『中津川 THE SOLAR BUDOKAN』3年ぶりの現地体験レポ──コロナ禍を経て変わったこと、変わらないもの
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中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2022
中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2022 2022.9.23〜25 中津川公園内特設ステージ
おかえり、ただいま。
『THE SOLAR BUDOKAN』が2019年以来3年ぶりに中津川の地に戻ってきた。2020年と2021年は紆余曲折の末、現地での有観客開催が叶わず(2020年は極少数のアーティストとスタッフのみが現地で映像撮影を行なったが、2021年は会場の使用自体ができなかった)、東京での一部有観客&オンラインのハイブリッドフェスに。僕は2年ともフルで視聴したが、出演者の顔ぶれも、現場はもちろん画面上の雰囲気も、『中津川ソーラー』ならではと言うべき配信に仕上げた手腕と情熱は見事だった。配信ライブには配信ライブの可能性があることも実感できた。だが同時に、どうあがいても現地で体験するフェスの代替にはなりえないこともまた痛感した。
ライブ業界と同様にコロナ禍で翻弄された飲食店に喩えるなら、馴染みの居酒屋が休業を余儀なくされ、ランチタイムにお弁当を始めたとする。潰れてもらっては困るし、ということで買いに行ったらちゃんと美味しかったけど、持ち帰って家で食べる弁当と、ガヤガヤうるさくてちょっと煙っぽい店内で流し込む生ビールとおつまみの旨さって全く別ものだよね、みたいな話。
待ちわびた営業再開の日は9月23日。3年ぶりに馴染みの店──モジャモジャの大将と個性豊かな店員と賑やかな常連が待つあの場所へ向かい、家を飛び出した。
私鉄とJRを乗り継いで品川から新幹線に乗り、名古屋で特急「しなの」に乗り換えると中津川駅に着く。ホームのアンダーパスをくぐって改札を抜け、ロータリーへ出る。飛び込んでくる景色は2019年以前と何も変わっていない。……しっかり雨が降っている点を除けば。
この『中津川ソーラー』、究極の晴れフェスとして名を馳せていた。9月の後半という台風シーズンの開催ながら、これまでほぼ雨に降られておらず、もちろん天候による中止もまったく無かった。事前の天気予報がどんなに怪しくても、せいぜい「朝のうちにパラっときた」とかそのくらいで、念のため持って行った長靴がバッグの中でただの重りと化した経験は一度や二度ではない。これに関しては佐藤タイジが太陽神と契約しているとかACIDMAN・大木伸夫が宇宙と繋がっているとか諸説あるが、何かしらの見えない力を疑わざるをえないくらいの晴れっぷりを誇っていた“晴れフェス”もついに、今年は雨に見舞われてしまった。
四星球
朝のうちはまだ時折弱まったり、ほとんど止んだり、またサーっと来たりという状態だったが、REVOLUTIONステージのトップバッター・四星球のライブが始まる頃には本降りになってきた。彼らの初登場はオンラインだった2020年なのだが、そのときライブの事前収録をここ中津川で行なっているから、場所自体は2度目。で、そのときも豪雨だった。あとでバックヤードで話したら、口々に「自分達のせいですかねぇ」「晴れた中津川を見たことないんです」みたいなことを言っていたのでさすがに気の毒だったが、その突き抜けたパフォーマンスは、久々に参加する人も多かったであろうフェスの開会宣言としても、雨模様の憂鬱を吹っ飛ばす意味でも、抜群の愉しさ。ぜひ来年以降、快晴の中津川で彼らを観たいところだ。
