3万字のセリフを背負う高橋一生がとにかくすごい~舞台『2020(ニーゼロ ニーゼロ)』観劇レポート

レポート
舞台
2022.7.15
『2020』のゲネプロの様子

『2020』のゲネプロの様子

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高橋一生による一人芝居、パルコ・プロデュース2022『2020(ニーゼロ ニーゼロ)』が2022年7月7日(木)よりPARCO劇場で開幕。そして、7月21日(木)18:00の回が「Streaming+」ほかにて、ライブ配信されることが決定した。

芥川賞作家の上田岳弘の文学に共鳴する高橋一生が、上田に書き下ろしを提案し、白井晃構成・演出のもと生み出された本作。疫病があっという間に世界を覆い、東京オリンピックがなくなったあの年、2020年を起点に、はるか昔の人類の誕生から、はるか先(?)の世界の終わりまでを、高橋一生の声、肉体、動きを通して目撃する衝撃作だ。

6日に行われたゲネプロ(総通し舞台稽古)の様子を写真と共にお伝えする。
 

※以下、ネタバレが含まれますのでご注意ください。

 

『2020』のゲネプロの様子

『2020』のゲネプロの様子


『2020』のゲネプロの様子

『2020』のゲネプロの様子

舞台上には、白いブロック(「これ」と呼ばれている)があちらこちらに積み上げられている。白シャツを着て、マスクをした高橋一生が、上手の花道をふらふらと歩き、舞台へと上がる。「沈黙は金。そんな言葉をご存知ですか? 沈黙は金、雄弁は銀。昔の人はうまくいったものですね」と口火を切り、観客へのプレゼンテーションを始める。

話を聞くと、どうやら高橋が演じている男は、Genius lul-lulという名前で、2730年に生き残った“最後の人間”だという。ただ、彼は何度も生まれ直しているらしく、クロマニョン人だった頃に戻ったり、ナイジェリアの赤ちゃん工場の工場主であるドンゴ・ディオンムになったり、遠い未来の太陽の錬金術師である田山ミシェルになったり……と、ひたすら話を続ける。

『2020』のゲネプロの様子

『2020』のゲネプロの様子


『2020』のゲネプロの様子

『2020』のゲネプロの様子

語られる話の内容は、まとめるなら身の上話ではあるのだが、一人称をさまざまに超えていく。身近な話題だと思っていたら、一気に知的で哲学的な内容に飛ぶ(濃厚接触者の話をしていたと思ったら、石原莞爾の話になって、「許されざる行為」、「大錬金」、「肉の海」とキーワードが散りばめられて……と)。話の振り幅というか、飛距離というか、その破天荒な展開こそ、上田岳弘の世界観なのだと思う。

「2020年を経たことで、我々が今感じたことをいかにして上田さんの文学の中に注入してもらうか。そのことがすごく大きかったです」と初日前会見で、演出の白井晃が明かしているように、いろいろと今の時代の考察や皮肉が散りばめられているのも興味深かった。

『2020』のゲネプロの様子

『2020』のゲネプロの様子


『2020』のゲネプロの様子

『2020』のゲネプロの様子

高橋一生の芝居は圧巻だった。

何しろ、およそ3万字、原稿用紙にして100枚あるセリフを一人で背負っている。彼はセリフを頭に全て入れてから現場に入るという逸話をかつてどこかで聞いたことがあるが、それにしても、である。会話の中から生まれるセリフではなく、自身がひたすらにしゃべらなくては進まないセリフ。しかも一筋縄ではいかない、難解なセリフ。それらをすべて自分のものとして、約80分の芝居として成立させた。

歌やダンス、多少の被り物はあるけれど、ありのままのその身体と声でここまで魅せられたという感動の方が大きい。本当にGenius lul-lulに見えたし、本当に田山ミシェルに見えたし、本当にクロマニョン人に見えたのだもの。つくづく稀有な役者だと思う。

『2020』のゲネプロの様子

『2020』のゲネプロの様子


『2020』のゲネプロの様子

『2020』のゲネプロの様子

上田が描いた世界観を立体的に魅力的に立ち上げた、白井晃の演出。高橋演じるGenius lul-lulが扱うiPadに合わせて、映像が変化したり、無機質な白い「ブロック(これ)」から手品のように、意味ある「ブロック(これ)」が出てきたり、メリハリある音楽と照明だったり。シンプルに美しく、それでいて実験的で驚きがあった。。

確かに難解な舞台である(ブロックはつまり何なのだ? あの橋本ロマンスは何なのだ? と考え出したらキリがない)が、「分からない」という一言で切り捨ててしまうのは惜しすぎる。いつも芝居を見ているときと何か違う見方をしていたのかもしれない。観終わった直後は、脳がかゆかったし、実際、とても興奮していたと思う。

上演時間は約80分(休憩なし)。本公演は7月21日(木)18時からライブ配信も行われ、7月24日(日)23:59までアーカイブ(見逃し)配信される。また海外配信も行われる。ぜひお見逃しなく!

 取材・文・撮影=五月女菜穂

配信情報

パルコ・プロデュース2022『2020』ライブ配信
 
■ライブ配信日時:2022年7月21日(木)開場17:15/開演18:00
※途中から視聴した場合はその時点からのライブ配信となり、巻き戻しての再生はできません。
 
■アーカイブ(見逃し)配信:7月24日(日)23:59まで
 
■配信場所:イープラス「Streaming+」
※アーカイブ(見逃し)配信あり。
※一部地域を除く海外も配信を予定しております。
 
<視聴料金>
3,500円(税込)
 
<販売期間>
2022年7月13日(水)10:00~7月24日(日)19:00まで
 
<視聴取扱い>
https://eplus.jp/2020-streaming/       
                                                  

公演情報

パルコ・プロデュース2022『2020』
作:上田岳弘
構成・演出:白井晃
出演:高橋一生
DANCER:橋本ロマンス

公式サイト:https://stage.parco.jp/program/nizeronizero
ハッシュタグ:#舞台ニーゼロニーゼロ
 
【東京公演】
日程:2022年7月7日(木)~7月31日(日)
会場:PARCO劇場
入場料金(全席指定・税込):¥11,000 全席指定グッドプライス¥10,000 ※未就学児入場不可
U-25=¥6,000(観劇時25歳以下対象、要身分証明書(コピー・画像不可、原本のみ有効)、当日指定席券引換/「パルステ!」、ぴあにて前売販売のみの取扱い)
一般発売日:2022年5月14日(土)
お問合せ:パルコステージ 03-3477-5858(時間短縮営業中) https://stage.parco.jp
 
【福岡公演】
日程:2022年8月6日(土)~8月7日(日)
会場:キャナルシティ劇場
入場料金(全席指定・税込):¥10,000 U-25¥5.000(当日座席指定、要身分証明)※未就学児入場不可
お問合せ:ピクニックセンター050-3539-8330(平日12:00~15:00) www.picnic-net.com
 
【京都公演】
日程:2022年8月11日(木・祝)
会場:京都劇場
入場料金(全席指定・税込):S席¥11,500 A席¥10,500 ※未就学児入場不可
お問合せ:キョードーインフォメーション0570-200-888[11:00~16:00/日祝休業]
 
【大阪公演】
日程:2022年8月18日(木)~8月21日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール
入場料金(全席指定・税込):S席¥11,500 A席¥10,500 ※未就学児入場不可
お問合せ:キョードーインフォメーション0570-200-888[11:00~16:00/日祝休業]
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