早霧せいなインタビュー 舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』ハーマイオニー役で感じた「ただ舞台に立つことが楽しい」という気持ち

2022.10.7
インタビュー
舞台

――そもそもですが、世界的にも人気のある作品、そしてその中でも人気のあるハーマイオニーというキャラクターを演じることにプレッシャーはありましたか? 

実は、オーディションのお話をいただくまで、“眼鏡をかけた男の子の話”という程度しか知らなかったんです(笑)。なので、ハーマイオニーのことも、“魔女の1人”なんだろうという印象でした。オーディションの時に、主人公のハリーの友達だということを知り、心して臨みましたが、そうしたスタートだったので、最初はプレッシャーはあまり感じていませんでした。ただ、ハーマイオニーを演じることが発表された時に、たくさんの方からメッセージやお手紙をいただいて、「小さい頃から原作を読んでいて大好きなキャラクターなんです」と伝えてくださる方がたくさんいらっしゃって、改めてこれは大変だと気づきました。

――実際に演じてからはハーマイオニーというキャラクターについて、どんなことを感じていますか?

原作や映画をご覧になった皆さんが思い描くハーマイオニーと、今、舞台上にいるハーマイオニーは、少しイメージが違うと思います。それはもちろん、年齢も違いますし、コンプレックスを抱えながら魔法大臣まで上り詰めたという大変な経験があって、そうした経験からくる強さや信念、意志の強さを背負っているからです。私も(ハーマイオニーをWキャストで演じている中別府)葵ちゃんもそれはしっかり理解していますが、(映画で)エマ・ワトソンが演じた可愛らしいハーマイオニーを想像してきた人には、ちょっと強すぎる印象を与えてしまうのではないか? と心配していました。ただ、少しでも柔らかい空気を出そうとすると、(演出家たちから)もっと強く怒ってと演出されるので……今は、心を決めて強く演じようと考えるようになりました。これは舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』なのだからと、しっかりと強いハーマイオニーを打ち出すようにしています。ですが、そんな強さの中にも、滲み出るキュートさがあるのがハーマイオニーだとも思っています。強がりの裏には弱さも持っていて、ロンはそれを支えてくれる。その弱さを見せられる相手がロンだったんだと思いますし、だからこそロンを夫に選んだんだと思います。

――稽古スタート時から考えると、約半年にわたってハーマイオニーを演じていますが、新しい発見や変化はありましたか? 

エネルギッシュにスピード感を持って演じるように演出補のコナー・ウィルソンから指示があったので、ハーマイオニーは常に誰かしらに怒っていることが多いのですが、公演を重ねるごとに、自分の中で緩急を作れるようになってきたと思います。緩めるシーンでは、笑いのポイントを夫のロン役のお二人(エハラマサヒロと竪山隼太)と試行錯誤しながら作っています。稽古中は、キャストもスタッフの皆さんもどんなシーンか知っているから全然笑ってくれなかったんですよ(笑)。なので、本当にこれ面白いのかなと自信を失いかけていましたが、プレビュー公演初日に、お客さまから反応をいただけたことで自信になりましたし、今後もチャレンジしていきたいと思います。

――そうすると、何度も観劇することで、皆さんの変化も楽しめそうですね。 

きっと変わっているのを感じられると思いますよ! 流れや仕掛けが分かっていても、(自分が出演していない回を)客席から観るとすっごく面白いんです。多分、1回観劇したら絶対にまた観たくなると思いますが、その時には、また違う感覚でご覧いただけると思います。

――海外チームとの稽古で印象に残っていることを教えてください。

東京公演も、世界各国で上演されているものと、演出や役者たちの動きは大きくは変わっていないと思います。実際に「メルボルンで変更になったので、東京版でも変更します」ということもたくさんあったので。ですが、海外チームは、“誰がやっているのか”をすごく重要視してくださいました。今回、ハーマイオニーは私と葵ちゃんがWキャストで演じていますが、「私が演じているハーマイオニーはこれでいい」とその人を大切にした導き方をしてくださるんです。山の頂点には登らなくてはいけないけれども、そこに行くまでのルートはどこを通ってもいいという自由さがあって、だからこそ私たちはいつも新鮮に演じることができるんだと思います。「今日はこのルートを通ってみようかな」と、役者たちがトライしてみようという気持ちになれるのは、やはり海外チームの導き方のおかげだと思います。

――実際に中別府さんと違う演出があったんですか? 

実は、4月の稽古は一緒にやっていたのですが、5月からは赤坂ACTシアターの舞台上で稽古をしていたので、それ以降は(中別府とは)ほぼ一緒の稽古がなかったんです。なので、彼女がどういう演出をつけてもらっているのかはあまり知りません。

今回、海外チームとして、演出家と演出補が3人も来日してくださったのですが、3人の好みが違うんですよ。なので、例えば、あるシーンで「もっと笑ってほしい」と演出いただいたから、次からは明るく笑っていたら、別の演出家の方に「そこまで笑わなくていい」と言われたり(笑)。もちろん、基本的な動きは同じなのですが、細かいところでは多少の違いもありました。なので、自分の好みに合う方の演出で演じていたり、最後に指導していただいた時の言葉の通り演じたり、それぞれがチョイスして演じていると思います。

>(NEXT)藤原竜也、石丸幹二、向井理、それぞれのハリーの印象は

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