同時刻にRESPECTステージで始まった田島貴男、そのあとREALIZEステージの1本目・武藤昭平 with ウエノコウジと観て回りながら、久々に訪れた会場の様子を懐かしみつつチェック。今年は“密”を避ける対策もあってフルキャパの人数を入れておらず、例年は2日開催のところを3日開催にすることで1日あたりの出演者数が減っていたりする関係上、これまでと変わっている箇所があった。まず、入場してすぐ左手にあるREALIZEステージの向きが変更され、それによって観る位置や収容人数も若干変わっている。もっとも標高の高い位置にあったRESILIENCEステージは今年は無し。また、REDEMPTIONステージもなくなっており、そのぶんメインのREVOLUTIONステージ後方にはシートエリアが増設されている。それによって思い思いの場所に陣取ってのんびりライブを観るお客さんの割合も多くなり、移動の導線にもゆとりが生まれたことで、どこかでボトルネックが発生したり、(ステージ最前列付近を除けば)観客同士が密接するリスクがほとんどない、快適な設計となっていた。
HHMM
日食なつこ
予報では雨のピークは夕方から夜にかけて。次第に悪天候の度合いを増していく中、負けじと熱量の高いライブが続いていく。ドープなサイケからドラムンベースまで人力で弾いてのけるHHMM、テクニカルな鍵盤を余裕で弾きこなしながら朗々と歌声を響かせる日食なつこ。3ステージの中で唯一足場が芝生ではないREALIZEステージは既に田んぼと化していたが、個性豊かな面々が気炎を上げ、オーディエンスも食い入るようにステージを見つめている。REVOLUTIONステージへと戻って観た中津川常連のストレイテナーは、「宇宙の夜、二人の朝」「叫ぶ星」といった2019年以降にリリースされ、配信ではやっていた曲たちを現地で初披露。なお、テナーのセトリで恒例の(だと思っている)“お、それやるんだ”枠は「Discography」で、“え、それやるんだ?”枠は「A LONG WAY TO NOWHERE」でした。
ストレイテナー
ザ・クロマニヨンズ
夕刻を過ぎ、REVOLUTIONステージに登場したのはザ・クロマニヨンズだ。「よく集まってくれた、よく来てくれた。一生忘れんからな、ありがとう!」。ヒロトの優しい言葉がブッ刺さる。3分間のロックンロールを連射していくライブは痛快で、本来ならば晴天がよく似合うけれど、豪雨のクロマニヨンズもまたサイコー。尽きかけていたHPも少し回復した。なので、1日目の最後はACIDMANからの象眠舎スペシャル・セッションというハシゴを決行。もはや中津川ソーラーの顔と言っていいACIDMANは、高い熱量と貫禄さえ感じる盤石なライブ運び、惜しみなくキラーチューンを連発するセトリで沸かせていた。そして後ろ髪を引かれつつ辿り着いたRESPECTステージは、本来ならば傾斜のついた芝生でまったりと楽しめるエリアだが、豪雨とあって環境は過酷だったけれど、そこで素晴らしいライブを観てしまった。
ACIDMAN
小西遼が率いる象眠舎は初見だったのだが、ストリングスとホーン、鍵盤にベース、ギターと、オーケストラに近い大所帯バンド。そこへTENDREやAAAMYYYらゲストボーカルが代わる代わる登場し、メインでないときはコーラス隊になったりもする、という贅沢な内容だ。個人的に特に惹きつけられたのは、モノンクルの吉田沙良。R&Bテイストのおしゃれでグルーヴィーサウンドで歌うイメージが強かったが、ストリングス込みで奏でる王道バラードテイストの楽曲での堂々たる歌唱、すっかりやられてしまった。惜しむらくは、もっと天候に恵まれていたり早めの時間帯であればより多くの観客に触れてもらえたであろうことか。
象眠舎
思いっきり余韻を引きずりながらホテルへ戻ったあとは、馴染みのスタッフと目の前の居酒屋さんで「一杯だけ」と言いつつそこそこ長居してから就寝。
AM7:00、アラームより全然早く目覚めてしまったのは、窓から容赦なく差し込む朝日のせいだった。おいおい、めっちゃ晴れてるじゃねえか! 予報では昼くらいまでは雨だったはずなのだが、晴れフェスの本気を見てしまった。いや、例年ならば土日開催なので、「土日はいつも通りちゃんと晴らせておきましたよ」ということなのかもしれない。とはいえ、前日のぬかるみっぷりを思い返すと長靴で向かうのが無難だと判断し、いざ会場入りすると……だいぶ乾いているじゃねえか! さすがにREALIZEステージは泥んこではあったが、芝生のあるエリアに関しては「座るとお尻が濡れるから気をつけてね」程度。この水はけの良さ、自然豊かなこの地だけにきっと土壌も素晴らしいのだと思う。
