブということで、まさに有言実行だ。様々な葛藤はありつつも、こうして一歩ずつ、着実に進み続けるthe quiet room。今回のツアーを経て、秋にはどんな成長を見せてくれるのだろうか?今から楽しみだ。
取材・文=峯岸利恵 撮影=山川哲矢
ツアー情報
open 16:30 / start 17:00
※ワンマンライブ
サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
open 16:30 / start 17:00
※ゲストバンドあり
WESS 011-614-9999
open 16:30 / start 17:00
※ゲストバンドあり
G.I.P 0570-01-9999
2022年11月23日(水祝) 新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
open 16:30 / start 17:00
※ゲストバンドあり
FOB新潟 025-229-5000
open 16:30 / start 17:00
※ゲストバンドあり
夢番地 広島 082-249-3571
open 16:30 / start 17:00
※ゲストバンドあり
キョードー西日本 0570-09-2424
open 16:30 / start 17:00
※ワンマンライブ
キョードー東京 0570-550-799
open 16:30 / start 17:00
※ゲストバンドあり
Duke高松 087-822-2520
open 16:30 / start 17:00
※ワンマンライブ
清水音泉 info@shimizuonsen.com
open 16:00 / start 17:00
※ワンマンライブ
キョードー東京 0570-550-799
8月20日(土)10:00〜
整理番号付き・入場時1drink別