「腹立たしいほど素晴らしい」と絶賛された高橋一生 一人芝居『2020』初日前会見レポート

レポート
舞台
2022.7.7
上田岳弘、高橋一生、白井晃(左から)

上田岳弘、高橋一生、白井晃(左から)

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高橋一生による一人芝居、パルコ・プロデュース20222020(ニーゼロ ニーゼロ)』が2022年7月7日(木)よりPARCO劇場で開幕する。
 
芥川賞作家の上田岳弘の文学に共鳴する高橋一生が、上田に書き下ろしを提案し、白井晃構成・演出のもと生み出された本作。疫病があっという間に世界を覆い、東京オリンピックがなくなったあの年、2020年を起点に、はるか昔の人類の誕生から、はるか先(?)の世界の終わりまでを、高橋一生の声、肉体、動きを通して目撃する衝撃作だ。

初日を前にした6日、初日前会見が行われた。その様子を写真とともにお伝えする。

『2020』のゲネプロの様子

『2020』のゲネプロの様子

ーーまずは一言ご挨拶をお願いします。
 
高橋一生(以下、高橋):抱負はですね、あまり持たないようにしているので、これまで通りということですね。お稽古で1ケ月近く、半分を上田さんと白井さんとの会議に費やしましたが、稽古で積み上げてきたこと、構築してきたものを信じておりますので、楽しくできるんじゃないかな。楽しんでやりたいと思います。
 
上田岳弘(以下、上田):一生さんからも会議というお話がありましたが、稽古に入る前にいろいろな会議をしまして。一人芝居にしようと思ったときに、僕の頭の中から出たものが『2020』というキーワードだったんですね。一人芝居であるがゆえに、3者それぞれがギリギリまで追い込む舞台になっていて……「本当に可能なのか?」と思っていたんですが、成り立っていて、すごいなぁと。僕も客席で観劇するのを楽しみにしております。
 
白井晃(以下、白井):上田さんの文学、この壮大な概念の世界を演劇にするというのは難しい行為だったんですけれど、それを何度も打ち合わせをさせてもらって、出演者である高橋さんとも一緒に議論をし、まとめ、各所のスタッフの強力なクリエイションチームの力で、なかなか刺激的な興味深い作品になったんじゃないかなと思っております。
 
今回一人芝居ということで、高橋一生くんの頑張りというか、踏ん張りはちょっと側で見ていて、腹立たしいぐらい素晴らしい。すごいなと改めて思っております。

白井晃

白井晃

ーー見どころを教えてください。
 

高橋:全編ですね。どこを見て欲しいと言われたら、全部見て欲しいんですけど……観に来ていただいた方は分かると思いますが、被り物をするんですね。なので、その辺りを楽しんでいただけたらいいなと思っております。壮大な出落ちに近いものが起こるし、その出落ちが何パターンかありますから。その辺のビジュアル面を楽しんでください。

ーーお一人でいろいろな性格なものを演じ分けるということで、苦労したところはありますか。
 
高橋:苦労したことはないですよ、全然。みなさんが支えてくださっていたので。昨日通しを初めて劇場でやったんですけど、スタッフさんのチームワークがよくて、楽しくやれています。肉体的には、先ほどお話しした夏バテが重なっていただけで、これといった苦労はなかったですね。

上田岳弘

上田岳弘

ーー上田さんは高橋さんのお芝居をご覧になっていかがでしたか?
 
上田:僕の作品って、ただでさえ難解と言われがちで。しかもお芝居なので、小説と違って、どういう意味なのかと読み返すことができないわけです。稽古の中でちょっと言い方を変えたり、動きで補足したりとか、非常に細かな精度の高いことをされていたので、通しで見た時はびっくりしました。
 
僕はテキスト係というか、文字を書く担当ですが、3万字以上あるんですね。原稿用紙で言ったら、100枚ぐらいなんですよ。それを本当に一人で演じるんだろうかと半信半疑だったんですけど、実際成り立っていて。すごいなと、普通に感動しました。
 
ーー原稿用紙100枚分のセリフを全部覚えられたんですか!?
 
