尾上松緑主演で講談の名作『荒川十太夫』を『十月大歌舞伎』にて上演 神田松鯉・神田伯山による特撰講談会も開催
歌舞伎座『荒川十太夫』荒川十太夫=尾上松緑 /(C)松竹
2022年10月、歌舞伎座『十月大歌舞伎』にて、講談師で人間国宝の神田松鯉の名作口演『荒川十太夫』をもとにした新作歌舞伎を、尾上松緑の主演により上演することが決定した。
寄席や講談会に通うなど講談好きとして知られる尾上松緑は、出番前の楽屋で神田伯山の講談を聴いて気持ちを盛り上げているというエピソードもあり、松緑と伯山は互いの芝居や講談に通うなどその交流でも知られる。講談『荒川十太夫』は、講談の中でも赤穂浪士の活躍を描いた「赤穂義士伝」のひとつで、四十七士に関わる人物に焦点を当てた外伝物として松鯉が得意とする講談の人気作。
(右より)神田松鯉、神田伯山 /(C)松竹
今回、高田馬場の決闘で有名な赤穂浪士のひとり、堀部安兵衛の切腹の際に介錯をつとめた下級武士、荒川十太夫の苦悩と覚悟を描いた講談の名作が新作歌舞伎となって、10月の歌舞伎座に登場する。
江戸時代、元禄年間に起きた「赤穂事件」は、歌舞伎では三大名作のひとつ『仮名手本忠臣蔵』でよく知られる。また、講談では「赤穂義士伝」として多くの話が残されている。
元禄14年3月14日、江戸城松之廊下で赤穂藩主の浅野内匠頭が、吉良上野之介に刃傷に及び、切腹。その遺恨を晴らすべく大石内蔵助を筆頭に赤穂浪士47名が刃傷のあった翌年の暮れ、元禄15年12月14日に吉良邸に討ち入り、本懐を遂げる。浅野内匠頭が眠る泉岳寺の墓前へ報告を終えた四十七士は、松平家など四つの大名家にお預けとなり、討ち入り翌年の元禄16年2月4日、幕府の命によりお預かりの大名家にて切腹。その後、赤穂浪士は主君の浅野内匠頭と同じ泉岳寺に埋葬された。
『荒川十太夫』では、討ち入り後、松平家にお預けとなった堀部安兵衛の介錯をした下級武士、荒川十太夫が咄嗟についた嘘と苦悩、そして武士としての覚悟が情感豊かに描き出される。
今回の歌舞伎座での上演にあたり、主演の荒川十太夫を尾上松緑が勤め、演出には平成20年に松緑が出演した現代劇『ハリジャン』の作・演出をつとめた劇団「InnocentSphere」主宰、脚本家・演出家の西森英行、脚本を歌舞伎の狂言作者である竹柴潤一が担う。講談の名作『荒川十太夫』が新作歌舞伎として誕生する今回、講談から生まれた新たな作品に期待が高まる。
尾上松緑 コメント
尾上松緑
十月の歌舞伎座、十月大歌舞伎に於いて講談の名作「赤穂義士外伝・荒川十太夫」を上演させて頂ける運びと相成りました
普段より公私共に御世話になっている神田松鯉先生、神田伯山先生も「講談は宝の山だ」と仰っしゃっている通り、講談には歌舞伎として上演してもお客様の心に響く作品が沢山御座居ます
講談を好む私は以前から、そう云った作品を是非、上演したいと願っておりましたが、今回、松鯉、伯山両先生の御快諾と、松竹株式会社の御賛同を頂き「荒川十太夫」を歌舞伎座で掛ける機会を得られました事、心から嬉しく思っています
また、演出には私の長年の盟友でもある西森英行さんが初めて歌舞伎の演出に力を貸して下さる事も感謝しています
私の気持ちの中では講談と歌舞伎も親戚関係に近いと考えております
今回に限らず、今後も講談の名作を歌舞伎に移植して上演出来ればとも願っています
先ずは十月の「赤穂義士外伝・荒川十太夫」、我々も一丸となってお客様の心に残り、再演を希望される作品になる様に全力を尽くしますので、応援を宜しくお願い致します
