王騎役・山口祐一郎「舞台に立つことが僕の人生になった」~舞台『キングダム』インタビュー
2023年2月、東京・帝国劇場で上演される舞台『キングダム』。大人気コミックを原作に、春秋戦国時代で天下の大将軍を夢見る少年・信(三浦宏規/高野洸)と、中華統一を目指す若き王・嬴政(小関裕太/牧島輝)のストーリーが描かれる。
山口祐一郎が演じるのは、秦国六大将軍の一人である王騎。圧倒的な存在感を放ち、謎めいた行動で物語を翻弄していく。インタビューからは役作りへの思いはもちろん、若い世代から受ける刺激など舞台にかける情熱が垣間見えた。
――本作への出演が決まった際、どのような心境でしたか?
ミュージカル『ヘアスプレー』でご一緒している三浦宏規さんと、また共演できることに喜びと驚きを感じました。三浦宏規さんの周りには、重力がないんですよ。長年舞台をやってきましたが、踊りや歌、芝居がこれほどのびのびしている役者さんを目の当たりにしたことはあまりありません。お稽古をしながら「よし。“お父さん”も頑張るよ!」という気持ちになります(笑)。
――原作など、メディア化された作品についてもご覧になられているそうですね。
原作の漫画はもちろん、アニメも全部観させていただきました。映画の1作目をヨーロッパに行く飛行機のなかで2回見たこともよく覚えていますし、そのあと劇場にも見に来ましたよ。映画もアニメも実写となった映画も、それぞれを演じた方の思いがあふれていて素敵でした。
――王騎役に臨むにあたって、現時点で何かイメージをお持ちですか?
役の求められていることを、全力でやっていきたい。若い頃は作品のテーマや役割に忠実であろうと……あまり良い言葉ではないですが、縛られて、こだわっていたこともあったようです。チームとしての思惑や狙いはもちろん必要ではありますが、受け止める皆さんは一人ひとり、違う感想を持ってくださる。お客様からのお手紙でも、自分の狙っていたテーマや役割とはまったく違うコメントをいただくんですよ。見てくださる方の境遇によって、受け止め方も異なってくることがある。なるほどな、と思いました。今は、後になって少し気づくことができるくらい、まっしぐらに突き進みたいです。
――取材前に、演出の山田和也さんが王騎役について「山口さんの存在感とミステリアスさがハマるのでは」とお話しされていました。
『ヘアスプレー』では今まで演じたことのない女性役を演じたのですが、山田さんが「山口さん、大丈夫ですよ。自分は自分のことを一番知っているようで、実は一番知らない人なんです」って仰ってくださったんです。王騎という役についても、僕自身の分析というよりキャスティングや山田さんが仰っていただいたことに「なるほど。僕ってそういう人なんですね」「では、どうしましょう?」という思いで向き合いたい。あらゆるものを見て、話を聞いて、あらゆる方法にトライしていって、何もせずともポンと舞台に立っていられる。その日が今から待ち遠しいです。
――本作が上演される帝国劇場は、建て替えのため2025年から一時休館することが発表されています。これまで多くの作品で立ってきた山口さんとしては、どんな思いがありますか?
「新しい劇場が建つなら、一度は覗いてみたいな」というモチベーションにつながりました。こけら落としにはどの作品がリストアップされるんだろうとか、登場してくる人たちは誰なんだろうなって。三浦宏規さんとも「リニューアルされた帝国劇場で、また会えたらいいね」というお話をしました。いつもは三浦さんが未来の話を、僕は過去の話をするんです。この話題で初めて、一緒に未来の話をすることができました。
――長い歴史の中には、山口さんが初めて帝国劇場に立った日も。当時を振り返ってみて、いかがでしょうか。
3泊4日くらい、取材陣の皆さんとどこかの山荘に泊まりながらじゃないとお話ししきれそうにありません(笑)。『キングダム』の作者である原泰久さんが仰っていたのですが、スタート地点では「だいたい10年くらいだろうか」と予想していたけど、どんどん伸びてきていると。その理由については半分わかるけど、半分は自分でもわからないそうなんです。そのことと同じくらい、帝国劇場に立った日の感想は言葉として表現できません。昔から、舞台活動が自分の人生の夢でした。それが現実になって、今もこうしてずっと舞台上にいる。舞台に立つこと、与えられた役柄を生きているということが僕の人生になっています。
取材・文=潮田茗、撮影=池上夢貢
公演情報
3月大阪・梅田芸術劇場メインホール
4月福岡・博多座
5月札幌・札幌文化芸術劇場 hitaru