2つの国際コンクールを経て、ピアニスト亀井聖矢のヴィジョンを聴く イープラスとエージェント契約を締結
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亀井聖矢(ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールにて/Photo by Richard Rodriguez)
アーティストのヴィジョン実現に向けてサポートを行うイープラスの「エージェントビジネス」。反田恭平(ピアノ)率いる株式会社NEXUSとのパートナー契約や、角野隼斗(ピアノ)、上野耕平(サックス)ら若手アーティストが名を連ねるが、この夏、ピアニストの亀井聖矢が契約アーティストの一員に加わった。すでに演奏活動やメディア出演、国際コンクールへの出場で目覚ましい躍進を見せる二十歳の亀井は、来春には桐朋学園大学を卒業する。活動の更なる展開に期待が高まる亀井に、イープラスとのパートナーシップにどのようなヴィジョンを描いているのか、その思いを聞いた。
東京リサイタルデビューから国際コンクールまで~激動の2年を振り返る
東京オペラシティでの東京デビュー・コンサート(撮影=鈴木久美子)
――亀井さんは17歳で日本音楽コンクールピアノ部門およびピティナ・ピアノコンペティション特級という、国内でもっとも権威ある二つのコンクールで優勝し、華々しい東京リサイタルデビューも飾られました。あれからまだ3年とは思えないほど、コンサートやメディア出演など、充実した活動をされていますね。印象に残っているコンサートはありますか?
いろんな意味で印象に残るステージというのはありましたが、初めて東京オペラシティのコンサートホールで行なったリサイタルや、昨年(2021)末のショパン・リサイタルツアーで演奏した新潟のりゅーとぴあは、とても響きが良く、客席との一体感という手応えを得ることもできて、心に残っています。
――今年2022年は、スペインのマリア・カナルス国際ピアノコンクール、そしてアメリカでのヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールに出場され、前者では第3位に輝き、後者はセミファイナルへと進出されました。国際コンクールへの出場はどのような思いで臨まれたのでしょうか。
日本のコンクールは、出るならやはり一位を勝ち取らなければという強い気負いがあったのですが、国際コンクールは違ったメンタリティで臨みました。新しい世界に飛び込んで挑戦してみたいという思いと、その新しい場所で、たくさんの人に演奏を聴いてもらう機会を得たい、という気持ちがありました。僕の演奏を好きだと思ってもらえる方が一人でも増えるのは嬉しいことです。今は配信で世界中の人たちに聴いてもらえます。もちろん審査はありますが、その結果のみにとらわれず、海外の方々からも多くのコメントを寄せていただけたことは、すごく嬉しかったですね。
亀井聖矢(ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールにて/Photo by Richard Rodriguez)
マリア・カナルスで3位という賞をいただくことができたので、ヴァン・クライバーンは少し力みが取れていたと思います。もちろんセミファイナルよりも先には進みたかったけれど、自分としては「多くの方に聴いてもらう」という意味合いは果たすことができたと思うので、いい挑戦になったと思います。
――ヴァン・クライバーンでは他のコンテスタントの方々との楽しそうな交流のお写真もtwitterにあげておられましたね。
コンクールなので皆さんとは良きライバルでもあるのですが、一方で、同じセミ・ファイナルまで進出できたマルセル田所さんとは、勝敗のつくステージから解放された瞬間からは一緒に遊んだり、これからお互いが受けるコンクールのことを話したり、演奏曲についてのアドヴァイスを交換したりと、とてもいい交流ができました。今後も国際コンクールはいろいろ挑戦したいと思っています。
亀井聖矢、マルセル田所
角野隼斗は「背中で示してくれる」
――来春の大学卒業を前に、今年も国内での楽しみなコンサートが続きます。7月は角野隼斗さんとの2台ピアノコンサートツアーがありますね。一昨年は無観客公演を余儀なくされましたが、いよいよ有観客での角野さんとの共演です。お客様にどんなところを楽しんでいただきたいですか?
