師との“真剣勝負”で伝えたいこととは ヴァイオリニスト岡本誠司インタビュー
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音楽家としてこの分岐をどう乗り越えるのか
2021年6月に開催された『岡本誠司 リサイタルシリーズ Vol.1~自由だが、孤独に~』より。23年にかけて全5回のシリーズ公演を企画している(撮影=中田智章)
——ちょうど一年前の2021年10月に、栄誉あるミュンヘン国際音楽コンクールのヴァイオリン部門で優勝したわけですが、岡本さん自身、コンクール以降、どのような心境の変化がありましたか?
コロナ情勢が収まりを見せつつも、いまだ影響を受けている音楽業界において、我々駆け出しの演奏家にとっては、まだまだ厳しい一年であったというのが正直な感想ですね。
また、演奏会に行くことが習慣だったのが、コロナ禍のこの数年の間で一度途切れてしまったことによって、なかなかお客さんが戻ってこないという現状をいろいろなところで目にしています。
——ドイツでも、いまだコロナ禍の影響が尾を引いているのでしょうか。
フランクフルトなどの大都市でも客席が半分しか埋まらないなど、苦戦しているのを実際に目にしています。これらの現実を踏まえると、クラシック音楽の聴かれ方自体も変わってきているのかなというのも感じていますし、生で聴くことの醍醐味をもっとアピールしていくことが、今後一人ひとりの音楽家も求められていることではないかと思っています。
ただ、これは一つのチャンスでもあるかもしれませんし、自分の発信したいものに愚直に向き合っていくことで、共感を得ていくのではないか、という新たな展望や方向性も僕自身の中では見出しています。
ドイツ・ベルリンの様子。ベルリンでの生活も丸5年を迎えた(岡本提供)
――それは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
例えば、名演奏家が名曲を演奏するというだけではなく、何かに強いこだわりを持っている、面白味のある作品を演奏する……など、一旦、クラシック音楽への興味が分散した以上、そのような方向に誘導してゆく新たな、そして絶好の機会なのかな、とも感じています。そのような点についても意識しながら活動していきたいと思っています。
体験したことの無いものを体験できる喜びや、「知らなかったものを知る楽しみ」という部分を持ち帰ってもらえるような演奏会というものを今後、更に作っていきたいと考えています。このような事柄が、コロナ禍、そして昨年のコンクールを経て決意を新たにした部分です。
——そういう意味では、岡本さんの場合、反田さんや務川さんを始めJNOのメンバーなど仲間が身近にいるということは力強いですね。
その二人を筆頭として、周りに志の高い、本当に勢いのある、そして、中身の濃い演奏家たちが集まっていることで、僕もとても刺激を受けていますし、皆で高め合っていけたらと思っています。
取材・文=朝岡久美子
公演情報
会場:浜離宮朝日ホール
岡本誠司(ヴァイオリン)
アンティエ・ヴァイトハース(ヴァイオリン)
ルクレール: 2つのヴァイオリンのためのソナタ第6番 ニ長調 Op.3-6
J.S.バッハ: 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 ニ短調 BWV1004 より ”シャコンヌ”
イザイ: 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番 イ短調 Op.27-2
イザイ: 2つのヴァイオリンのためのソナタ イ短調 (Op.Posth.)
ほか
※未就学児童入場不可
※新型コロナウイルス感染症等の感染防止のため、来場時にはマスク着用をお願いします。
※ご購入者の氏名・連絡先を、保健所等の公的機関へ提供させていただく場合がございます。予めご了承ください。
※全席指定(U30) は、公演当日30歳以下の方を対象とした
主催:NEXUS/朝日新聞社/浜離宮朝日ホール
協力:イープラス