赤堀雅秋インタビュー~舞台『パラダイス』主演の丸山隆平に求めるのは「いかに生々しい登場人物であるか」

2022.7.22
インタビュー
舞台

問題のなさそうな多数派の人たちの中にこそ闇が潜んでいる

――今作で詐欺グループを題材に選ばれたのにはどのような思いがあるのでしょうか。

自分が知らないだけかもしれませんが、これだけ昭和の頃と犯罪の形態なんかが著しく変わってきているのは、抽象的な物言いですけど何に幸せを見出すとか、どういう風に営むべきか、といった人間の根底にあるものが行き詰って膿のように出てきているような感覚がありまして、その象徴として詐欺グループを題材にしたら、今という世の中を描きやすいんじゃないかなということですね。

――被害に遭う老人など、高齢化社会といった現状も反映されているのかなと思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。

僕らが子どもの頃はわかりやすく経済的にも成長期と言われる時代で、バブル景気などもあって、車とか高級マンションといった物質的なものに夢を抱いて、そこをモチベ―ションに頑張るところがあったと思います。今の世の中は、何をモチベーションに生きて行ったらいいのかっていうことが判然としないというか、すごく心もとない感じで生活している人が多いと思うんです。そういう思いを抱えて刹那的に生きるしかない人、詐欺グループの人間もそうだし、例えば万引きする高齢者が増えていると言われていますが、それも一瞬のスリルを求めたり、何か承認欲求に駆り立てられたりして、犯罪だとわかっていても、そういうことをしないと生きている実感が保てない世の中なのかな、と思うんですよね。

――赤堀さんの作品では、犯罪などの悪とされる部分を描かれることが多いと思うのですが、これは悪人だけの話ではなくて、悪とは縁遠く生きているつもりの自分のすぐ隣にそういうものが潜んでいるかもしれないんだよ、ということに気づかされます。

例えばいわゆる“不良”と言われている人たちは、わかりやすく何かが漏れ出しているじゃないですか。だから意外と対処しやすいような気がするんですけど、逆にそうやって表出できない人たち、一見問題のなさそうないわゆる多数派の人たちの中にこそもっと深刻な闇みたいなものが潜んでいるはずなんですよね。だから作品を作るときには、わかりやすい悪い人たちの何かを見せたいということじゃなくて、まだ表面化していない人たちの内面でうごめいているものをどういうふうに感じさせたいか、ということは考えていますね。

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