僕と角野さんは、それぞれ音楽作りの傾向が異なります。タイプが違うからこそ、それぞれのカラーを出し、触発し合い、共鳴し合って良い演奏ができると思います。僕のスタイルとしては、重厚さや音楽の内的な空気を大事にする傾向があり、角野さんは音色がとてもブリリアントで、コンサート会場の空気全体を作り上げ、強いオーラで引き込む力があります。そういったところで、お互いに面白く絡み合っていけたらいいと思っています。
――ピティナ・ピアノコンペティション特級では、1年違いでグランプリに輝かれたお二人ですが、年齢は角野さんの方が6年上ですね。亀井さんにとって角野さんはどんな存在ですか?
角野さんはどんな音楽に対しても、いつも信念を感じさせる演奏をしていて、音楽家として尊敬しています。活動のあり方は異なりますが、いろいろなことを背中で示してくれるし、コンサートに伺えばすごく魅了されるし、僕も置いていかれないように頑張りたいな!と思っています。
角野隼斗との2台ピアノ公演の様子。2020年は配信にて行われた
――半年後の12月11日には、いよいよサントリーホールでのソロ・リサイタル・デビューも決まりました! どのようなコンサートにしたいですか?
もちろん今までやってきた成果をお見せしたいというのはありますが、やはりあれだけ大きな会場での新しい挑戦となりますので、ぜひ新しいレパートリーを入れていきたいですね。プログラムをしっかりと練って、磨きをかけた演奏をお聴かせし、成功させたいです。
――新しいレパートリーへの意欲とのことですが、最近はどのようなものに取り組んでみたいと考えていますか?
古典ものをきちんと勉強したいというのはありますね。ヴァン・クライバーンのセミ・ファイナルの課題曲で、初めてモーツァルトの協奏曲に挑戦しましたが、古典派の作品で他の奏者たちと一線を画すような表現を極めることの難しさを実感しました。もっと勉強を深めてみたいところです。今演奏したいなと思っているのは、ベートーヴェンの後期作品です。リサイタルで取り上げるかどうかは別としても、バッハのゴルトベルク変奏曲のような傑作にも取り組んでみたいですね。
音楽家としての成長を見据えて
亀井聖矢、橋本行秀氏(株式会社イープラス代表取締役会長)
――このたび、イープラスとのエージェント契約を結ばれました。パートナーシップを組む上で決め手とされたのはどんなところですか?
まず一つには、すでに契約をされているアーティストの方々の充実した、目覚ましい活動があります。イープラスのエージェント体制は、音楽家としての成長・将来性という側面を見据え、コンサート活動やコンクール参加についての理解・サポートがあります。僕はまだ若いですし勉強中の身でもありますので、信頼してお任せすべきところはお任せし、自分にとって意味のある活動を続け、キャリアを作る上で力になっていただけると考えました。20年後30年後の明確なビジョンが今あるわけではないですが、段階的にその時々でやれることは変わっていくと思うので、その都度お伝えしながらやっていけたらいいかなと考えています。
――今の時点で、亀井さんが音楽家としてやりたいことは?
もちろんピアニストとしてピアノの演奏活動が軸になりますが、作曲にも力を入れていきたいです。2台ピアノのコンサートでも作品を披露したいと考えていますが、今後はますます自分のコンサートのプログラムに組み込んでいきたいと思っています。また、先日の公演で弾き振り(協奏曲でオーケストラを指揮しながらピアノ独奏も行うこと)に挑戦をしたのですが、指揮の勉強も深めていきたいですね。
2022年5月には浜離宮朝日ホールでのコンサートにて弾き振りに挑戦した
――契約アーティストの皆さんへのインタビューで毎回お伺いしている質問なのですが、音楽家として次世代(と言っても亀井さんご自身もまだお若いですが)の方々にメッセージをお願いします。
音楽でも、音楽以外のことでも、僕は自分の興味を持ったことに対して、好奇心をどんどん膨らませ、動いていくことが大事だと思っています。楽しむことは原動力になり、上達もします。本当に好きだなと思うことを見つけて、そこに向かって進んでいくことを大切にしていただきたいです。
取材・文=飯田有抄