高橋:今言われてびっくりしましたね。それだけ入るんだ、人の脳味噌って。みんな入るんですよ、きっと。やればね。

高橋一生

高橋一生

ーーどうやって覚えたんですか?
 
高橋:それは白井さんとの稽古。白井さんには何度も演出を受けて、俳優として(作品に)出させていただいていて、白井さんがとにかく稽古が好きだというのは感じていました。その中でもピンポイントに僕というものに絞って演出をつけてくださったのは……一番最初の頃にご一緒したときに、何人か出ている中で一人芝居パートみたいなのがあったんですけど、そのときからわりかし僕の真理みたいなものに付き添ってくださったんですよね。
 
自分ではそんなにすごい頭に入っているということではないです。一人芝居って結局ずっと喋っているわけで、会話することによって、セリフが相手の反応で出てくるということが一切ない。僕も最初、これだけ長い本を一人で喋れるのだろうかと思いました。自分の脳の容量なんてメガバイトぐらいしかないし、ワープロぐらいなのでね(笑)。

でも実際に体を動かしていくと、体と一緒に連動している記憶があるんだなと思います。その場所だったり、その明かりだったりで、記憶が喚起される。そういうことがあるんだなと思いながらお芝居をしています。自分では本当にすっごく覚えたよということは、あまりないですね。
 
ロマンスさんが振付としていてくださって、その存在がものすごく強いのかなと思っています。

ーー一人芝居ということで、体力づくりで何か工夫されていることはありますか?
 
高橋:自分は思った以上に塩分をとっていなかったんだなと、はっきり分かりました。汗をすごくかく舞台なんですね。なぜか朝、体が重くて、夏バテ防止のためのタブレットを購入して、食べたら、俄然具合が良くなりました(笑)。僕、今まで夏バテしたことがなかったので……どうか今年の夏はみなさん、自分が思っている以上に塩分を多めにとっていただけるといいんじゃないかなと思います。

白井晃

白井晃

ーー白井さんにおうかがいします。高橋さんについて「腹立たしいほど素晴らしい」とおっしゃっていましたが、どのあたりで感じられるのでしょうか。
 
白井:なかなか本当に難度の高い舞台なんですね。新しくなったこのPARCO劇場で一人で75分間ぶっ通しでやるというのは大変なことなんです。稽古の過程ではサシで稽古をさせていただいて、なかなか大変だったと思うんですけど、舞台稽古の中で、どんどん成果をあげていく姿を見て、羨望なんですかね。それに近いものだと思うんですけど、どんどん良くなるのを見ていて、「なんだ、この俳優は」という。そういう苛立たしさが……。
 
高橋:(客席の中に)演出席があるんです。昨日初めて通しを劇場でやらせていただいて、白井さんはムーブが大きくて、ものすごく視界に入るんですね(笑)。かつ、小さく聞こえるんですよ、「あいつ」とか「一生」という声が。もう気が散ってしょうがない!
 
僕、なんかとんでもないことしているんだろうな、通しが終わったら一悶着あるだろうなと思って。通し後に白井さんが近づいてきて、ちょっと睨んでいるんですよね。「なにかありました?」と聞いたら、「一生、むかつくなぁ」と(笑)。素直に褒めてくれれば良いのに!
 
白井:いや、最大の褒め言葉ですよ! 若い時から何度も一緒に作品を作ってきて、彼の実力は分かっているんですけど、今回一人舞台で全部背負って立つことは大変なことだと思うので、それをやりきっている彼を見て、本当にすごいなという風に思った気持ちを、素直に伝えただけなんですよね。腹立たしくもすごいなと思ったんですよね。

上田岳弘

上田岳弘

ーー会議ではどういうことを詰められたのですか?
 