見た感じ、もっとも観客数が多かった2日目は、REVOLUTIONステージトップバッターのヤバTから大にぎわい。ほどよくアドレナリンを出してもらってからREALIZEステージへ移動し、昨晩の衝撃の主・モノンクルのライブへ。歌も演奏も、表情や立ち居振る舞いまで含めたステージさばきもとても良い。……と見入っていた僕の傍に、次にこのステージに上がる村松拓が現れたので、「歌、うまいねえ〜」なんて言いながら二人でしばし鑑賞。
モノンクル
そのまま村松のライブも観た。最近は一人でツアーを回ったりしているだけあって、弾き語りスタイルのライブがすっかり板についた印象で、オアシスの「Stand By Me」カバーには個人的にガッツポーズ。直前にRESPECTステージでライブをしていたバンアパの荒井岳史も合流するなど、大盛り上がりだ。キャパが小さいステージはそれだけ至近距離でライブを観れるということでもあり、むしろその方が向いているよね、というアクトがしっかりラインナップしているのも『中津川ソーラー』の良いところ。
村松拓 / 荒井岳史
それにしても、やはり太陽のフェス。青空、白い雲、遠くの山並み、栗きんとん、生ビール。ああ、帰ってきたんだなぁと前日にも増して実感する。あれだけの雨に見舞われた『中津川ソーラー』というのは全くの未体験なわけで、久々に営業再開した居酒屋に行ったはいいけれど、なぜか新メニューばかりに挑戦してしまったようなもの。今日は満を持して「いつもの!」と注文できた感覚だ。
シアターブルック
“いつもの”の代表格といえばこのフェスの盟主・シアターブルック。これまでトリだったりトップバッターだったり、あらゆるタイミングでこのフェスを沸かしてきた彼らは、今年は3日間のちょうどど真ん中、昼下がりのREVOLUTIONステージからピースフルなバイブスとグルーヴを放ちまくっていた。そこからLOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS、GLIM SPANKY、OAUと観て回り、気づけば夕刻。高台にあるキャンプエリアの方まで登り会場を見下ろすと、その向こうの空がオレンジ色に染まり、山並みがシルエットになっている。これがこのフェスではお馴染みの絶景なのだ。
2日目のクライマックスは間違いなく布袋寅泰であった。ファミリー層や大人層の参加者も多いこのフェスには、BOØWYがドンピシャ、COMPLEXがドンピシャ、ソロがドンピシャとあらゆる世代がいるから、それぞれにとってのキラーチューンがあったはず。で、それを根こそぎ全部やってくれるというエンタメの真髄。イントロが鳴るたびに脳と毛穴から何かが出てくる。僕よりもっと若い世代にとっても「あ、聴いたことある!」という曲がいくつもあっただろう。いや、仮に布袋のレパートリーを全く知らない人が居合わせたとしても関係ないほどの、オーラと演奏技術で圧倒するロックショーであった。アンコール、10-FEETのTAKUMAを呼び込んでの「Dreamin’」、背中合わせでソロを弾く姿を観て、胸を熱くするとともに「うらやましいぜ」となった人は数知れないであろう。観客も、出演者も。
布袋寅泰
布袋寅泰 / 10-FEET・TAKUMA
余韻冷めやらぬまま、NIGHT REALIZEと題した主にキャンパー向けの夜のライブも観る。奥田民生、佐藤タイジ、浜崎貴司による弾き語りにTOSHI-LOWとうじきつよし(ザ・タイマーズ風の出で立ち)が乱入したりと、贅沢なメンツによるカオスなパフォーマンスに大満足したところで、バックヤードに戻って知り合いのミュージシャンたちと軽く乾杯と挨拶。さぁ、ホテルへ戻ろうかと思ったら、とあるスタッフに呼び止められた。
「風間さん、アテンドします……!」
