-真天地開闢集団-ジグザグの「禊」とは? 初の武道館公演に挑むバンドの魅力をメンバーの言葉と共に紐解く

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2022.8.25
-真天地開闢集団-ジグザグ

-真天地開闢集団-ジグザグ

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強固な世界観と優れた音楽性を併せ持ったバンドとして、多数のリスナーから熱い支持を得ている-真天地開闢集団-ジグザグ。そんな彼らはライブバンドとしてのポテンシャルも非常に高い。-真天地開闢集団-ジグザグの禊(ライブ)を楽しみにしている人が多いことは、今年11月15日に初の日本武道館公演の開催が決まったことからもうかがえる。事実、彼らのライブは見どころ満載で、何度も観たくなる病みつき感を湛えている。

-真天地開闢集団-ジグザグのライブの魅力として最初に挙げられるのは楽曲の良さだ。キャッチーなメロディーを押し出したうえで静と動の対比や意表を突く場面転換、効果的な転調といった豊富なアイディアを活かして独自の魅力を放つ楽曲に仕上げる手腕は実に見事。親しみやすさと熱心な音楽フリークをも唸らせるマニアックな面を破綻することなく両立できることは、-真天地開闢集団-ジグザグの大きな強みといえる。

 

 

 

楽曲の幅広さもポイントで、「其れでも花よ、咲け」「さくらさくら」「卒業」といったエモーショナルなナンバーを筆頭に、リスナーの気持ちを引き上げるアッパーな「あっぱれ珍道中」や「顔が好き」、ハードな「Requiem」「メイドカフェに行きたくて」「復讐は正義」、胸に染みる「忘却の彼方」「傷と嘘」といったスローチューン等々、枠に捉われることのない柔軟性が光っている。

さらに、楽曲をオシャレに仕上げることに長けていることも注目といえる。メロディアスなナンバーは勿論、ハードチューンも洗練感を纏っているのは彼らの特色で、それも-真天地開闢集団-ジグザグが多くのリスナーを魅了している要因であることは間違いない。また、彼らの楽曲のメロディーが非常にキャッチーなのはメロディー自体の良質さに加えて、よりメロディーが際立つアレンジ力を備えているからこそといえる。

命 -mikoto- /唄(ボーカル)

命 -mikoto- /唄(ボーカル)

様々なタイプの楽曲を提示するアーティストは「なにをしたいのか分からない」という批判を受ける危険性をはらんでいるが、-真天地開闢集団-ジグザグの場合はその心配はない。彼らの楽曲はどんな路線のものでも完成度が高く、説得力に満ちている。音楽性の幅広さが散漫さにつながることなく、世界観の深さを生むパターンの好例といえるだろう。

その結果、-真天地開闢集団-ジグザグのライブは多彩かつ良質な楽曲で参拝者(オーディエンス)のいろいろな感情を揺り動かし、最後にカタルシスを与えるという素晴らしいものになっている。

 

また、メンバー3人が楽器を持たずにダンスする「拙者忍者、猫忍者。~木天蓼三毛蔵と町娘おりん~」や「きちゅねのよめいり」といった超絶ポップチューンを披露することも見逃せない。こういったナンバーは初めてライブに来て乗り方がよくわからない人や、なんとなくノリそびれてしまった人などを巻き込む絶大なパワーを放つ。-真天地開闢集団-ジグザグのライブのエンターテメント性の高さを実感すると同時に、彼らの奥深さを感じずにいられない。

良質な楽曲を作ることができてもライブでそれを再現する力量がないと困ったことになってしまうが、-真天地開闢集団-ジグザグは演奏面も秀でている。安定したピッチや広い声域、優れた表現力などが光る命のボーカル。それぞれの楽曲に合わせてソリッドなリフワークからしなやかなグルーブまで、フレキシブルにカバーする龍矢のベース。パワフル&テクニカルなドラミングを軸としながら“剛と柔”を巧みに使い分ける影丸のドラム。また、命が曲によってはギターを手にして、高度なテクニックと歌心を併せ持ったギターソロを余裕でこなすことなども観どころといえる。彼らは3人揃ってプレイヤーとしてのスキルが高く、演奏面でも死角がない。

龍矢 -ryuya- /低音弦(ベース)

龍矢 -ryuya- /低音弦(ベース)

彼らのプレイの魅力について話したいことは多々あるが、一つだけ書いておこう。龍矢は元々は-真天地開闢集団-ジグザグでギターを弾いていたが、2019年1月にベーシストが脱退したことを受けて、ベースに転向したという少し変わった経歴の持ち主だ。つまり、ベーシストとしてのキャリアはまだ3年半ほどということになるが、龍矢はそれを微塵も感じさせない。ギタリストだった頃からリズムを重視したプレイヤーだったということはあるにせよ、ベースに転向してからの彼が相当努力したことは想像に難くない。龍矢の意識の高さを感じると共に、-真天地開闢集団-ジグザグがいかにミュージシャンシップを重視しているかがうかがえる。

3人がプレイヤーとして優れていることに加えて、ハイレベルなアンサンブルを誇っているのもさすがの一言。影丸が紡ぐタイトなリズムを核に、常に“ビシッ!”と決まっている-真天地開闢集団-ジグザグのサウンドはライブに於いても心地好さに溢れている。

影丸 -kagemaru-/太鼓(ドラム)

影丸 -kagemaru-/太鼓(ドラム)

最後になってしまったが、メンバー3名のキャラクターも-真天地開闢集団-ジグザグのライブの大きな魅力なのは言うまでもない。伝道師を思わせるシックな衣裳を身に纏い、決して目を見せることがないというミステリアスなオーラとフランクなMCのコントラストが魅力的な命。端正なルックスと荒々しいロック感を併せ持った個性が最高にカッコいい龍矢。引き締まった表情でドラミングを展開しつつ内面の熱さや明るさなどがライブの随所でうかがえる影丸。タイプの異なる3人が一つになることで-真天地開闢集団-ジグザグならではのケミストリーが生まれることが印象的だ。

どんなバンドであれメンバー全員が同等に並び立っているバンドは魅力的だし、中でも3ピースバンドの場合それは絶対的な必要条件といえる。メンバー3人が互角に渡り合っている状態でなければ、3ピースバンドは真価を発揮することができない。その点でも-真天地開闢集団-ジグザグは全く問題がなく、彼らのライブでは“鉄壁のトライアングル”という言葉が似つかわしい強固なバンド感を味わえる。さらに、メンバー全員がライブを通して織りなす、華やかかつフィジカルなステージングにも目を奪われずにいられない。

強い存在感を発する3名がステージに立ち、多彩な楽曲と上質なサウンドで様々な情景を描いていく-真天地開闢集団-ジグザグのライブは、完全なる非日常の世界といえる。そして、どこかシネマライクな味わいがあって、決して見飽きることがない。彼らのライブはそれこそ曲を全く知らずに観ても楽しめるので、-真天地開闢集団-ジグザグに興味を持ったリスナーは、まずはライブに足を運んでみるのもいいと思う。

そんな彼らが11月15日の日本武道館でどんな空間を創出するのか本当に楽しみだ。


文=村上孝之

>>次のページでは、ライブを「禊」と呼ぶ理由、「禊」の前のルーティン、日本武道館にまつわる思い出など、メンバーのコメントをお届けします。

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