『王様と私』僧侶役でオーストリア屈指の人気音楽祭に出演~テノール歌手・高島健一郎がメルビッシュ湖上音楽祭を振り返る
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メルビッシュ湖上音楽祭の会場は、ハンガリーとの国境地帯に広がるノイジードル湖畔にあり、ハンガリーとの国境線も目と鼻の先にある。湖は、中央ヨーロッパで二番目に大きいステップ湖(内陸湖、流入する河川はあるが、流れ出る河川の無い湖)で、湖水面積は 315平方キロメートルなので琵琶湖の半分くらい。ウィーンからは、国立歌劇場の横から出発するツアーバスで、1時間半ほどで会場まで到着できる、手近なリゾート地と言える場所である。
筆者が訪れた8月11日の公演日には、ツアーバスはざまざまなツアー会社のものが10台ほど来ていたが、これで本当に6000人も来るのか?と思っているうちに、自家用車が続々と駐車場を埋め尽くした。開演が近づくころには会場前のレストランは、メルビッシュ・ワインのグラスを片手に、おしゃれをした老若男女や家族連れでいっぱいとなり、ワインと食事を終えた人々からつぎつぎとアンフィシアター形態の野外劇場に吸い込まれていった。長いヴァカンスの一日をこの音楽祭で楽しむことに決めている、ウィーンっ子やハンガリー・ドイツの人々がたくさんいることが想像できる層の厚さであった。中に入ると、客席では、豪華な仏塔や王宮のセットを背景に記念写真を思い思いに撮影し、心から夏季休暇を楽しんでいる人々が満ち溢れていた。コロナ禍ではあるが、マスクをしている人はほぼなく、座席の規制や注意事項もない。
20時に開幕し、舞台の奥にヒロインの乗った船が登場すると、観客はもう『王様と私』の世界に入り込んで、魅了されていた。
22時30分に終演し夢から醒めると、多くの客はリゾートホテルや民宿などに自家用車で散っていくのだが、筆者のようなウィーン泊のツアー客は23時すぎにバスに乗りこみ、ウィーン国立歌劇場の真横に午前1時に到着するという、リゾート感とは程遠い行程となってしまうのは、致し方ないが残念なところだ。一度メルビッシュ・アム・ゼーのホテルで宿泊して、地場ワインを飲みながら、ゆっくりと滞在したいものである。
最後に王様役Kok-Hwa Lieから、SPICEのためにコメントをいただいた。
Kok-Hwa Lieコメント
この舞台で演じる事が出来て、私がどれほど恵まれていると感じているかは言葉では言い表せません。全てのスタッフと共演者に感謝の意を表します。私たちのチームは、きっとまたどこかで再会するでしょう。
文責:神山薫
キャストプロフィール
アムステルダムで生まれた俳優コック-ファ・リーはここ15年間の間にイギリスのロンドン、オランダのアムステルダムでミュージカルの主要な役を演じてきた。舞台活動と同時に映画やテレビの俳優としても活躍している。ミュージカルの主要なレパートリーは「王様と私」王様役、「ミス・サイゴン」トゥイ役、「マンマ・ミーア!」エディ役、「アイーダ」メレブ役など。
東京藝術大学声楽科卒業後、同大学海外留学支援奨学生としてウィーンへ留学。
ウィーン市立音楽芸術大学オペレッタ科在学中の2018年バートイシュル・レハール音楽祭にてオペレッタ 微笑みの国 / フー・リー役にてデビューし、2018/2019シーズンからルッケンヴァルデ市立劇場、ゾーリンゲン市立劇場、レックリングハウゼン祝祭劇場等ドイツ各地の劇場でジプシー男爵タイトルロール / バリンカイ役、伯爵令嬢マリツァ / タシロ役等オペレッタの主役を務めドイツ各地の新聞で好評を得る。
舞台活動の出来ないコロナ禍ではJAM MUSIC LAB音楽大学ジャズヴォーカル科修士課程にてジャズヴォーカルも学び、2022年夏にはヨーロッパ最大規模の野外フェスティバル・メルビッシュ湖上音楽祭にソリストとしてデビュー。
2022年春より日本でも活動を開始。オール・シューマン・プログラムの初リサイタルを東京オペラシティ・リサイタルホールで成功させ、2022年秋のコンサート
YouTubeチャンネル「Vocalist Ken Takashima」も開設し、ジャンルを問わず様々な歌を公開中。 アーティストビザを取得しウィーン在住。