そうだった。これなくしては東京に帰れない。『中津川ソーラー』を語ることは許されない。3年ぶりに復活したのはロックフェスだけじゃない。あの「スナックよしこ」をはじめとした夜のお楽しみも帰ってきたのである。
(あまり異質な内容なので文中のどこに置くか死ぬほど迷いましたが、時系列に沿ってここに書きます)
NIGHT REALIZE
ピークアウト中とはいえ、当然コロナ対策を横に置くわけにはいかないが、スナックよしこはほぼ屋外であるから、少なくとも換気の面は究極レベル。羽目を外しすぎなければ街中の飲み屋よりもだいぶ安心だろう。ただ、よしこは例年通り盛況で満員だったし一度レポートしたことがあるので、今年はもう一つの“新店”に赴くことにした。その店の看板には、なんと「ソー◯ランド」の文字が。思わず目を疑いながらよく見ると、その上に「ハンド」と書いてある。「ハンド◯ープランド」。なぁんだ。めちゃめちゃ健全じゃんか。手指消毒の徹底というのは時代にも即しているしね。ということで、年に一夜限りのルポライターとして潜入してみよう。
テントに入ると手渡されるコースメニューにはそれっぽい単語が並んでいる。席に通されるとカウンターの向こう側にお姉さんがいてハンドソープのボトルがある。で、入念に入念に手を洗ってもらうのだ。「キレイな手ですねー」なんて言われながら「これでもか」と揉み込みさすってもらったら誰だって嫌な気はしない。マスクの下の鼻の下はどのくらい伸びているだろうか。……あれ、これって本当に健全なのか? 途中から二人掛かりで二の腕までツルッツルに仕上げてもらったところで時間が来て体験終了。やたらと良い匂いを振りまきながら帰りのタクシーに乗り込んだのだった。これ、このご時世ならではのサービスとも言えるので、来年以降に同じ営業形態のお店があるかは分からないが、夜のコンテンツを取り仕切るチームは異様な発想力とキワキワを攻める胆力で毎年いろいろな挑戦をしているので、大人のキャンパーのみなさまは是非とも楽しみにしてほしい。
こどもソーラーブドウカン
翌日も眩しさで目が覚めた。当たり前の顔して快晴の中津川公園。このフェスにとっては未知の領域である3日目に突入したが、案外足取りは軽い。フジロック等に比べればだいぶ会場がコンパクトで、舗装路と芝生が中心である上、座ってのんびりするスペースもたくさん用意されているので、足腰にも優しいのだ。そんな『中津川ソーラー』の名物企画「こどもソーラーブドウカン」を通りかかると、王様の格好をしたうじきつよし=うじきングを先頭に、子どもたちがギターを弾き歌いながら行進していた。楽器演奏をはじめ物作りなど様々なワークショップやミニライブまで用意されているこのコーナーは、子ども連れ、ファミリーにとってはたまらない。来年は3歳になるうちの娘もここに放り込み、「子連れフェス参戦記」でも書いてみるとしようか。
androp
現地初登場となるandropの清冽さとチルが両立したライブを楽しんだ後、「トヨタ音楽食堂 presented by 伊地知潔」に行ってみる。ここは今年新設されたコーナーで、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの伊地知がホスト役を務め、トヨタの電気自動車やハイブリッド車からの給電機能を使って調理やライブを行うというもの。
トヨタ音楽食堂 presented by 伊地知潔
この時間帯にはゲストとして村松拓が登場してレンジのみでパスタを作っていた。なお、夕方には同じく伊地知×村松の組み合わせに加え、宮下広輔がペダルスティールで参加してのライブも行なわれ、オアシス「Whatever」やアジカン「君という花」などを披露。特設ステージとは思えない盛況ぶりとなっていた。
佐野元春
奥田民生(MTR&Y)
