平野綾と姉妹音楽家の林はるか&そよか、コラボ公演『音楽に恋して』の意気込みを語る「その瞬間でしか出せないものを表現」
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『チェロ&ピアノ&ヴォーカル『はるかそよかの音楽に恋してmeets平野綾』~クラシックからポップスまで~』
姉妹音楽家の林はるか(チェロ)、林そよか(ピアノ)が、ゲストボーカルを迎えて開催するクラシックコンサート『はるかそよかの音楽に恋して』。2月にひらかれた第1弾は元宝塚歌劇団月組トップスターの龍真咲とコラボレーションしたが、その第2弾は女優、声優、歌手としてマルチな活躍を見せる平野綾が登場。『はるかそよかの音楽に恋してmeets平野綾』と題し、11月23日(水・祝)に大阪のサンケイホールブリーゼにて公演をおこなう。平野が今もっとも歌いたい曲や誰もが知る名曲などが奏でられるほか、はるか、そよかによる「チェロとピアノで聴きたいこの曲!」のコーナーなど、2部構成の同公演。そこで今回は、平野、はるか、そよか、そして司会をつとめるカンテレの関純子アナウンサーによる座談会を実施。同公演の見どころや、「カメレオン女優」の異名をとる平野の背景などを語ってもらった。
左から平野綾、林はるか、そよか、関純子
●林そよか「綾さんのおもしろいところは、本性が分からないところ」
平野:前回の龍真咲さんとの公演を鑑賞させていただいたのですが、「クラシックにはこんなおもしろさがあるんだ」といろいろ気づかされました。はるかさん、そよかさんのキャラクターも魅力的だし、「もしもこの作曲家が演奏したら……」という話も興味深かったです。「こんなに楽しいクラシックコンサートがあるんだ」と、すごく新鮮でした。
はるか:「クラシックはどういうふうに聴いたら良いのか分からない」という方が多いですよね。私たちは、「クラシックにはこんなに良い曲がたくさんあるのに、どうやったらそのことを伝えられるんだろう」と日々、考えているんです。前回の龍真咲さんとの公演も、そういう気持ちを詰めこみました。
そよか:私も、何か新しい形でクラシックの素晴らしさを伝えたいなと思っていて……。だから龍さんとの公演は自由度を高くして、できるだけ多くの方に興味を持ってもらえる内容にしました。
関:クラシックコンサートは演奏が美しすぎて、ついついウトウトしちゃうこともあるんですけど、『はるかそよか』は絶対に眠くなりませんよね。それはやっぱり、はるかさん、そよかさんのキャラクターの強さがあると思うんです。今回はそこに綾さんが加わり、最強の布陣になるのではないでしょうか。
そよか:綾さんのおもしろいところは、本性が分からないところ。カメレオン女優と呼ばれるのも納得です。何百、何千のキャラクターになりきれるし、いろんな歌を聴いても「本当にひとりの方が歌っているんですか」というくらい、どれも違う。そういう綾さんがボーカルで参加してくださることで、プログラムの幅が広がりそうですし、いろんな世界に観客のみなさんをワープさせてくれるはず。
平野:自分は役者なので、すごく役に感情移入して歌うんです。だから毎回違って見えるのかも。ミュージカルなど役ありきで歌うときはもちろんのこと、そうではない自分のコンサートでも、「もしこの曲で役を演じるなら、どういうふうにしよう」と考えます。歌うときはできるだけお芝居を意識していて、歌声を一言でも発したら、その物語の風景が広がるようなアプローチをするよう心掛けています。
●林はるか「God Knows...」のギターの旋律をチェロで表現
林はるか
関:そんななか、今回のセットリストでまず注目は、綾さんの代表曲でもある「God Knows...」が入っていることですね。
はるか:すごくカッコ良い曲ですよね。「ぜひ、今回のコンサートでやらせてほしい」とお伝えしました。アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の挿入歌としてのイメージが強いですが、自分たちならどのような表現ができるか考えています。特にギターの旋律がカッコ良いので、あれをチェロで演奏したいんです。本来のクラシックでは出てこない表現にチャレンジしたい。決して簡単な演奏ではないですけど、クラシックとしての新たな可能性を綾さんと一緒に広げていきたいです。
そよか:「God Knows...」はたくさんの方がカバーをしていますが、チェロ、ピアノ、ボーカルの編成は初めてなはず。サプライズもたくさんあると思います。
平野:「God Knows...」を初めて歌った19歳の頃は、声をふり絞らないとあのキーが出なかったんです。(声優をつとめていた)ハルヒが顔をクシャッとしながら一生懸命歌っているシーンがあるんですけど、あれはレコーディングのときにブース内にカメラが設置されていて、私の歌っている顔がモデルになっているんです。アニメを観たとき「私はこんな顔をして歌っていたんだ」と(笑)。持ち曲のなかでも一番多く歌う曲なので、いつもその瞬間にしか出せないものを意識しています。
関:そんな「God Knows...」と、ある意味で対局になりそうな演奏曲が「ダンスはやめられない」ですね。これは綾さんが、ミュージカル『モーツァルト!』でコンスタンツェ役をつとめられた際に、歌っていらっしゃった曲。「God Knows...」が声優としての綾さんならば、こちらはミュージカル女優としての綾さんを観ることができるはず。2曲を聴くと、「え、これは本当に同じ綾さん?」とびっくりしそう。
