新国立劇場、マリウシュ・トレリンスキ演出&大野和士指揮で時代を問う新プロダクションを発信 オペラ『ボリス・ゴドゥノフ』を上演
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(左から)指揮:大野和士、演出:マリウシュ・トレリンスキ
2022年11月15日(火)~11月26日(土)新国立劇場 オペラパレスにて、2022/2023シーズンオペラ『ボリス・ゴドゥノフ』が上演される。
本作はモデスト・ムソルグスキーが完成させた唯一のオペラで、ポーランド国立歌劇場との共同制作、同劇場芸術監督マリウシュ・トレリンスキによる新演出で上演する。
『ボリス・ゴドゥノフ』はロシア動乱時代の皇帝ボリス・ゴドゥノフの戴冠から死までを描くプーシキンの史劇を原作とし、有力者たちの策謀と民衆の叫び、そしてボリスの苦悩がシェイクスピア史劇のように展開する悲劇。ムソルグスキーの音楽は近代性に満ち、ロシア民謡やロシア正教の教会音楽に基づいた斬新な和声が用いられ、ロシア国民音楽の金字塔とも称されている。民衆の合唱や人物のモノローグのコントラストも鮮やかで、緊張感に満ちた硬質な音楽とドラマティックな展開が凝縮されている。
演出を務めるトレリンスキは、優れたドキュメンタリーで国際的に評価されてきた映画監督出身。オペラの古典的、本質的な美しさを現代的な解釈と美的感覚で引き出し、ベルリン、パリ、ブリュッセル、ロサンゼルス、サンクトペテルブルクなど世界各地で目覚ましい活躍をしている演出家だ。特に、メトロポリタン歌劇場の『イオランタ/青ひげ公の城』『トリスタンとイゾルデ』はライブビューイングで世界へ発信され、迫力ある映像を駆使して人物の内面を掘り下げる手法でトレリンスキの名前を知らしめた。
今回、大野和士芸術監督とのタッグは、トレリンスキがインターナショナル・オペラ・アワード最優秀演出家賞に輝いたプロコフィエフ作曲『炎の天使』(2018年)以来。トレリンスキは大野和士のロシア音楽へのアプローチを「感傷や悲哀に流されない強固で知的な構築」と絶賛し、『ボリス・ゴドゥノフ』を共同で準備してきた。オペラ界最先端の黄金コンビにより、本作を人間ボリス・ゴドゥノフの物語、今日の世界を覆う不安や父と子の絆とコンプレックスを描く大きな物語として、圧巻の今日的ドラマへ変貌させていく。なお、『ボリス・ゴドゥノフ』には複数の改訂版があるが、今回の上演では、1869年の原典版と1872年の改訂版を折衷して上演する。
そして、本作は上演に大人数を要し、日本で制作されることは極めて稀で、原語(ロシア語)上演、演出付きで全曲が制作・上演されるのは初めてのこととなる。『エウゲニ・オネーギン』『夜鳴きうぐいす/イオランタ』に続く、大野和士芸術監督の新国立劇場着任以来3作目となるロシア・オペラ上演に向け、実力派キャストを内外から集め、万全の態勢でおくる。
『ボリス・ゴドゥノフ』出演者
タイトルロールには昨年の『ニュルンベルクのマイスタージンガー』ポーグナーで新国立劇場へ登場、要となってプロダクションを支えたベテランのバス、ギド・イェンティンスを招聘。シュイスキー公にはバイロイト音楽祭の常連歌手で来日も多いテノール、特にキャラクターテノールとして世界的に評価されるアーノルド・ベズイエンが務める。ピーメンのゴデルジ・ジャネリーゼは、破格の美声を持つ若手バス歌手。新国立劇場初登場を飾るテノールの工藤和真、そして清水華澄、九嶋香奈枝、小泉詠子、金子美香と贅沢な女声陣、秋谷直之、河野鉄平ら実力派が勢揃いするキャストに期待しよう。
【プロローグ】