最終日ということで、ライブ以外のコンテンツや飲食も楽しみつつお土産を探したりしながらのんびりと過ごす。奥田民生(MTR&Y)、佐野元春&THE COYOTE BANDと『中津川ソーラー』ならではのベテラン勢の並びにしこたまヤられたあとは、RESPECTステージにて黄昏時のNulbarichを観た。過去開催時にはメインエリアのREDEMPTIONステージ(今年はない)に出ていた記憶があるが、山側にあって後方ではのんびり座っている人がいたり子どもたちが遊びまわったりしている中で観る、リラックスして自由に身体を揺らしていくスタイルのライブがとてもハマっていた。やはりソウルやR&B、シティポップとか、そっち方面の音楽性との相性がめちゃくちゃ良いステージだ。
Nulbarich
さて。ついに3日間の大トリ、サンボマスターの時間がやってきた。山口隆は錚々たる顔ぶれが揃ったこのフェスでヘッドライナーを務めることを、“高級なコース料理がいっぱいある中のふりかけご飯”に喩えていたが、自虐の面を差し引いても言い得て妙。だってふりかけご飯、旨いから。嫌いな人、いないでしょ。
サンボマスター
「わかってる、声出せないんだろ? 声出せないんだったら元気出せ!」と山口が吠える。まだライブ現場がまるっきりコロナ以前に戻ったわけではないけれど、いつだって熱くがむしゃらに我々を鼓舞し、煽り、抱き絞めてくれる彼らのライブの本質は変わらない。これでもかと掻き鳴らされるロックンロールが、『中津川ソーラー』の帰還を、この地に生の音楽が再び鳴りだしたことを何より象徴していたように思う。最後の最後まで残った大勢の参加者の歓喜と祝福に満ちたフィナーレだった。
3日間の過ごし方とそこで感じたことをつらつらと書いてきたが、最後にまとめも書いておく。まず、コロナ禍以降のフェスで必ずと言っていいほど話題に上がる、感染対策がどうなっていたのかと、それがどのくらい守られていたのかについて。前提として、現在統一されたガイドラインというものは存在しないので、そのあたりは主催者や自治体、会場の管理をするセクションの判断によるところも大きい、という難しい状況の中で、『中津川ソーラー』に関してはまず入場人員をだいぶ抑えていた。体感、一番入っていた年の半分くらいかもしれない。全て屋外のステージであることや、この夏以降はかなりガッツリ人を入れているフェスも多かったことを考えると、だいぶ安心感のある設計になっていたと思う。お酒を含め飲食の提供は普通になされていたが、そこもあまり混雑しておらず、だいぶ快適。目に余るような酔い方をしている人もほとんど見かけなかった。
その他の点でいうと、「マスクは基本的に着用、ただし暑かったりしたら外してください」というアナウンスがされていたので、各自状況に応じて着脱していた様子。モッシュやダイブに関しては僕の観た範囲では皆無だった。大半の観客は無言でライブを楽しんでいる状況で、集客の多いライブなどでは盛り上がりポイントでワッと歓声があがることはあったものの、スポーツ観戦などと比べればだいぶおとなしい範囲ではあるかな、という感じ。
全体として、参加者各自がだいぶマナーへ配慮した行動をとっていたフェスだったのではなかろうか。当事者意識が高い、と言ってもいいと思う。実際問題、都市部のフェスではないだけに、現地の方の感情面なども踏まえなくてはならない部分があるけれど、来年以降の開催に向けたネガティヴな印象はほとんど残さなかったのでは?という感想を持った。
ステージが減っていたり、それに伴い導線が多少変更されていたりはあったが、一歩会場に足を踏み入れた瞬間の「帰ってきた!」という感覚は3年待っただけの濃度で味わうことができた。すれ違う一人ひとりからも同じような感情を感じ取ることができた。3日間、本当にたくさんの「おかえり」と「ただいま」を無言のうちに交わし合っていた気さえする。来年の今頃、フェスを取り巻く状況がどうなっているかはまだわからないが、願わくばより従来に近い形でより多くのアーティストを中津川の地で観ることができ、その時間をより多くのオーディエンスと共有できることを願う。
ここまでお付き合いいただいたみなさまも、どうかその日までお元気で!
取材・文=風間“太陽” 撮影=木村泰之、古川喜隆、柴田理恵、俵和彦、三浦麻旅子