はるか:『モーツァルト!』のなかでコンスタンツェはいろんな感情を持っているので、その様子をチェロ、ピアノ、ボーカルの音を凝縮させてあらわしたいです。ミュージカルではオーケストラの大きな編成で演奏されているけど、今回のような限られた編成のなかでどうやってオーケストラのような壮大さが出せるかが課題。ピアノとチェロの音域の響きによる相乗作用が重要になりそうです。それが最大限に出れば、すごくアツい演奏になるんじゃないかなと。
林そよか (c)Ayanae Shindo
そよか:「ダンスはやめられない」は、『モーツァルト!』のすごく重要な場面で登場する曲で。そこでのコンスタンツェの想いを私たち3人で表現したい。チェロ、ピアノも、「God Knows...」とは違う使い方になりそうです。
関:劇中の綾さんは身が震えるような佇まいでした。綾さんはいつもはかわいらしい感じなのに、コンスタンツェになりきると、グッと大人っぽさや女性としての奥深さが増す。表現の幅が尋常じゃないですよね。
平野:コンスタンツェは感情のコントロールが難しいんです。演じる際ちゃんと冷静な面を持っていないと、自分が崩壊しちゃいそうになる。役として、やりすぎじゃないかというくらい振り切れるので。「ダンスはやめられない」も、歌うたびに震えるんです。歌詞の一行一行の意味が重いし、歌いながら次の一行を意識させられる。考えがひとつに定まらなくって、いろんな想いが次々に出てくる。彼女のなかで、歌いながら錯乱しちゃう、そんな難曲です。
関:そんなことあるんですね。
平野:ほかの曲よりもワンテンポ、次の歌詞を意識するスピードが速いですね。2014年に20代後半で初めてコンスタンツェを演じたとき、そして2018年の再演のときでは、役の感じ方もガラッと変わりました。人としての経験値でアプローチが変わっていく役だなと。特に、2014年から2018年の間にはニューヨークでの留学(2016年)などもありましたし。
●平野綾「役に没頭すると、ほかの本も読めなくなる」
平野綾(ミュージカル『レディ・べス』レディ・べス役) 写真提供:東宝演劇部
関:ニューヨーク留学はすごく貴重な経験だったんじゃないですか。
平野:歌の技術をたくさん教わり、できなかったことができるようにもなりました。ただ、最初は波乱続きで……(笑)。日本でレッスン先にアテをつけて行ったんですが、現地で連絡がとれなくなったので、ネットで片っ端から探したんです。そこですごく素敵な先生とお会いできました。以降は、コロナ前まで年に2回、レッスンを受けに行くようになりました。留学を通して「人生はずっと学ぶ機会ばかりなんだな」と思いましたし、「常に学んでいたい」とも感じています。
関:綾さんの幅の広さの秘訣が分かった気がします。だからいろんな声や迫力が出せるんだろうなと。
そよか:ちなみに綾さんは、私生活と役の切り替えはうまい方ですか。私は作曲や編曲などをしているときは、没頭しすぎてほかに何も手がまわらなくなるんです。
平野綾(『室温~夜の音楽~』キオリ役) (c)カンテレ
平野:私も携わっている作品以外のことができなくなるタイプですね。ほかの本も音楽も受け付けなくなります。そのとき演じているキャラクターとは別のものが入ってくると、混乱しちゃうんです。あまりに役に没頭しちゃうので、たとえばひとつの作品の合間に別の声の仕事を入れたりすると、役が抜けていなくて。この前も舞台『室温~夜の音楽~』の役を引きずっちゃって、別の現場で「平野さん、ちょっと声にドスが効きすぎています」と言われたり(笑)。だから私も、切り替えはうまい方じゃないかもしれません。
関:今回、トークコーナーではそういうお話をするのも良いかもしれませんね。あと留学のときの話も、もっと聞いてみたい。綾さんがなぜカメレオン女優なのか、その秘密が解けそうです。
はるか:私も公演では、綾さんのようにカメレオンになりたいですね。チェロでいろんな色や音を出そうと思います。あと私とそよかによる第1部「チェロとピアノで聴きたいこの曲!」は、クラシックのおもしろさを詰めこんだ内容になりそうです。モーツァルトの作曲技法で『鬼滅の刃』の曲を演奏したらどうなるかとか。
そよか:モーツァルトの作曲法や癖を解説しながら、「こんなふうにすればモーツァルトっぽくなるんですよ」というものを見せたいです。
平野:きっと「クラシックはこんなことができるんだ。想像をはるかに超えておもしろい」となりそうですね。私も第1部はひとりのクラシックファンとして楽しみたいですし、自分が出演する第2部では「ここでしかできないコンサート」を作りあげたい。ボーカルも楽器のひとつなんですよね、自分の体の一つひとつが、楽器の一部。そういう意識で、本番では感じるままに心地良く歌いたいです。
取材・文=田辺ユウキ
公演情報
【演奏第1部(クラシック)】
「チェロとピアノで聴きたいこの曲!」
●白鳥:サン=サーンス
●妖精の踊り:ポッパー
●ピアノソナタ第8番「悲愴」より第二楽章:ベートーヴェン(平野綾リクエスト曲)
【はるそよ音楽講座~モーツァルト編~】
●アイネ・クライネ・ナハトムジーク
●もしモーツァルトが「紅蓮華(テレビアニメ『鬼滅の刃』のオープニングテーマ)」を作曲したら
●モーツァルト・オペラメドレー
【音楽トーク】
【ピアノ即興演奏コーナー】
●お客さまからのリクエスト曲で創作ストーリーに合わせて即興演奏
●「きらきら星変奏曲 Newバージョン」
●ダンスはやめられない:ミュージカル『モーツァルト!』より
●God Knows...:『涼宮ハルヒの憂鬱』より
他にもディズニー曲やミュージカル曲からポップスまで、ミュージカル界トップクラスの歌唱力を誇る平野綾が歌う珠玉の名曲の数々
※都合により出演者や演奏曲目が変更になる場合がございます。ご了承下さい。
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