戴冠式を前に群衆が集まっている。ゴドゥノフは最高位の僧ピーメンと緊張関係にあるが、儀礼的にその指輪に口づけをする。
幼いドミトリー皇子の死の幻影に慄くゴドゥノフだが、戴冠式の彼の演説は人々の心を掴む。
【第1幕】
6年後。ピーメンは僧グリゴリーに、自分こそ現皇帝に殺害されたドミトリーの生まれ変わりと信じ込ませていた。宮殿へ向かうグリゴリーは二人の僧と共に宿屋に立ち寄る。追手が到着するが、僧たちに惨殺される。
【第2幕】
ゴドゥノフは数年の支配に疲れ切っている。娘クセニアは婚約者の死を悼み、息子フョードルは、将来の自分の治世の展望を話して、
父の涙を誘う。ゴドゥノフの臣下シュイスキーは、皇帝の弱みに付け込むことを思い立ち、ゴドゥノフにウグリッチで目撃したことを克明に語り聞かせる。彼の地での行為を思い起こすゴドゥノフの前に、死んだドミトリーの天使のような姿の幻影が現れる。宮殿に迫るドミトリーの詐称者は、復讐の天使なのだろうか。
【第3幕】
ゴドゥノフはまたも悪夢を見る。ウグリッチから来た子供たちがゴドゥノフを取り囲む。フョードルが憎しみに満ちた目で父を見る。父の罪を非難しているのだ。フョードルは高熱で朦朧とし、「ゴドゥノフがドミトリーを殺害した」という聖愚者による糾弾を繰り返している。無秩序状態の議会へゴドゥノフが登場。シュイスキーは狂乱寸前の皇帝を嘲笑う。ピーメンが人々の病を癒すという亡きドミトリーの幽霊の話をし、ゴドゥノフを挑発する。ゴドゥノフは苦しみながら己の罪を告白する。そこへドミトリーの名を語る詐称者グリゴリーが登場、議会は混乱に陥る。死を悟ったゴドゥノフはフョードルを呼び、お前がすぐ支配者になるだろうと力づける。
【フィナーレ】
集団の暴動が連鎖する中、ドミトリーの詐称者は自らが新たな皇帝であることを宣言する。
*本あらすじは演出に準拠しています
公演情報
令和4年度文化庁芸術祭協賛公演
新国立劇場 開場25周年記念公演
モデスト・ムソルグスキー
『ボリス・ゴドゥノフ<新制作>』
Boris Godunov / Modest Mussorgsky
プロローグ付き全4幕〈ロシア語上演/日本語及び英語字幕付〉
会場:新国立劇場 オペラパレス
予定上演時間:約2時間45分(休憩含む)
【指揮】大野和士
【演出】マリウシュ・トレリンスキ
【美術】ボリス・クドルチカ
【衣裳】ヴォイチェフ・ジエジッツ
【照明】マルク・ハインツ
【映像】バルテック・マシス
【ドラマトゥルク】マルチン・チェコ
【振 付】マチコ・プルサク
【ヘアメイクデザイン】ヴァルデマル・ポクロムスキ
【ボリス・ゴドゥノフ】ギド・イェンティンス
【フョードル】小泉詠子
【クセニア】九嶋香奈枝
【乳母】金子美香
【ヴァシリー・シュイスキー公】アーノルド・ベズイエン
【アンドレイ・シチェルカーロフ】秋谷直之
【ピーメン】ゴデルジ・ジャネリーゼ
【グリゴリー・オトレピエフ(偽ドミトリー)】工藤和真
【ヴァルラーム】河野鉄平
【ミサイール】青地英幸
【女主人】清水華澄
【聖愚者の声】清水徹太郎
【ニキーティチ/役人】駒田敏章
【ミチューハ】大塚博章
【侍従】濱松孝行
※本プロダクションでは、聖愚者は歌唱のみの出演となります。
【管弦楽】東京都交響楽団
【共同制作】ポーランド国立歌劇場
Co-production with Polish National Opera
アトレ会員先行販売期間:2022年8月21日(日)10:00~24日(水)
新国メンバーズ先行販売期間:2022年8月22日(月)10:00~24日(水)
一般発売日:2022年9月3日(土)10:00~
新国立劇場WEBボックスオフィス http://nntt.pia.jp/