中村歌之助&中村福之助「ピンチをチャンスに」「パワーアップした姿を」~26日より復帰、歌舞伎座『八月納涼歌舞伎』第一部『新選組』
(左より)中村福之助、中村歌之助 /(C)松竹
2022年8月5日(金)より歌舞伎座にて開催されている『八月納涼歌舞伎』。第一部では、手塚治虫原作の漫画「新選組」を新作歌舞伎として上演しており、8月26日より中村歌之助と中村福之助が復帰した。
『新選組』は、父の仇を討つため、「新選組」に入隊し剣の腕を磨く少年・深草丘十郎の成長と、どこか謎を秘めた親友・鎌切大作との友情を描き、幕末の京都を舞台に、近藤勇、土方歳三、沖田総司や芹沢鴨らおなじみの新選組隊士たち、さらに坂本龍馬との出会いを通じて、深草丘十郎の姿が生き生きと描いている。
歌舞伎座『新選組』(左より)深草丘十郎=中村歌之助、土方歳三=中村七之助、近藤勇=中村勘九郎、鎌切大作=中村福之助 /(C)松竹
主人公の深草丘十郎には、中村芝翫の三男・中村歌之助。歌舞伎座で初めて主演をつとめています。親友の鎌切大作には、中村芝翫の次男・中村福之助が演じており、兄弟での熱い競演が話題となっていました。ところが二人は8月15日から、新型コロナウイルスの陽性により休演。その間、新作歌舞伎『新選組』は代役での上演(19~25日)となり、歌之助演じる深草丘十郎を中村七之助が、福之助演じる鎌切大作を中村勘九郎が勤め、勘九郎や七之助が演じていた役も他の俳優による代役や演出の変更により上演を継続してきた。
歌舞伎座『新選組』(左より)近藤勇=中村勘九郎、深草丘十郎=中村歌之助、鎌切大作=中村福之助、土方歳三=中村七之助 /(C)松竹
そして、8月26日より中村歌之助と中村福之助が歌舞伎座に戻ってきた。
歌舞伎座『新選組』(左より)深草丘十郎=中村歌之助、鎌切大作=中村福之助 /(C)松竹
歌舞伎座『新選組』(左より)鎌切大作=中村福之助、深草丘十郎=中村歌之助 /(C)松竹
二人の復帰を待っていたかのように、歌之助や福之助が舞台に登場すると客席からは大きな拍手が送られた。また、代役をつとめていた勘九郎(近藤勇)や七之助(土方歳三)の登場にも拍手が送られ、劇場を温かい空気が包み込んだ。歌之助と福之助の二人は、お汁粉屋で和やかに笑い合う場面から、激しい立廻りの場面まで、舞台狭しと躍動感のある動きで、元気な姿を見せた。
(左より)中村福之助、中村歌之助 /(C)松竹
(左より)中村福之助、中村歌之助 /(C)松竹
終演後には、現在、歌舞伎座5階の歌舞伎座ギャラリーで行われている「松竹歌舞伎×手塚マンガ」のコラボ展示を見学。手塚治虫が生み出した魅力的なキャラクターが、歌舞伎の扮装をした、まさに歌舞伎座でしか見られない奇跡的なコラボが壁一面に描かれ、入口には大きな押絵羽子板が展示されている。歌之助と福之助の二人は、自分たちが演じる『新選組』のポスターの前で、千穐楽までの意気込みを見せた。
(左より)中村福之助、中村歌之助 /(C)松竹
(左より)中村福之助、中村歌之助
中村歌之助 コメント
今日は、二回目の初日のつもりで舞台に向かいました。千穐楽前に帰って来られてよかったです。お休みしている間に、自分たちの演じている映像と、勘九郎の兄や七之助の兄が代わって演じている映像を観ることができ、もう一度練り直す時間がありました。脚本の(山崎)咲十郎さんとも、僕の演じる
深草丘十郎を七之助の兄が代わっていただいたことを、ひと月の間に自分の演じる役を違う俳優がやっている姿が観られたことは貴重なことだからこのピンチをチャンスに変えて、と話していました。
