「第28回OMS戯曲賞」大賞作品、山本彩『花を摘む人』、初の関西公演を実施

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2022.10.1
空の驛舎『花を摘む人』公演チラシ。

空の驛舎『花を摘む人』公演チラシ。

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内藤裕敬や松田正隆など、関西の名だたる劇作家たちが大賞を受賞してきた、大阪の戯曲賞「OMS戯曲賞」。2021年に実施された「第28回OMS戯曲賞」で、初応募にして大賞に輝いた、山本彩の戯曲『花を摘む人』が、彼女が所属する大阪の劇団「空の驛舎(えき)」で、関西で初めて上演される。

『花を摘む人』は、もともと山本が高知県の団体「ショープロジェクト」に依頼されたものの、執筆中に新型コロナウイルスの影響で公演が白紙に。しかし、上演実績のある戯曲のみ応募可能となっていたOMS戯曲賞が、第28回は未上演の戯曲も審査対象としたため、それを目標にして完成させたという誕生経緯がある。なおショープロジェクトの公演は、今年の7月に高知県で実現した。

「第28回OMS戯曲賞」授賞式より。右側が大賞を受賞した山本彩。 [撮影]吉永美和子

「第28回OMS戯曲賞」授賞式より。右側が大賞を受賞した山本彩。 [撮影]吉永美和子

本作の主な舞台は、山本の故郷をモデルにした、高知県の山奥にあるダムと、そこに隣接する過疎の村。とある理由で毎年ダムを訪れる青年、村おこしに奮闘する役場の職員&それを冷ややかに見つめる都会暮らしの妹、さらにはダムの底に沈んだ村の記憶などを、4つの物語に分けて見せていく。

人間の生と死、故郷に抱く愛憎、そして失われた風景への憧憬が、土佐弁を多用した自然体の台詞で描かれ、戯曲賞の審査員からも「それぞれの話の振り幅が広いことにも驚いた……(台詞の)短いやり取りで個人と背景を確実に把握させる力には脱帽した」(土田英生)「書かれている文字の向こう側に色彩鮮やかな風景が見える……優しさの言葉は実はとても残酷に辛辣に、人間の弱さを突きつけてくる」(樋口ミユ)などの称賛が寄せられた。

空の驛舎第26回公演『コクゴのジカン』(2022年/作・演出:中村ケンシ)より。 [撮影]はまなみ

空の驛舎第26回公演『コクゴのジカン』(2022年/作・演出:中村ケンシ)より。 [撮影]はまなみ

今回の上演は、山本が演出を希望した一人だった、空の驛舎主宰・中村ケンシが演出を担当。ヒルガオやヒマワリなど、タイトル通り様々な「花」をアクセントにした世界を、どのようにビジュアル化するのかに期待がかかる。

山本からは、以下のようなコメントが届いた。

『花を摘む人』は、戯曲のまま終わるのだと覚悟した物語でした。幸運にも憧れの賞をいただき、演劇となる機会を得ました。けれど、演劇は戯曲の延長ではない、parallelな関係にある、と思います。私は、空の驛舎がつくる『花を摘む人』という演劇を、ぜひどうか、ご覧いただきたいのです。引き裂かれる身体、呼吸、人間への希望に、触れてほしい。大阪という大都市の真ん中。劇場を出た後、この街はどんな風に見えるんでしょうか。ウイングフィールドで、ご来場をお待ち申し上げております。

なお本作は、公演終了後に有料の映像配信を実施。関西から生まれた新しい才能が紡ぎ出す世界を、ぜひ確認してほしい。また高知県に限らず、日本国内のどの過疎の村にも通じるような、普遍的な課題が描かれているので、この問題に興味を持っている人は、特に必見だ。

公演情報

空の驛舎 第27回公演『花を摘む人』
 
■作:山本彩
■演出:中村ケンシ
■出演:石塚博章、織田拓己、河本久和、佐藤あい、柴垣啓介、速水佳苗、浦長瀬舞(冷凍うさぎ)
 
■日時:2022年10月7日(金)~9日(日) 7日=19:30~、8日=12:00~/16:00~/20:00~、9日=11:00~/15:00~
※8日16時公演終了後、山本&中村によるトークを予定。
※10月10日から、1年間視聴可能なアーカイブ配信を実施。
■会場:ウイングフィールド
■料金:一般=前売3,000円、当日3,300円 22歳以下=2,000円 高校生以下=1,000円 配信=1,500円
■問い合わせ:080-3031-4929(ヒロセ) ※10:00~19:00
■公演サイト:https://sora-no-eki.jimdofree.com/next/
※この情報は2022年9月28日時点のものです。新型コロナウイルスの状況などで変更となる場合がございますので、公式サイトで最新の情報をチェックしてください。
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