第18回ショパン国際ピアノコンクール出場、いま注目のピアニスト・京増修史が『FIVE STARS』シリーズに登場! デビューリサイタルへの意気込みを語る

2022.10.11
インタビュー
クラシック

リストが描く正反対の世界観

――後半は「ペトラルカの三つのソネット」と「ロ短調ソナタ」というオール・リストプログラムが予定されています。まったく性格の違う作品ですが、続いて演奏すると、どのようなことが見えてくるのでしょうか。

構成的にも性格的にも、正反対な作品ですよね。「ペトラルカの三つのソネット」では究極なまでに甘美な世界が広がり、その後、「ロ短調 ソナタ」になると不吉な世界が支配します。実際にはまだ二作品を通して演奏したことがないので、どういう感じになるかはなんとも未知数なのですが、基本的に技巧的なイメージのあるリスト作品の中でも、「こんなに世界観が違うのものが存在する」ということを聴衆の皆様に感じて頂けたらと思っています。

――「ペトラルカのソネット」は、原曲の歌曲バージョンでは格調高い詩がついているだけに文学的な理解も求められますね。

どちらかというと、僕自身の中でも歌曲の原曲のイメージが強くて、むしろそちらの演奏ばかり聴いています。本当に大好きで、歌詞とメロディに一目惚れしてしまいした(笑)。ピアノ版を演奏会で弾くのは初めてなのですが、言葉がない状態でペトラルカのロマンティックな詩をいかに表現するかということに、とてもやりがいを感じています。

――「ロ短調 ソナタ」についてはいかがでしょうか。

冒頭は不吉ですが、途中、天上の世界を暗示する箇所があるかと思えば、突如、憤りのような感情も感じられますし、最終的にはフーガも出現します。30分の尺の中でこのように一見、自由な形式展開の中で様々な表情が喚起されていくのですが、決して “幻想曲” という枠組みではなく、あくまでもソナタという形式であるというところに魅力を感じています。加えて、この曲は動機的なモチーフによって驚くほどに緻密に構築されていますよね。そのような構築性の中で、先に挙げた様々な局面をいかに表現し、いかに自らの思いを発揮できたらいいなと思っています。

――京増さんとして本来どのようなレパートリーに最も興味を抱いていますか?

幼稚園の頃から師事している石川哲郎先生の影響で、ショパンとバッハはつねに勉強してきました。レパートリーとしては、今後もその二つが軸になってくると思っています。先生はあまり演奏の機会も持たずに、教育者として徹底した活動をなさっています。ものすごく音が美しくて、レッスンの際、先生はアップライト、僕はグランド(ピアノ)で弾いているのですが、アップライトから途轍もなく美しい音が響いてくるんです。僕自身の演奏について曲の構成などについてよりも、音色についてコメントを頂くことが多いのは、先生の美しい音をつねに間近に聴いてきたことが一番の理由だと思います。

――そのようにメンターになってくださる先生がずっと変わらずにいらっしゃるということは心強いですね。

どんなことでも相談しています。レパートリーや演奏会のプログラムについてもいつも相談していて、今回の演奏会のプログラムもアドバイスを頂きました。リストのロ短調ソナタも芸大の卒業演奏で弾いた曲ですので、入試で弾いたベートーヴェンや卒業時に弾いたロ短調ソナタなど、「僕自身にとって思い入れのある重要な作品をこのタイミングで演奏するのはとても意義あることではないか」と言って下さいました。

>(NEXT)修士課程を終え、今後の展望は?

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