さらに、『荒川十太夫』の上演を記念して、9月28日(水)には歌舞伎座で、神田松鯉と神田伯山による特撰講談会の開催が決定した。
神田松鯉の口演をもとに新作歌舞伎として上演される講談『荒川十太夫』。10月の歌舞伎座公演を前に、昼夜にわたり『神田松鯉・神田伯山 歌舞伎座特撰講談会』を開催する。当日は、神田松鯉80歳の誕生日でもあり、「神田松鯉傘寿を祝って」と題された特別な会となる。
「赤穂義士伝」「赤穂義士外伝」より一題ずつ、神田伯山による『安兵衛駆け付け~婿入り』と神田松鯉による『荒川十太夫』。さらにこの二題の間には、神田松鯉、神田伯山の二人に、特別ゲストとして尾上松緑を招いての「特別鼎談」を予定している。
神田松鯉 コメント
現伯山の発案で歌舞伎座での親子会が実現する事になった。昭和四十二年から四十三年にかけて、ごく短期間だが二代目中村歌門先生の弟子だった私にとっては懐かしい場所である。親子会は九月二十八日で昼夜公演。なんと、その日は私の満八十才の誕生日。関係者の粋な計らいに胸が熱くなった。当日の私の読み物は、相手を思い遣る優しさが胸を打つ赤穂義士外伝『荒川十太夫』。更に嬉しいのは、その『荒川十太夫』が当代尾上松緑丈の主役で歌舞伎化され、十月の歌舞伎座で公演される事になった。自分が古い速記本の中から発掘して持ちネタにした読み物だけに嬉しい。松緑丈は九月二十八日の親子会にもゲスト出演して下さる。感謝するのみである。
神田伯山 コメント
「講談の公演を歌舞伎座でしたい」というのは、二ツ目時代から願っていたことなので光栄で嬉しいです。
しかも師匠松鯉との親子会。さらには公演日の9月28日は、師匠の誕生日で80歳の傘寿です。師匠にとっても私にとっても、記念すべき講談会になりそうです。
また、私が敬愛する松緑さんを交えての鼎談まであります。10月には講談の台本をもとにした『荒川十太夫』を松緑さんが歌舞伎化されます。歌舞伎の方も非常に楽しみです。昔はあらゆる日本文化のジャンルが切磋琢磨して影響し、各々の伝統を繋いできました。このコロナ禍において、各々の伝統芸能はさらに連帯を強めているような気がします。「こちらのジャンルは大変ですが、そちらはどうですか」というような。「辛い時期にあるからこそ、お客様により喜んで頂きたい」多くのエンターテイメントの願いです。
私は学生時代、そしてこの2年ほど集中的に歌舞伎座に行き、改めて芝居の面白さを噛み締めています。
松緑さんはじめ、多くの役者さんやスタッフの方々の奮闘に、胸をうたれます。色々な方が繋いできたお陰で、今日がある大事な歌舞伎座。
1日だけ松鯉・伯山親子会でお付き合い頂ければ幸いです。
(右より)神田松鯉、神田伯山 /(C)松竹
公演情報
■日程:2022(令和4)年10月
■会場:歌舞伎座
■演目:『荒川十太夫』ほか
■一般前売:9月14日(水)午前10時より電話予約・WEB受付開始
ホン松竹 0570-000-489(午前10時~午後5時)/Web松竹(24時間受付)
公演情報
『神田松鯉・神田伯山 歌舞伎座特撰講談会 ~神田松鯉傘寿を祝って』
■日程:2022(令和4)年9月28日(水)昼の部14時開演/夜の部18時開演
■会場:歌舞伎座
■演題:一、開口一番
一、赤穂義士伝より 安兵衛駆け付け~婿入り 神田伯山
一、特別鼎談 神田松鯉 神田伯山 特別ゲスト 尾上松緑
一、赤穂義士外伝より 荒川十太夫 神田松鯉
■一般前売:8月21日(日)午前10時より電話予約・WEB受付開始
ホン松竹 0570-000-489(午前10時~午後5時)/Web松竹(24時間受付)