超能力を持った猫たちがあらゆる事件に巻き込まれていく! 小波津亜廉×横田龍儀、異能群像劇『ノラネコシティ』は「生々しい人間ドラマ」
小波津亜廉、横田龍儀
2022年12月3日(土)〜12月11日(日)、東京・新宿FACEにて上演される舞台『ノラネコシティ』。木崎ちあきによる同名小説を原作に、違法ドラッグと超能力がはびこる犯罪超過都市を舞台した異能群像劇が描かれる。
本作でクロ役を演じる小波津亜廉と、アッシュ役の横田龍儀にインタビュー。作品の見どころはもちろん、初共演の心境や同世代ならではのトークを展開してくれた。
――この取材時点では稽古開始前ですが、すでに台本や原作を読まれているそうですね。ぜひ感想をお聞かせください。
小波津:雑多な街でいろんな能力を持った猫たちが、あらゆるドラマに巻き込まれていくお話。ファンタジーではありますが、ヒューマンドラマやサスペンス要素があり、第一印象ではリアリティを感じました。猫同士の間で起きる差別や格差社会が描かれつつ、アッシュというキラキラした存在があれば、クロのように虐げられる存在もいるという対比もあって、現実にも沿っているような生々しさがある。読んでいて、前のめりになる作品でした。
横⽥:猫のお話というところがまずインパクトが強い。猫の存在に興味を持って物語に入っていくんですが、人間を猫に置き換えてメッセージを伝えてくれる作品です。こういう世界がどこかにあるんだろうなと感じられます。
小波津:猫が超能力を持っている設定がすごいよね。舞台映えする作品だと思いますし、台本を読んでいて想像が膨らみました。
横⽥:魅力的なキャラクターもいっぱいいるんですよ。共感したり親近感を持ったりできるキャラクターが必ずいる。自分自身と重ね合わせながら見てもらえると、より一層楽しめるはずです。
――個性豊かなキャラクターが多数登場するなかで、お二人が演じるクロやアッシュはどんなキャラクターなのでしょうか。
小波津:陰か陽でいうなら、クロはどちらかというと陰なキャラクター。背景には、黒猫という存在が歴史的に虐げられてきた過去がある。あるものを探し求めているんですが、果たして見つかるのか、一人きりでやり遂げられるのか。他の猫たちに出会い、どう感情を動かされていくのかというところを見ていただけたら嬉しいです。
横⽥:アッシュはモデル出身の若手俳優、ノラネコシティのスーパースター。一見、完全に陽なタイプで輝いている側のはずだけど、抱えているものがあって今後の生き方について悩んでいるキャラクター。ちゃんと自分が信じたものに対して行動できて、正義感もある。アッシュを見ていると、こういう考えを持つ人が増えるといいなって感じます。いろんなことに首を突っ込めば、その分壁にぶち当たることも増えていく。面倒を嫌がって同じ毎日を繰り返しているうちに、人との距離が薄れていくんですよね。その壁を取っ払って、何かできることはないかって考えられるところが素敵なんです。
――相反するようなクロとアッシュですが、どんな関係性なのでしょう?
小波津:クロはアッシュから求められているけど、最初のうちクロはアッシュを求めていないんですよ(笑)。アッシュがあまりにもまっすぐ来るから、クロがどう応えていくのか……。
横田:難しいですね。クロとアッシュがどう絡んでいくかということ自体が、ストーリーのネタバレになってしまうので(笑)。
小波津:そうだね(笑)。クロとアッシュが出くわしたときの化学反応は注目してほしいです。「影響を与えてくれる存在が目の前に現れたら、自分ならどう変わるのかな?」と想像が膨らむ関係性だと思います。
横⽥:ちなみに現実世界でいうと、僕自身としてはクロ寄りの人間なんですよ。
小波津:で、僕がアッシュ寄りなんです(笑)。
横⽥:二人とも両方の気持ちがわかっている上で演じられるでしょうし、かなり突き詰めていけるはずです。
――小波津さんと横田さんは、本日が初対面だったそうですね。
小波津:そうなんですよ。⿓儀くん、人見知りなんだもんね?
