演出家・振付師としても活動 奥山寛に聞く、役者と演出家それぞれの活動の根底にある想い /『ミュージカル・リレイヤーズ』file.12
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「僕の演出スタイルは“とにかく細かい”と言われています(笑)」
――子役時代を経て、いざ大人として舞台のお仕事を始めたのはいつ頃ですか?
商業的な作品で言うと、ジャニーズ事務所主催で少年隊が出演していらっしゃった『WEST SIDE STORY』ですね。大人として改めてデビューしたといえる作品です。確か19、20歳くらいだったと思います。
――奥山さんの直近の出演作を振り返ってみると、特に東宝版『エリザベート』に長く出演されていますね。
『エリザベート』に出演し始めてから、今年で12年目になります。東宝版の初演時から観続けていて、ずっと出たかった作品でもあるんです。初めてオーディションで受かったときは「なんて幸せなんだろう」と思いましたし、長らく出演させていただいて感謝しています。新演出になった2015年からはダンスキャプテンも務めているのですが、「常に一定のレベルをキープして作品のクオリティを下げないように」ということを念頭に取り組んでいます。作品に対する責任感がさらに増していますね。
――役者として作品に関わるときと演出家として作品に関わるとき、思考は全く違うものになるかと思うのですが、実際のところどうですか?
全くの別物ですね! 子どもの頃から役者として活動をしてきているので、演じるということは生きる上で欠かせないものになっています。役者=生活の一部という感じです。
演出のモードになるとありとあらゆるものを客観的に見なくてはいけません。客席にお客様が入ったらどう見えるのかという視点も持たなければいけないので、まるで頭の中に別の人間がいるような感覚になります。ただ、役者と演出家のどちらの立場でも、作品を通して毎回いろんな学びがありますね。
――ご自身が出演されているときに、演出家目線で客観的に作品を観ることはありますか?
いや、それは絶対にしないですね。僕が役者として一番大切にしていることがあります。それは、演出家と振付家の言ったことが100%絶対だということ。だから、役者のときは自分が演出家目線になることはないですし、常にアンテナを張り巡らせて稽古に挑んでいます。
――なるほど。では演出家として大切にされていることは?
……いっぱいあります(笑)。その中でも特に大切にしていることは“言葉を届けること”ですかね。台詞そのものというよりは、言葉のニュアンスや裏の意味であったり、時には一つの言葉にいろんな意味が詰め込まれていたり。それらをお客様にどう感じ取っていただくか、かなり細かいところまで意識しています。なので稽古場ではいつも「言葉! 言葉! 言葉!」と口うるさく言っています(笑)。
――台本を読む際に意識されていることはありますか?
当たり前かもしれませんが、一言一句ちゃんと読むことですね。例えば「〜だよ」と「〜です」では、それだけで意味が違ってきます。台詞の語尾や句読点でさえキャラクターの性格が表れていると思うんです。台本に書かれている一言一句から、このキャラクターはどういう感情でどういう性格でこの台詞になっているのか、ということを読み解くのが一番大切だと考えています。
――そんな奥山さんの演出スタイルはどのようなものなのでしょうか?
僕の演出スタイルは“とにかく細かい”と言われています(笑)。何が細かいかというと、台詞一つひとつに動きをつけるんですよ。例えば「この台詞で三歩歩いて、台詞を喋ってから次の台詞で右を向いて」とか。そういう細かい台詞と動きを役者さんに提示して渡すんです。そのあとに、どういう意味を持つ動きなのかを僕と役者さんで答え合わせしていきます。このキャラクターはこういう性格だからここで歩いて、その瞬間にこう思っているから右を向いたんだよ、と。演劇のワークショップみたいな感じですね。
――その細かい指示を役者さん一人ひとりに対して行うんですよね? 頭の中は一体どうなっているんですか?(笑)
いや〜本当に大変ですよ、生みの苦しみっていうんでしょうか。毎回大変なんです(笑)。まず本読みの段階で役者さんの声を聞いて「この人はこうやって演じたいんだろうな」というイメージをもらって、そこから動きをつけていきます。立ち稽古の段階で、僕の頭の中にはイメージができあがっていますね。
――奥山さんは演出のみならず振付もされていますよね。
はい。ダンスもステージングも、視界に見える全ての動きをつけているのは僕です。歌詞を聞いてからその役の感情を読み取り、曲のニュアンスも意識しつつ、それらをヒントに振り付けしていきます。
――これまで、『蜘蛛女のキス』(2011年)や『KID VICTORY』(2019年、2021年)を演出されていますが、演出する作品を選ぶときに意識されてきたことはありますか?
これまで演出してきた作品は実に様々です。でも、基本的には「今の日本の世の中と似ているな」と思える題材を選んでいます。例えば社会性や政治について。作品の時代・国・文化は全然違ったとしても、今僕たちが生きている世の中に共通するものがあると思える作品を選んでいますね。
――ちなみに役者でもなく演出家でもなく、観客として観るならどんな作品が好きですか?
全部取っ払って言うと、こう見えてめちゃくちゃ明るいミュージカルが好きです(笑)。重い作品が好きそうと思われがちなのですが(笑)、『ムーラン・ルージュ』『キャッツ』といったショー要素のある作品が好きですね。重い題材を扱う作品ももちろん好きで観に行くんですけれど、どうしても観ながら裏を考えちゃうんですよね。だからその反動で何も考えずに楽しめる作品が好きなのかもしれません(笑)。
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