吉田羊による音楽コンサート 9/22オフィシャルレポートが到着 大泉洋がゲスト出演
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(左)大泉洋(右)吉田羊 撮影:宮川舞子
クールで優秀なビジネスパーソンから、人生の波にうまく乗れない不器用な訳アリ女子まで幅広い役を演じ、数々の映画賞や演劇賞に輝く俳優・吉田羊がデビュー25周年を迎えた。俳優として、果敢に新境地を切り拓いてきた彼女が、Billboard Live TOKYOにて、初めての音楽コンサート『吉田羊Night Spectacles The Parallel~ウタウヒツジ~25th Anniversary Special』で、“役”を脱ぎすてステージに挑む。
これは、WOWOW が贈る俳優によるコンサート「Night Spectacles」シリーズの第1弾でもある。
映画『アナと雪の女王2』や大塚製薬「ポカリスエット」CMなどで歌声を披露してきたほか、2018年にJUJUの「かわいそうだよね(with HITSUJI)」に客演し、JUJUの日本武道館公演で共演もしてきた吉田羊に、記念すべきトップバッターを託したというわけだ。
歌声にも定評のある人気俳優の吉田、人生初の音楽コンサートとなれば、注目が集まるのは必至。さらに、大河ドラマ『真田丸』やリモートドラマとして話題となった『2020年五月の恋』(WOWOW)で夫婦役を演じた、大泉洋のゲスト出演も決まった。“ようよう”コンビとしてファンから親しまれる2人の、軽妙なトークにも期待が高まる。
そんな、音楽、映画、ドラマ、演劇…あらゆるエンタテインメントに愛され、愛する吉田が贈る『吉田羊Night Spectacles The Parallel~ウタウヒツジ~25th Anniversary Special』の、第1夜、第1回公演の様子を即時レポートとしてお届けする 。尚、9月23日(金・祝)のライブ配信
25年を記念したコンサートで初めて歌う曲はなにか。バンドメンバーがステージに上がり、拍手で迎えられるなか、会場の誰もが頭の中で想像しただろう。鮮やかな衣装で現れた吉田が歌い始めたのは、映画『ファニーガール』から、これからのステージへの願いのようなものを感じさせる1曲。コンサートの始まりを告げるように、パワフルに歌い上げた。
続いて披露したのは、「母とよく聴いた思い出の曲」という『サウンド・オブ・ミュージック』からの曲など、洋楽2曲をジャジーなアレンジでカバー。ビルボード東京という艶っぽい空間で、大人な夜へと導かれていくのを感じられるような選曲だ。
かと思えば、自身が出演する「ポカリスエット」CMからの1曲は、荒井由美のセンチメンタルな名曲。ウォームなバンドサウンドに乗せて、1語1語ずつを大切に抱きしめるように歌う姿が印象的だった。
このライブのタイトル「The Parallel」には、“本業は役者だが、「歌い手の吉田羊」という世界が存在していたら、こんな風にライヴをやっていたかもしれない”という、妄想世界=パラレルワールドという意味を込めているという。そんなところにも彼女の謙虚な人柄、音楽への敬意、役者への誇りがにじんでいるように思える。
そんな人だからだろう、数曲おきに衣装替えをしてファンの目を楽しませようとする吉田の想いに応え、吉田と夫婦役を演じた矢作兼(おぎやはぎ)や、吉田を発見した立役者の中井貴一、数々の作品で吉田を起用してきた三谷幸喜など、多彩なゲストが快く衣装チェンジの間に流れる企画VTRに登場し、観客を大いに楽しませていた。
中盤は、もっとも素顔の吉田羊を垣間見せるタームだったのではないだろうか。和装に身を包んで、艶っぽい昭和歌謡や、彼女が大ファンだと公言する椎名林檎の楽曲を熱唱。普段もこんなふうに場を盛り上げるのだろうか、自ら手を叩き、客席からの手拍子を促した。
坂本冬美のナンバーをシアトリカルに歌うさまは、彼女がステージで輝く表現者であることを如実に証明していた。アップテンポなサビでは、今度は観客が自発的に手拍子をうち、ライブの一体感を味わっていたのも印象的だった。
吉田羊 撮影:宮川舞子
終盤は、いよいよ大泉を迎えてのデュエットパートだ。シックな衣装に着替えた吉田が、「ここからは大泉洋さんです」とゲストを迎え入れると、温かでどこかノスタルジックな響きとともにビリー・ジョエルのナンバーを歌い始めた。2人が見つめ合い、2人の声が重なり、美しいハーモニーが会場に響き渡ったとき、誰もがうっとりしたことだろう。
しかし、歌い終わった途端に、「こんなに近いんですか、恐ろしい空間ですね(笑)」と大泉が茶化すように話し出し、脱線トークに突入。
ゲストとしてデュエットする曲選びが難航したというエピソードでは、「なかなか返事がなくて…。大泉さん、お忙しいのかなと思っていたら家族旅行へ行ってましたよね」と吉田に責められる一幕も。そんな軽妙なトークから、2人の信頼関係が透けて見えるようだ。
トークがこのまま続くかと思いきや、“お時間です”を繰り返す機械じかけの天の声。「大泉さん対策としてアラームを用意しました」と吉田が言うと、客席からは笑いと拍手が贈られた。「まだまだ歌い足りない。不本意です」とゴネる大泉を、クールにあしらう吉田羊も、まるでドラマの1シーンを見ているかのようだ。こうした、肩ひじ張らないファンとの交流もまた、このスペシャルライブで吉田が実現したかったことの1つだ。
2曲目のデュエットソングは、2人が子どものころに好きで口ずさんでいたという曲。凛と美しく歌う吉田の歌に、深みを添える大泉の声。サビでは2人の情熱的な歌声が重なり合い、赤いライトとミラーボールがあやしく煌めく空間が、さらにその曲の世界観を立体的に魅せていた。
大きな拍手で送られながら大泉がステージから去り、いよいよラストへ。
「25年、支えていただきありがとうございます。皆さんの声で吉田羊は半分出来ています」と、ありったけの感謝を伝えたあと、青い光の中スツールに腰掛けた。そして、それまでの思いを巡らせるかのように、ときには、客席に話しかけるかのように歌う姿は、あたかもひとり芝居のような静かな迫力があった。この曲は、いまを生きるファンに向けての吉田からのエールだったのかもしれない。
そんな静かな余韻に浸る間もなく、客席からはアンコールを求める熱烈な拍手が沸き起こった。
オールラストを飾るのは、吉田羊にとって初めてのオリジナルソングで、自ら作詞を手がけた「colorful」。これは、大泉と演じた「2020年五月の恋」がモチーフになっているという。力みのない柔らかなバンドサウンドに乗せて、何気ない日常を切り取ったような歌詞を愛おしそうに歌う透明感のある歌声は、会場の隅々にまで穏やかに染み渡ったことだろう。
カーテンコールでは、本ライブの音楽監督を務めた兼松衆氏ほか、バンドメンバーと大泉が勢ぞろい。兼松はかつて吉田が出演したドラマの劇伴を担当したというめぐりあわせだ。
吉田は、本ライブを妄想世界と称したが、parallel(平行)だと思っていた世界は、いつしかクロスオーヴァーし、優雅に交じり合っていた。こんな吉田羊は、きっと誰もいままで見たことがない。しかし、俳優としての25年があったから、この音楽ライブが実現し、彼女がずっと音楽を愛してきた俳優だからこそ表現できる唯一無二のコンサートとなった。そんな貴重な1時間半の魔法にかけられる幸せを、ぜひ体感してほしいものだ。
(文:橘川有子/撮影:宮川舞子)