NODA・MAP『Q』: A Night At The Kabuki 東京公演 千穐楽SP、初日開幕トークを特別公開!
NODA・MAP第25回公演『Q』: A Night At The Kabuki(撮影:篠山紀信)
オリジナルキャスト全10名が再結集し、より鮮やかにパワーアップして甦った NODA・MAP 『Q』:A Night At The Kabuki。その東京公演が、本日(2022年9月11日)、千穐楽を迎える。予定より4日遅れて開幕しながらも、無事にこの日を迎えられたことへの感謝を込めて、初日(8月2日)の終演後に行った座談会(出席者:松たか子、上川隆也、広瀬すず、志尊淳、野田秀樹)の模様を特別にお届けしたい。ロンドン・台北と海外公演も控えている本作品。10月には大阪公演(10月7日〜16日)も予定している。源氏と平氏の争いに置き換えられた世界観で、クイーンのアルバム『オペラ座の夜』にのせて展開する、野田流『ロミオとジュリエット』の後日譚を、この機会にぜひお見逃しなく!
NODA・MAP第25回公演『Q』: A Night At The Kabuki(撮影:篠山紀信)
―― まずは、無事に初日を終えた感想を聞かせてください。
松たか子 よかった!と心から思いました。舞台袖で開演前の曲を聴いた瞬間、甦ってくるものがあって、「また『Q』が始まるんだな」と緊張も覚えたんですが、やっと正しい疲れを感じることができたというか。まだまだここからですけれども、今日はただ、ただ嬉しくて、楽しくて、カーテンコールでは初日が開いた歓びに浸りました。
上川隆也 僕は、『Q』が『Q』1.5か1.75バージョンくらいになっている印象がある一方で、長い長い休演期間が明けたような気分でもありました。再演の初日を緊張の中で迎えたというよりは、またあらためて『Q』をやっているような感覚でした。
広瀬すず 私は、すごく楽しい初日でした。いろいろな思いが個々にありながら迎えたこの日だったと思うのですが、『Q』以外に舞台経験がない私でさえ、「舞台って、こんな感じだったな」と思い出してくるような感覚があって。「再演って、こういうものなんだ」と実感できた気がします。
志尊淳 僕も楽しくやれました。劇場入りして2回目の通し稽古がゲネプロだったので、正直、もう本番が始まるの!?という怖さもあったんですけど、実際に舞台に立つと、ふとした時に見えるものが違ったり、新たな発見やお客さんから受け取れるものがたくさんありました。初演の時の初日とは、また違った感覚を味わいました。
NODA・MAP第25回公演『Q』: A Night At The Kabuki(撮影:篠山紀信)
野田 確かに今回は、うちにしては通し稽古が少なかったからね。不安もあったと思う。
上川 しかも、演出が結構変わっていますから。
志尊 そうなんです。僕はフィジカルな動きも結構変わったので、再演ではありますけど、「また新たにやるぞ」という気持ちで臨みました。そういう緊張感もあったから、怪我もなく無事にできたのかもしれないです。
上川 限られた稽古期間が、さらに一旦止まったりしながらもやれたのは、初演のキャスト10人が揃って再結集できたことも大きいと思います。そんな中で、淳が言ったように、新しい景色が見えるというか、追体験しながら新しい景色を生み出していくような、不思議な感覚でした。
野田 稽古期間としては短かったけど、実は、第二幕の後半の演出を変えようと思った時から、アンサンブルを中心としたワークショップは何度もやってきたんだよね。予定では、7月に稽古が始まる前に1週間ワークショップをやることになっていたんだけど、それじゃとても無理だから、『Q』のメンバー以外の人たちにも「ちょっと空いてない?」って声を掛けて、5月と6月にもワークショップをやって。そうじゃなきゃ、ここまで演出を変えられなかったと思う。
松 私はワークショップにも何日か参加できたので、随分いろいろな人と出会いました(笑)。たくさんの方々の協力があったからこそ、ここまで来られたんだなと、あらためて感じます。
NODA・MAP第25回公演『Q』: A Night At The Kabuki(撮影:篠山紀信)
―― 野田さんが二幕後半の演出を変えようと考え始めたのは、いつ頃ですか?
野田 いつ頃だったかなあ。あのシーンには合わないという声があったからやめたんだけど、新たに加えた“雪”に関して言えば、初演の時から降らせたいと考えていましたね。今回も、ラストシーンのきれいなところが崩れるんじゃないかって、結構反対があったんだけど、稽古場でちょっとやってみた時に、これで照明が入れば成立するなと思って。あと、この4人の関係性の部分の演出もだいぶ変えました。役者の中でも、“それから”の二人は“面影”を追って生きているんだというところが、だいぶクリアになったんじゃないかな。何よりも台詞のミスが全然出ないよね。いまさらながらに、初演の時はやりにくかっただろうなと思って反省してます。
上川 いえ、そんなことは。ただ僕に関して言えば、演じる上での心理的な変化は結構ありました。初演では過酷な状況を強いられた人々の日々が客観的に描写されていたところが、主観に立ち返った形で描き直されているので、今回はその両側からの“画”に後押ししてもらいながら演じている感じです。
志尊 僕も、二幕はかなり居方が変わりました。
野田 志尊の役も、実は大きく解釈が違っているからね。お客さんから見ても、今回のほうがだいぶ意味がクリアになっていると思います。
NODA・MAP第25回公演『Q』: A Night At The Kabuki(撮影:篠山紀信)
―― 広瀬さんは、初演の『Q』が初舞台でした。やはり今回のほうが気持ちに余裕があったりしますか?