横⽥:極度の人見知りです(笑)。
小波津:話してみたら、そんなこと全然ないですよ。人見知りって、存在しているようで実はないんです! それに僕、人見知りを崩していくのが好き。まあ、距離の詰め方を誤ってしまったこともありますが……。
横⽥:誤ってないです! こうやって来てもらえるほうが嬉しいに決まってるじゃないですか。僕は関係性をちゃんと作りたいのに「間違えちゃいけないよな」って考えすぎちゃう。どう話しかけようか悩みに悩んで、悩んだ挙句の切り出し方が「今日はいい天気ですね」とかだもん(笑)。
小波津:あはははは! 初めての人との会話って難しいですよね。昔はとにかく突っ込んでいく感じだったんだけど、最近は引くこともちゃんと覚えました(笑)。押しすぎても、相手がどんどん引いちゃったら意味ないですもん。
横⽥:お芝居と一緒ですね(笑)。
小波津:そう! 押しすぎてもダメなんですよ。
――(笑)。この取材時点では小波津さんが31歳、横田さんが28歳とほぼ同年代。ちょうど真ん中の30歳は一つ人生の節目として挙げる方も多い印象です。
小波津:どうですか、もうすぐ30歳になる心境は。
横⽥:僕はね、怖いです。30歳までに、どれだけ得るものがあるんだろうって考えちゃいます。10代から20代はあんまり変化がなかったけど、30代って一気に責任の重さが変わってくる気がするんです。自分よりも下の世代が入ってくるから、今まで周りがしてくれた注意や助言も、きっと自分は言ってもらえなくなってくる。もっと芝居を磨かなければと。
小波津:うん。20代後半って、きっと一番しんどい時期なんだよね。上には先輩方がいて、下からはどんどん後輩たちが出てくる。僕も⿓儀くんと同じで、なぜかすごい焦っていたんですが、30歳になった瞬間にパタッとなくなった。きっと、できることとできないことが明確に分けられるようになってきたんだよね。
横田:あー、なるほど。
小波津:諦めとか妥協ではまったくないんだけどね。28、29歳のときって「全部できなきゃ!」って思ってるんだけど、いい意味でいろんなものが整理されてきた。上と下に挟まれているっていうのも、ちょうど真ん中だから柔軟な立場でいられる良さがある。上の人たちには後輩として、下の子たちには先輩として両方から学ばせてもらえるし。30代中盤以降はきっとまた心境が変わってくるんだろうけど、今はすごく楽しいよ。
横⽥:きっと、数字にとらわれちゃっているんですよね。
小波津:「やべぇ!」って思っちゃうんだよね。でも、その「やべぇ!」っていうのはこの先もっといっぱいあって、果てしなく続いていくから。こんなところでやばいなって思っている場合じゃない(笑)。すごい人はすごい人、俺は俺って上手に思えるようになっていくんじゃないかな?
横⽥:すごい参考になりました。先のことって、怖いですからね。今回の作品もそう。まだ稽古に入っていないから、どうなっていくのかとドキドキもあり不安もあり……。
――“猫”や“違法ドラック”、“Ψ(サイ)”と呼ばれる特殊能力など、舞台化されるにあたり挑戦的な要素が多い本作。演じ甲斐のある内容になりそうですね。
小波津:アクションもあり、超能力も一つ大きなポイントになります。特殊能力を使える猫って、想像しただけでファンタジーですよね。
横⽥:アッシュのような役を演じさせてもらえることがありがたいですし、どうしたらお客さんに共感しやすい芝居になるかということをしっかり考えていきたいです。
小波津:役作りのためにYouTubeにある猫動画を参考にしようと思ってるんだけど、やっぱり本物を見たいな。猫カフェ行きたいけど、⿓儀くんって……。
横田:猫アレルギーなんだよねえ(笑)。
小波津:ね。本当はめっちゃ動物好きなんでしょ?
横⽥:めっちゃ好きだし、動物にもすごく好かれるタイプ。道端で猫を見かけたら結構懐かれるんだけど、アレルギーが出ちゃうから距離を取らなきゃいけなくて(笑)。実際に触れ合うとどのくらいの距離で警戒心を出すのかとか、細かいことがわかるんですけど……俺のほうが警戒心出しちゃうから(笑)。
――ちなみにお二人は、どんな猫が好きですか?
横田:僕はスフィンクスです。かっこいいのと、毛が全然ないから……。
小波津:やっぱりアレルギー基準なんだ(笑)。マンチカンとかアメリカンショートヘアとかも可愛いよね。僕、もともと黒猫が好きだったんですよ。ビジュアルが綺麗だっていうこともあるんですけど、性格的に恥ずかしがり屋さんが多いらしくて。一癖あるところがより猫らしい。場所によっては幸福の象徴ともいわれる存在ですし、もっと黒猫好きが増えると嬉しいです。
――最後に、本作への意気込みと読者の皆さんへメッセージをお願いします。
小波津:たくさんの方に見ていただきたい作品です。この物語が自分自身を見つめ直す機会になったら素敵だし、猫をもっと好きになってほしいです!
横田:新しい作品を見に来ることって、お客さんにとってはある意味チャレンジですよね。まず、ビジュアルが好きだと感じたらぜひ来てほしいです。もちろん、お話も楽しめます。原作を読んでから来ていただくと、また違った味わい方もできる。きっと、2回以上見たらより深まっていく作品になると思います。
小波津:2回目は、絶対見る角度変わるよね。どのキャラクターに注目するかで、印象が変わってくるはずです。
横⽥:ね。僕たちもそういう風に作っていけたらと思っていますので、気になった方はぜひ見に来てください。
取材・文=潮田茗、撮影=鈴木久美子
公演情報
【会場】新宿FACE
【キャスト】 小波津亜廉/飯窪春菜、三井淳平、田中晃平、新井將、神里優希、北澤早紀(AKB48)/横田龍儀
【原作】「ノラネコシティ」ビーズログ文庫アリス・KADOKAWA、著者:木崎ちあき、イラスト:鈴木次郎
【公式情報】公式HP:http://noranekostage.delight-act.com
【公式Twitter】@noraneko_stage