白井:もともとこのプロジェクトが立ち上がったときは2019年で、このようなパンデミックが起こるとは誰も予想していなかった時から始まっていました。そのときに考えていたことが、このタイトルになっています、2020年を経たことで、我々が今感じたことをいかにして上田さんの文学の中に注入してもらうか。そのことがすごく大きかったです。

上田さんの時間と場所がさまざまに広がっていく世界を、演劇というのは時間芸術ですから、縦のラインに押し込めていくのが非常に難しい作業ではあったかと思います。その辺のことを高橋くんが演じる人物の中にどのようにそれを埋め込んでいくか、どのように演じ分けていくのか。高橋さん、上田さん、振付のロマンスさんも交えてみんなで話し合っていた。

初期の稽古は、ほぼ話し合いという状況でした。それはみんなで世界を共有するにはとても大切な時間だったんですけどね。
 
ーー東京公演以外にも各地を巡ります。何か楽しみにされていることは?

 
高橋:2年経ってもまだこのご時世なので、なかなかいろいろなところに行くという機会はありませんけれど、客席の反応はとても期待していますね。演出席の白井さんみたいにうるさく動いて欲しくはないんですけど(笑)、なるべくみなさんの反応…… 「1人」対「全」なので、とてもダイレクトに分かると思うんです、お客さんが何に焦点を絞って観ていらっしゃるのかが。

その反応が、地域によって違うんじゃないかな。これまでも旅公演をさせていただいていて、そのことは如実に分かっていたんですけど、今回は一人で対峙するような構成のお芝居なので、どういう反応が来るのかなというのは楽しみにしているところです。
 

取材・文・撮影=五月女菜穂

公演情報

パルコ・プロデュース2022『2020』
作:上田岳弘
構成・演出:白井晃
出演:高橋一生
DANCER:橋本ロマンス

公式サイト:https://stage.parco.jp/program/nizeronizero
ハッシュタグ:#舞台ニーゼロニーゼロ
 
【東京公演】
日程:2022年7月7日(木)~7月31日(日)
会場:PARCO劇場
入場料金(全席指定・税込):¥11,000 全席指定グッドプライス¥10,000 ※未就学児入場不可
U-25=¥6,000(観劇時25歳以下対象、要身分証明書(コピー・画像不可、原本のみ有効)、当日指定席券引換/「パルステ!」、ぴあにて前売販売のみの取扱い)
一般発売日:2022年5月14日(土)
お問合せ:パルコステージ 03-3477-5858(時間短縮営業中) https://stage.parco.jp
 
【福岡公演】
日程:2022年8月6日(土)~8月7日(日)
会場:キャナルシティ劇場
入場料金(全席指定・税込):¥10,000 U-25¥5.000(当日座席指定、要身分証明)※未就学児入場不可
お問合せ:ピクニックセンター050-3539-8330(平日12:00~15:00) www.picnic-net.com
 
【京都公演】
日程:2022年8月11日(木・祝)
会場:京都劇場
入場料金(全席指定・税込):S席¥11,500 A席¥10,500 ※未就学児入場不可
お問合せ:キョードーインフォメーション0570-200-888[11:00~16:00/日祝休業]
 
【大阪公演】
日程:2022年8月18日(木)~8月21日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール
入場料金(全席指定・税込):S席¥11,500 A席¥10,500 ※未就学児入場不可
お問合せ:キョードーインフォメーション0570-200-888[11:00~16:00/日祝休業]

配信情報

パルコ・プロデュース2022『2020』ライブ配信
 
■ライブ配信日時:2022年7月21日(木)開場17:15/開演18:00
※途中から視聴した場合はその時点からのライブ配信となり、巻き戻しての再生はできません。
 
■アーカイブ(見逃し)配信:7月24日(日)23:59まで
 
■配信場所:イープラス「Streaming+」
※アーカイブ(見逃し)配信あり。
※一部地域を除く海外も配信を予定しております。
 
<視聴料金>
3,500円(税込)
 
<販売期間>
2022年7月13日(水)10:00~7月24日(日)19:00まで
 
<視聴取扱い>
https://eplus.jp/2020-streaming/       
                                                  
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