広瀬 余裕かどはわからないんですけど、前回より“味わえている”気はします。私は感情とかテンションのコントロールが下手で、一度上がっちゃうと、上がったまま落とせなかったりしてしまいます。初演の時はまさにそういう状態で、一つ一つのシーンの手触りみたいなものを毎回認識するというよりは、感情のままに突っ走っていた感じなので、それに比べれば今回のほうが、もうちょっと手触りはあるかなと思います。
野田 すずちゃんは、もともと緊張しない人だから。たかちゃん(松)とか俺は、本番前にちゃんと緊張するんだけどね。
松 はい、私はちゃんと緊張します(笑)。
広瀬 でも、私も昨日(ゲネプロ)はちょっと緊張しました。
野田 仲間に入ろうとしてる(笑)。
広瀬 違うんです。今日も最初はやっと「始まるんだな」と思ってドキドキしていたんですけど、“あの状態”で待っていると、落ち着いてきちゃうというか。自分で歩いて舞台に出ていくわけじゃなくて、私は松さんの合図を待つのみなので。
野田 そうか。すずちゃんは、まだ“舞台袖で出番を待つ”みたいなことを経験したことがないんだ。そりゃあ、緊張しようがないかもしれないね(笑)。
NODA・MAP第25回公演『Q』: A Night At The Kabuki(撮影:篠山紀信)
―― そんな広瀬さんや志尊さんの登場シーンも含めて、見逃がせない場面だらけの本作品。最後に、読者の皆さんへ一言ずつお願いします。
野田 上川も言っていたけど、初演よりもバージョンアップしていると思うので、1回観ている人も間違いなく違うものが見えると思います。初めて観る人は……たかちゃん、どうですか?
松 えっ、急に振らないでください(笑)。私たち、頑張っていますので、ぜひ観にいらしてください! 初めての方もぜひ観にいらしてください。今は規制退場で、終演後にお席でしばらく待っていただくのが心苦しいんですけれども、この『Q』では、それがクイーンの曲を聴きながら余韻に浸っていただける時間になるのかなと、今日モニターを見ながら思いました。劇場でお待ちしています!
上川 3年前にもお届けした物語が、2022年の今、また違った響き方をするような世の中になってしまいました。初めてご覧になる方はもちろん、初演をご覧になった方にもぜひ観ていただいて、何をお感じになるのか、ぜひ教えていただきたいと思います。
広瀬 「観てくださった人に、どういうふうに届いているのかな?」「人が身も心も削られていくような姿を生で見た時って、きっとすごい衝撃なんだろうな」と、初演の稽古の時からずっと思っています。今はまた伝わり方が違っていたり、この時代だからこそ見えてくるものがあるんだろうなと感じます。ぜひ観ていただけたら嬉しいです。
志尊 「どう感じていただけるのかな?」というのは、僕もすごく気になっていることです。たぶん僕自身、今でもこの物語を100%は理解できていないと思うんですが、その余白や、それぞれの捉え方が変わっていくことが、生の舞台の魅力であったり、この作品の面白さなんだなと感じています。クイーンや『ロミオとジュリエット』という入口もあるので、舞台に普段触れていない人や、初めて舞台を観る方にも、ぜひ来ていただきたいです。
野田 ようやく初日が開いたのに、こうして5人とも水を飲みながらしゃべりました(笑)。みんなで乾杯もできない状況ではあるけれど、コロナ禍になってからの劇場には、以前にも増して一体感があるなと感じています。劇場からちょっと気持ちが離れている人は、特に観に来てほしいですね。こういう時期だからこそ“目からウロコ”みたいなことが起きるんじゃないかな。
NODA・MAP第25回公演『Q』: A Night At The Kabuki(撮影:篠山紀信)
(取材・構成・文/岡﨑 香)
公演情報
『Q』:A Night At The Kabuki
音楽:QUEEN
■CAST
松たか子 上川隆也 広瀬すず 志尊淳
橋本さとし 小松和重 伊勢佳世 羽野晶紀
野田秀樹 竹中直人
間瀬奈都美 松本誠 的場祐太 水口早香 森田真和 柳生拓哉 吉田朋弘 六川裕史
<大阪公演>
■期間:2022年10月7日(金)~10月16日(日)
■会場:新歌舞伎座
■一般発売:2022年9月10日(土)10:00~
■公演に関する問合せ:NODA・MAP TEL:03-6802-6681(平日11-19時)