勘九郎の兄と七之助の兄には、早く戻ってきてねと言われていたので、今日は、本当によかったと言ってくれました。最後の引っ込みではお客様からとても温かい拍手をいただいて、舞台に帰って来られて本当によかったなという思いが強かったです。その場面では、“希望”を持って花道を引っ込む丘十郎と、自分自身が重なる部分を感じました。
中村福之助 コメント
勘九郎の兄と七之助の兄からは、帰って来られてよかった、千穐楽まで怪我なく勤められるように、と言っていただきました。僕らが休んでいた間、周りの配役も大きく変わっていたので、今日は初日とはまた違う独特な緊張感がありました。休んでいる間、代わっていただいていた勘九郎の兄たちの舞台映像を観ることができました。僕の代わりに鎌切大作を演じている勘九郎の兄の芝居を観ることができたことで、勘九郎の兄がこうやりたかったのか、ということもわかりました。自分自身も、改めて役を見つめ直し、解釈する時間があり、また弟とも相談することができました。勘九郎の兄のいいところを寄せつつ、残り4日間、これまで以上にパワーアップした姿をお見せしたいです。
登場したところでお客様からとても大きな拍手、温かい拍手をいただくことができ、不安も何もすべて吹き飛びました。そこからは気が楽になって最後まで勤めることができ、本当に感謝です。
父(芝翫)は今、『夏の夜の夢』のお稽古中ということもあり、復帰できてよかったね、最後まで楽しんでいってきなさい、とLINEをくれました。母(三田寛子)は、コロナ陽性になって悔しそうにしている僕らのことを見ていたので、兄の橋之助もみんな、がんばって!と言ってくれました。
公演情報
会場:歌舞伎座
一、新選組(しんせんぐみ)
鎌切大作:中村福之助
近藤勇:中村勘九郎
土方歳三:中村七之助
仏南無之介:中村橋之助
沖田総司:中村虎之介
娘八重:中村鶴松
庄内半蔵:片岡亀蔵
芹沢鴨:坂東彌十郎
坂本龍馬:中村扇雀
三世河竹新七 作
二、闇梅百物語(やみのうめひゃくものがたり)
傘一本足:中村種之助
河童:中村虎之介
小骸骨/読売:中村勘太郎
小骸骨/読売:中村長三郎
籬姫:中村鶴松
新造:片岡千之助
狸:中村橋之助
小姓白梅/雪女郎:中村七之助
【第二部】午後3時~
一、安政奇聞佃夜嵐(あんせいきぶんつくだのよあらし)
佃島寄場島抜けより甲州金鉱洞穴まで
神谷玄蔵:中村勘九郎
おさよ:中村米吉
木鼠清次:中村隼人
上州屋倅半次郎:中村玉太郎
三好野亀次郎:市川猿弥
元締宇野与兵衛:澤村由次郎
飯屋女房お米:市村萬次郎
おさよの父義兵衛:坂東彌十郎
木村富子 作
二、澤瀉十種の内 浮世風呂(うきよぶろ)
なめくじ:市川團子
【第三部】午後6時15分~
十返舎一九 原作より 杉原邦生 構成 戸部和久 脚本 市川猿之助 脚本・演出
東海道中膝栗毛
弥次喜多流離譚(やじきたリターンズ)
本水にて大滝の立廻りならびに宙乗り相勤め申し候
総長シー子:坂東新悟
子分ジャック:大谷廣太郎
芳沢綾人:中村隼人
旗持ちトラ:市川男寅
親衛隊長タカミ:中村鷹之資
旗持ちオタマ:中村玉太郎
伊月梵太郎/娘オリビア:市川染五郎
五代政之助/娘お夏:市川團子
下剃虎奴:市川青虎
家族商店店長寿知喜:市川寿猿
特攻隊長ムネ:澤村宗之助
海賊王ジョニー・テープ:松本錦吾
緑婆奈々夫人:市川笑三郎
天照大神:市川笑也
父次右衛門:市川猿弥
釜掛之丞:片岡亀蔵
ザブエル:市川門之助
副支配人つる紫:市川高麗蔵
喜多八:市川猿之助