珠城りょう、『マヌエラ』で第二次世界大戦直前の上海に生きた実在のダンサー役に挑戦
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――今回、役作りで準備しておこうと考えていることは?
稽古が始まる前に、時代背景やセリフはある程度自分の中に入れておきたいなって思っているんですけれども、実際、一緒にお芝居する方たちがどういう風に作ってこられるのかで、この物語におけるマヌエラの在り方もまた変わってくると思います。ですので、そこは逆に、準備しすぎないようにしようかなと思っています。宝塚時代から、基本的に、自分の中では作りすぎないようにしていて。ある程度は、この人はこういう生い立ちとか、何となくこういう人物であるというのは大まかにはとらえているんですけれども、結局物語の中でいろいろな人たちに影響されていくので、固定せずに、周りの出方を見てから、自分の役をまたしっかり構築していければと思います。
――マヌエラをリアルに表現するにあたって、今までにないこんな感情が必要になってくるんじゃないか等思われることはありますか。
台本を読んだときの妙子さんの印象は、感情というものが何層にもなっていて、本当に思っていること、本当に感じていることが、見えるようで見えない方だなと。後半になって、自分自身の本音をぽろっと吐露するところまでは、周囲の人間に本心をあまり、見せているようで見せていない感じがしたので、そのあたりの心のゆらぎなどをどうやったら上手く表現できるか、研究していきたいなと思っています。とても難しいところですが。
――今回、マヌエラとして踊るにあたって必要とされるであろう感情や技術は?
資料を拝見すると、妙子さんが踊っていたのはスパニッシュ・ダンスということで、けっこうくくりが大きいんですね。フラメンコなのか、そういう明確なものがあまりないんです。振付の本間憲一さんがどのような振りをつけてくださるのか、演出の千葉さんがどんな踊りを求めてこられるのか、まだちょっとわからないところではあるんですが、どういったものが来ても対応できるように、体幹を鍛えたり、ベースはきっちり作っておきたいなと思っています。今までやっていたのは宝塚の男役というジャンルのダンス。ジャズ・ダンス等がベースになってはいても、あくまでも男役のダンスだった部分があるので、そのあたりは今回、マヌエラとして踊っていると見えるように研究していきたいと思います。
――今作は、2023年1月の舞台となります。
2022年は新しく事務所に所属して、俳優として新しい人生を歩み出しました。本当にありがたいことに、いろいろなことに挑戦させていただいて、それも、応援してくださっている方々に喜んでいただけるような形のものに挑戦できたのが良かったです。自分もとても楽しくてやりがいがありました。2023年、『マヌエラ』という新しい挑戦から始まりますので、2022年とまた違う自分の一面を出せるよう、私自身も模索しながらやっていけたらいいなと思っています。
――最後にメッセージをお願いいたします。
2023年の幕開けに公演をさせていただきます。今この時代にこの作品を再演するということには必ず意味があると思っています。この作品の中にこめられたたくさんのメッセージを、今の私、今のキャストで、一番いい形で落とし込み、ご覧いただく皆様に、『マヌエラ』の世界観をお届けできるように精いっぱい努めてまいりたいと思います。
取材・文=藤本真由(舞台評論家) 撮影=鈴木久美子